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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第五章 雪の国 スノーレイン
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友人の行方1

 アッシュたちと別れ、グレンはこの国の王、スノーレインの王へ会いに来ていた。元々こういう外交もしたことある。それに、あまり首を突っ込む気はなかった。


 だが……



(視察という名目であれば動きやすいと思っていたが……。どうもあの王は……)



 王の間に入ってたからずっと嫌な気配がしていた。

 ジッと睨むようにグレンはフードを付けたまま玉座に座っている男を見てる。その隣にいるのは王妃だろう。



「久しいな。グレン殿。急な訪問とは何かあのお方からのご伝達でも有り様か?」

「……いいや、ただの視察だ。定期的に回っている」

「さようか。ならゆっくり我が国を満喫してくれ。もし必要なら女でも酒でも好きなだけ用意しよう」

「結構だ」



 奴には以前にも会っていた。(あるじ)が気まぐれで開いた社交界パーティーの際にこの王と王妃、そして姫を見たことがあった。その時はこんな傲慢そうな感じは全くなかった。むしろおどおどとして謙遜するタイプ。今、目の前にいる王はあの時の王とは違う気がする。


 視線だけ周りを注意深く姫を探してみるが見るが、やはりいない。



(記憶が正しければ謙遜するタイプだがこの王は娘をよく自慢していた。姿が見えないとなると……)



 チラッと再度、王を見る。


 こいつが何者であれ、今は確信がない以上へたな動きはできない。

 少し城を見て回ってみるか……。



「では、私はこれで失礼する。視察が終われば帰るつもりだ。その際はまた」



 そう言ってグレンはその場を出ていく。そんなグレンを座ったまま見ていたスノーレインの王はグレンを出て行った方を睨むように見ていた。



「フン。深淵の神子の犬風情が……。」

「あなた、それを聞かれましたらあの神子に何をされるかわかりませんよ」



 王妃の言葉に王は険しい顔をしながら王座に深く腰掛け、足を組む。



「……チッ……。そうだ、良い案がある。やつは恐らく守護者だ。利用価値が高い。捕らえて奴隷にし、飼い慣らして手懐けてしまえば軍の兵力としても使えるはずだ」

「まぁ!それはいい考えですね。守護者を通して弱みを探れば、あの忌々しい神子に一泡吹かせられます」

「早速捕らえよう。おい」

「ハッ ここに」



 暗闇の中から黒装束を纏った男が現れる。王の前に跪いて命令を待つ。



「グレンを捕らえろ。犬の躾だ。強力な首輪を準備し、万全の体制で行くのだ」

「仰せのままに」



 その男は闇に溶けるように消えていく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 その頃グレンは城の中を探索していた。ただこのままの姿だと目立つ。

 正面からくる荷物を持ったメイドとすれ違いざまにメイドの服を認識する。少し歩いてパチンと指を鳴らして認識阻害の魔法と、自身の服装をメイド服へ変える。どこをどう見てもこの城に仕えるメイドにしか見えない。

 伊達メガネを取り出して、くるっと身を返して、先程のメイドを追いかけて声をかける。



「すいません!」

「はい、どうされ……あら、見ない顔ね、新人かしら?」

「えぇ、最近お勤めをさせていただいたのですが、まだ覚えきれず……」

「あらそうなの。わかったわ。ではついてきて」

「ありがとうございます」



 グレンはニコリと笑いながら軽く頭を下げる。

 メイドは”あらあら、でしたらこれ持ってついてきてくださる?”と言いながら持っていた荷物を渡される。



「あなた、お名前は?」

「はい、レンと申します」

「レンね。私はアニー。それにしてもあなたのような可愛い新人さん来たら覚えていそうなものなのに私も年ねぇ」

「いえいえ、もともと影が薄いほうなので仕方ありませんよ」



 そう言いながらメイドが持っていた荷物を持ってついていく。とりあえずこのまま情報収集をしよう。内部側ならある程度の状況を確認できる。それに姫の場所についても聞き出しやすい。



「それにしてもあなたよくここで働こうと思ったわね」

「いえ、以前、姫様に助けていただいたことがありまして、姫様に少しでもご恩返ししたくて……。」

「そう……。ガーネット姫に……」

「? 姫様に何かありましたのでしょうか?」

「……そうね」



 アニーは周りを確認しながら、こっそりとグレンに耳打ちをする。



「あなたは入ったばかりだから知らないかもだけど、姫様はここ1年ほどお顔を出されてないの……。噂ではどこかに幽閉されてるんじゃないかって言われてるのよ」

「幽閉、ですか……」

「ガーネット様にお慕いしてるあなたには申し訳ないけども、お会いできることは難しいかもしれないわ」



 愛娘を幽閉か……。1年前からということは、あの社交界以降ということになる。これは探すのに少し時間がかかりそうだ。


 メイドの仕事をしながらグレンは薄く魔力で回りに誰がいるのか、部屋の配置、警備のルートを確認し、そこで通らない場所や通れなさそうな場所も確認していき、城のマッピングしていく。


 一通り回ったところで、夕暮れ時、頃合いを見てグレンは抜け出し、まだ調べることができない部屋へと向かう。


 そこは城の右端の塔。以前は使っていたらしいがここずっと使ってない塔になる。だが、なぜか人の出入りがあるらしく、使用人もかなり怪しがっていた。

 屋根側から下にある窓を覗き込みがカーテンで見えない。テラスに降り立ち、窓に近寄る。手をかけると鍵はかかってないため、そのまま入っていく。



(……うっ……。なんだこの臭い……っ)



 鼻につく甘ったるい臭いと生臭い臭いが混じったような臭い。吐き気を催す臭いに思わず服の袖で鼻と口を覆いながら中を進んでいくが薄暗い。

 人の気配はするので慎重に見ていくとーー



「っ!」



 人は、確かにいた。だがそれはあまりにも惨い状態だった。そこにいたのは赤髮の少女。ボロボロな布切れの恰好、両腕を鎖に繋がれて、吊るされている。そして、恐らく暴行されたのだろう。全身に隙間なくある傷、爪をはがされ、歯もおられたのだろうか、数本しかない。


 駆け寄り、少女の意識の確認をする。辛うじて息はある。鎖に触れようとしたら少女はこちらに気付き、ひどく怯えた目を向ける。



「ひぃっ⁈ ひ、ひやだ……っ もう、もう、ひゃめて……っ」

「大丈夫だ。安心しろ。私は味方だ」

「ひゃだ……っ や……!!」



 錯乱して話が通じる状態じゃなさそうだ。仕方なく、少女に精神魔法で混乱を鎮静化させる。

 徐々に少女は怯えた目は変わらないが落ち着いていく。



「大丈夫か?落ち着いたか?」

「……っ あ、なた、は?」

「私はアリスに頼まれてお前を探していた」

「あり、す……?」



 アリスの名前を聞いて少女は大粒の涙を流し始める。



「ありひゅ、おねぇひゃま……っ うぅ……っ」

「……、ここから連れ出すちょっと待っていろ」



 少女の鎖をといて傷の容態を診る。感染症に性病もある。変に回復魔法を使うと後遺症が残る危険性があるため、一旦そのまま少女を自分のマントを取り出してくるみ、抱きかかえる。



「少し痛むかもしれんが我慢できるか?」

「ひゃい……」

「ん、いい子だ」



 タンッと飛び、アッシュにつけた追跡魔法を辿って戻っていく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 その頃アッシュたちは宿を借りてグレンの帰りを待つことにしていた。

 だが、なかなか戻りが遅いので、エドワードとユキ、ノア、リリィは街の様子を見に行くことに。アッシュとアリスに関しては、アリスが街を見るのは今は無理とのことで、残ることになった。


 こんな国の状態だから、あの4人だけで行かせるのも本当は心配だ。一応、アリスから自立型の炎を受け取ってるし、何かあれば分かるだろうけど……。


 その間ずっと寝そべっているアリスは座ってるアッシュに引っ付いたまま動かない。特にいやというわけではないし、そっとアリスの頭を撫でている。外を眺めていると、ベランダに誰かがきた。


 後ろ姿はメイドのようだけど、こんなところに何の用かと思ったら振り向くとグレンだった。



「え、グレン⁈ 何その格好⁈」

「ん……?」



 アッシュのこれにアリスが起き上がると、アッシュの視線の先にいるグレンを見て笑いそうになったが、何かを抱えていたことに気付いて、慌てて駆け寄っていく。



「まさか、ガーネット⁈」

「待て」



 触れようとしたアリスに片手を突き出して制止する。



「先に治療する。感染症と性病に罹ってしまってる。お前にうつるといけないから治療してからにしろ」

「せ、性病……っ ……っうぇえ……っ」

「アリス!」



 口を押えてよろめくアリスの肩を支えるようにアッシュが掴む。一旦少女とグレンが見えないように前に出て身体で隠す。嗚咽しながらアリスが泣いていた。


 グレンは魔法陣を書きながらその上に少女を置く。痛々しい傷からは血が流れていて、顔はひどく腫れている。



「その子は?」

「恐らくこの国の姫君だろ」

「え、この子が?」

「あぁ」



 書き終えたのかグレンは立ち上がり、パチンと指を鳴らす。魔法陣が光ると、少女は浮いて先程までの傷は徐々に綺麗に治っていく。光がおさまると、他に傷がないか確認していき最後に少女を巻いていたマントをバサッと外すと少女に新しい綺麗な服に変わっていた。


 傷の治った少女の肩をグレンが叩くと、ゆっくりと目を開けて起き上がる。



「大丈夫か?」

「あ……、痛く、ない……?」

「なるべく先程の身体になる前に戻るようにした。だから、身体はもうどこも痛くないはずだぞ」

「……っ あ、ありがとうございます」



 泣いている少女はよく見れば本当に年端も行かない少女だ。

 治療が終わったのでアッシュの胸の中で泣いているアリスの肩を叩いてそちらを見せると、アリスは少女のもとに行く。



「ガーネット!」

「アリスおねぇさま!!」



 互いに抱きしめてアリスはガーネットに他に怪我がないかと顔をムニムニと触っていく。

 ガーネットは余程怖い思いもしたのだろう、ずっと泣いて泣き止む気配がないのでしばらく落ちるくまで待つことにした。

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