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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第一章 神子と守護者

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神子と守護者2

 街へ向かうため、キャンプをしていた場所から歩道へ戻り、先へと進む。


 先頭をアリスとリリィが進み、その後ろをアッシュとエドワードがあとへ続く。前を歩いていたアリスは枝を拾い、退屈そうにブンブンと振り回していた、その道中の事だった。



「ねぇ、アッシュ! あれ!」


「ん? どうしたんだい?」



 アリスが叫びながら進む方向へ指をさす。


 そこにあったのはおそらく商人の馬車であろう荷車が横転していた。

 恐らく、道中に襲われたのだろう。賊の数は約20人ちょっとだった。


 こういう街から外れた道中の賊は割とタチが悪く、20人もいれば、小規模の団体だとかなり危険だ。どうやらまともに応戦できている人や護衛らしき人たちは少数で5人程度しかおらず、山賊相手に苦戦している。


 アリスは少し目を細めながらアッシュの方を少し真面目そうな様子で向く。



「ねぇ、アッシュ、いける?」


「もちろん、大丈夫だよ。あの程度の人数なら余裕さ」


「ん、ただし殺したらダメよ。あんた、加減間違えること多いから」


「うぐ、それは否定しないよ……」



 アリスの言葉にアッシュはバツが悪そうな顔をする。


 そう、否定はしない。どうも、加減は苦手で殺してしまう事もあった。正直、あぁいう連中がしている事を考えると殺されても文句は言えないだろうと思うんだけど。彼女の頼みだからそうするしかない。


 指をパキパキと鳴らし、応戦しに行こうと駆け出し始めようとしたらエドワードから裾を掴まれる。



「おい、待て。私も行く。お前一人では心配だ」


「え、手伝ってくれるの?」


「と、言ってもお前の速さについていけないから魔法での援護くらいだがな。周りを気にせず、存分に暴れて来い」



 一人でも別に問題なく倒すことは可能だけど、これはエドワードなりの気遣いだ。なら、それを無下にする訳にはいかない。

 それに彼の援護はかなり的確でかなり助かる。



 そんなエドワードに対してアッシュは優しく笑いかける。



「ありがとう、じゃあよろしくね!」


「ん」



 小さく頷いたエドワードにたしいて軽く肩を叩いて、商人たちの元へ駆けていく。


 まずは奴らの視線をこちらに逸らすため、騒動の中心部まで高くジャンプし、斬り掛かる賊と満身創痍な様子の襲われてる護衛の兵士の間へ降り立つ。山賊が振り上げられた剣を持つ腕を掴みあげ、関節とは逆の方向へと捻る。



()でぇ?! な、なんだてめぇ?!」


「悪いんだけど、賊に名乗る名前は持ち合わせてなくてね。死にたくなかったらさっさとどこかへ消えてくれたら嬉しいんだけど」


「あぁん?!」



 威勢のいい男の足元に魔法陣が現れる。陣が現れたと同時にアッシュは負傷した傭兵の鎧を掴み、その場から離れると、雷が放たれ山賊は悲鳴を上げ、黒焦げになって倒れた。


 その悲鳴が注目を集めたのだろうか、一斉にこちらに視線が集まった。それでも彼の余裕の表情は変わらず、堂々としている。


 アッシュに引っ張られた傭兵は、驚きと安堵の様子で恩人へ声をかける。



「あ、ありがとうよ、あんたは……?」


「ん? あー、気にしないで、通りがかりの旅人さ。あと、ちょっと邪魔になっちゃうからそこで君の雇い主を守っておきなよ。後は僕が片付ける」


「えっ?! そ、そんなこんな人数を一人でできるわけがないだろ?!」


「大丈夫さ。最高に優秀な援護をくれる仲間がいるからね」



 焦る傭兵に対して彼は余裕な笑みとピースをしながら賊の方へ向く。



 その程度の人数なら余裕だ。むしろ、肩慣らしにもならないほど、とても弱い。



 全身の魔力を巡らせ、アッシュの周囲に蒼く灯る炎がクルクルと彼の周りを踊り回るように現れ、数を増やし、魔力の高鳴りが空気を通じて感じる。炎の数で数人たじろぐがもう遅い。



「あはは、君らは相手が悪かったね」



 そう言って放たれた炎は的確に賊のみを狙い命中する。炎で黒焦げになってはいるが気を失う程度で、死なないくらいで加減はしてるはず。ただ、数日は火傷で動けないだけど、まぁ、自業自得だろう。


 とはいえ、この人数だ。恐らくこの場にいる連中だけでは無い。こういう多い人数で来る場合、だいたい物取り以外の目的もあって遠くから見ている奴がいるはずだけど、周りに気配を探るが、もう近くにはいないようだった。さすがにアリスたちを置いて深追いをするわけにもいかないし、一旦はこれで良しとしよう。


 ……ま、アイツらがこちらに手を出さなければ、どうでもいい。



「さてと、君たち、大丈夫?」



 黒焦げで倒れている山賊を確認して、複数の傭兵たちに守られてる商人に話しかけると周囲を見渡し、安全を確認出来たからか、バッと出てきたかと思うと泣きながらこちらへ近寄り手を握られる。



「あ、ありがとうございますぅ!! あなた様が来なければ我々は殺されていたでしょう!! 本当に、ほんっっとうにありがとう!!」


「あ、あはは、そうだね。ただ、僕がというより君たちを見つけてくれたのは彼女だからお礼は彼女に言ってくれないかな?」


「へ?」



 少々間抜けな返事をしながらアッシュが見ている方を商人は振り向き、ちょっとこちらに来ていたアリスたちと目が合う。そして、アリスの髪色を見てハッとした様子で今度はアリスのほうへと、小走りで駆け寄っていく。

 エドワードと何か話しながらこちらに来ていたが、商人が急に来たのだからアリスも驚く。彼女の前まで来た商人はガッシリと手を握ってまた号泣しながら礼を口にする。



「まさか神子様御一行とは露知らず!! わたくし、この先の街で商売をさせて頂いております、バルドというものでございます。もし宜しければ神子様のお名前をお伺いしても?」


「あ、あら、どうもバルドさん。私はアリスよ。無事でなによりだわ」


「はいぃ! お陰様でございます!」



 ブンブンとアリスの手を上下に振っている。



 なんというか、あれは大袈裟にしてるのか本当に溢れんばかりの気持ちを抑えられないタイプなのか……。



 アリスに被害がなさそうなので、『ふぅ』とアッシュはため息をおとしていると今度は兵士の人が彼の元へ来た。恐らく、負傷者の確認も終えて、主であるバルドに報告しようとしていたがあの様子のようなので落ち着くのを待っていたようだ。



「やぁ、あんた、さっきはありがとよ」


「ん? あぁ、さっき切られそうになった傭兵の人か。大丈夫だった?」


「えぇ、助けていただいたおかげでなんとか。アンタらホントすごいな。さすがは世界を巡る神子様と守護者様って感じだな」



 『ハッハッハッ!!』と高笑いしながらアッシュの肩をバシバシと叩く。


 叩かれても彼は嫌な顔しないでその傭兵と肩を組み、ノリに合わせて一緒に高笑いをすると、ジッと冷ややかな目をするエドワードの視線に気づき、肩を組むのをやめて軽い咳払いをした。



「コホン。エドワード、そんな顔しないでほしいなぁ〜、なんて?」


「はぁ、どちら様で? 私の知り合いに初対面の人に対してそのノリするやつなんざ知らんな」


「いや、あの、ホント、その目はやめて! 傷つく!!」



 叫ぶアッシュを無視してエドワードは腕を前に組みながらため息をつく。慌てるアッシュはなんとか無視しないでとエドワードに言うがそっぽを向かれる。泣きそうな顔をしていると、その様子を見ていた傭兵は悪いことしたという様子で頭をかきながら、『な、なんかすまねぇな』と呟く。



「いや、大丈夫大丈夫……。それと僕は彼女の守護者じゃないんだ」


「え、そうなのか? あんだけ強いのに違うんだな。……あ、そうだ。名乗り遅れちまったな。オレはブレイブだ。あんたは?」


「僕はアッシュ。ブレイブはこの先の街のこと何か知らないかい?」


「知ってるも何も、俺のところの雇い主と同じ行き先だから良かったら一緒に行くか?」


「それはありがたい。道に迷わず行けるならお願いするよ」



 この先の道はそんなにないけど、道中の魔物との遭遇等を考えると人が多いことはありがたい。バルドにいまだにブンブン振り回されてるアリスにもその旨伝え、商人のバルドと傭兵のブレイブたちと共に行くことになった。

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