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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第四章 雪山の旅
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雪男2

 樹氷の森に入ってからは、まだ道らしき道がない。かといってズカズカとはいるのもかなり危険とのことだ。

 この森はもともとは大きな空洞があったらしく、木や氷のおかげで塞がってるように見えるだけで一部は穴が開いてるところもある。その中には魔物が住み着いていたり、逆さの氷柱など自然にできたトラップがあるそうだ。


 足元を気にしながらもアリスは先にスタスタと木の根に足を乗せながら進みながらグレンに話しかける。



「かなり進んだけど、一面真っ白で道なんて、見当たんないわね」

「人が通るところなら雪かきされてるところもあるそうだ。だが、最近は通る者も少なくなったと聞いてる」

「もともとスノーレインまでの道がなくなってほどんど飛空艇を使わないといけなくなったって言ってたもん。仕方ないわよ」

「…………あの国はそれ以外でもいろいろ問題になってるがな」

「え、そうなの?」

「あぁ」



 以前は栄えていて、それはとても綺麗な氷の国だったが、今や閉鎖的になったことをいいことに、怪しげな者たちの出入りもするようになってしまって、そのせいで国の王政もめちゃくちゃになってる。


 その説明を受けるとアリスは少し悲しそうな顔をする。



「そっか……。あの子大丈夫かしら」

「知り合いがいるのか?」

「うん。その国のお姫様が私の友達なのよ。もともと向かうのもその子から会いたいって言われてきてるのよね」

「……それいつの話だ?」

「魔導伝書鳩だから……多分半月くらい前かしら。一応、時間はかかるけど行くことは伝えてるわ」



 その言葉を聞いてグレンの足が止まる。止まったグレンを見てアリスは首を傾げながら同じように止まった。少しグレンの表情が険しい。



「え、何かあるの?」

「お前、いかない方がいいぞ」

「え、なんでよ?」

「そもそも、その魔導伝書鳩から来いと言う内容の話が来たものはお前から寄こしたのか?」

「うぅん、以前からやり取りはしてたけど、会いたいってときたのは少し返答がなかった時期が2.3ヶ月くらいあってその後だけど……」

「だったらなおさらだ。罠の可能性が高い」

「え、でも届いたのはちゃんとその子のだったのよ?なんで罠って思うの?」



 アリスの問いにグレンは彼女の近くのまで歩く。



「魔導伝書鳩は誰かが書いたとしても、その持ち主の魔力を使わせればいくらでも偽造は可能だ。それにさっきも言っただろ。あそこは今、王政がまともに出来ている状態じゃない。そんなもの送れるはずがーー」

「だったら、絶対にいかないといけないわ」

「……それが罠でもか?」

「えぇそうよ。だってもし本当にあの子が会いたいって言葉の裏が本当は助けを求めていたとしたら、放っておけないでしょ?」

「…………」

「グレン、心配してくれてありがとう。それにもしも罠だったらさすがにあんたを巻き込むようなまねはしないわ。そん時は助けに行くつもりなんだから。アッシュたちには言わないでよ」

「あ、おい!アリス!」



 そう言うとアリスはまた先に進んでいく。言葉にグレンは呆れた様子でため息をつく。言いたげな顔でアリスを見たが、今何を言っても無駄だろうと思ってしまう。


 そんな二人を後ろから見ていたアッシュとエドワードは話は聞こえなかったものの、何かグレンに関しては言いたげな様子でアリスを見ていたのはわかる。



「何の話なんだろうね?」

「さぁ。二人ともほぼ後ろ姿で何を話してるかまではわからなかったな」

「グレンに後で聞いてみようか。あの様子だと多分アリス、話さないだろうし」

「だろうな」



 大体アリスの考えてることはわかるようになっている。人の話を遮ってする時とかは、特に。


 グレンに追いつくように、エドワードに手を支えてもらいながらアッシュも木の根を渡っていく。アッシュもようやくではあるが手を支えてもらいながらであれば歩けるくらいにはなってきている。

 少しずつ回復してるのも実感できているからどうにか早く本調子に戻したい。



「エドワードもありがとね、手を貸してくれて」

「普段のお前を支えるのは厳しいが、その姿ならなんとかな。それにたまにはこういう頼られるのも悪くない」

「あはは、それもそうだね。いつもの姿だと重くて君が支えきれないか」

「ハッ まったくだ」



 以前なら頼っていくなんて考えもしなかった。

 なんでも一人でしようとして、一人でできているつもりだったけど、こういう時はまるで一人では何もできなかったことをすごく痛感した。最初はもちろん戸惑ってしまったけども、少しずつ頼ることを覚えていこうかと思えてもいる。



「さて、少し早めに行ってみるか?」

「そうだね。ユキたちも先に行ってしまってるし遅くなったら申し訳ないからさ」



 少しペースを上げて木の根に飛びながら行く。根じゃなくてもいけると思うけど正直リスクなので、仕方なく飛び越えながら行くと、バキッと音がした。


 ハッと2人して見るとエドワードが着地したところがヒビが割れている。マズいと思って次の根に移るが、アッシュは問題なく飛び移れたがエドワードは慌ててしまったせいか手前で落ちてしまう。



「エド!」



 沈むように落ちていくエドワードの手を掴むが、この子供の姿で耐えられるわけでもなく、一緒に穴へ落ちていく。どうにかアッシュが根を片手で掴むもかなり重みを感じる。


 普段なら持ち上げるなんて余裕なのに……!



「くっ……!エドワード!どこか掴めるところない?!」

「どれも雪ばかりだ!岩とかあれば……!」



 雪の中に手を入れて掴めるところがないか探すがどれも掴めない。その間にアッシュも上がれないか力を入れるが上手く入らない。

 せめてエドワードだけでも上へと手を掴んでいる方の腕を持ち上げようとするが……全く上がらない。



「くぅ……っこの、――うわっ!」



 ガリッと根を掴んでいた手がずれ落ちる。

 咄嗟に穴の入口に向かって叫ぶ。



「……っ!グレン!!!!」



 落ちた後、今の僕ではエドワードを助けられない。そう思って力いっぱい彼の名を叫ぶ。


 叫んだ声は穴の中で響き渡る。



 ―――――――――――



 後方で誰かが呼んだ声が聞こえた。振り向くとすぐ後ろにノアとユキ、リリィが居る。



「おい、今呼んだか?」

「え、僕たちですか?呼んでないですよ」

「……?」



 背中に乗っていたノアとその隣から来たリリィも首を傾げる。

 ”こいつらじゃないならアッシュかエドワードか”と思い2人の後ろの方を見るも、いない。


 ハッとしたグレンは一旦後ろの木の根に下がる。



「おい!アッシュとエドワードは?!」

「え、後ろからゆっくり来てたはずですが?……て、あれ?」

「……まさか!」



 そんなスピードは出ていないからはぐれるはずがない。そう思い来た道をトントンと戻る。急ぎのため、根ではなく枝を掴みながら確認していく。

 だが、どこにもいない。



「くそっ」



 次に掴んだ枝を大きくしならせ、上空へ飛ぶ。1番高い所まで飛んで、浮遊魔法で高さを維持して周りを見渡すが……、それでもいない。



「落ちたのか?」



 ボソリと呟いて、魔法を解除し、枝から枝へ飛んで、アリスたちがいる木まで戻り、降りる。

 降りてきたグレンにアリスが心配そうな様子で尋ねる。



「え、エドワードとアッシュは?」

「遠くまで見渡したがいない。恐らく穴に落ちたんだ」

「えっ?!穴にですか?!」

「根のところなら大丈夫だが、踏み外しでもしたんだろう。すぐあいつらを迎えに行ってくる。お前らは先に進んで森を抜けろ。その間はこいつが守ってくれる」



 グレンはそう言いながら自分の腕に傷をつけて魔法陣を書く。これは召喚の魔法陣だ。



「”我が血の契約に応えここへ来い。マリア”」



 唱えると魔法陣が輝き、鈴の音と共に綺麗な少女が現れる。白で協調された神官のような服装に長いふわりと三つ編みされた薄いピンク色の髪。


 そっと降り立つとグレンの方を見る。そしてその声は直接頭に響くような声だった。



『お久しぶりです。主様(あるじさま)

「あぁ、すまないがこいつらを守ってやってくれ。私は少し外す」

『かしこまりました』



 お辞儀しながらマリアは大きな魔法陣を展開させる。


 アリスたちの方を見て軽いお辞儀をした。



『その中なら外敵には攻撃は当たることはございません。それにもし落ちそうになってもこの中ならすぐ気づきますのでご安心を。もし他に必要なものがあればなんでも仰ってください』

「あ、ありがとう」

「じゃあ、行ってくる」



 グレンはまた先程の道を戻っていく。


 残されたアリスたちはマリアを見てからとにかく先へと進む。


 戻って行ったグレンはアッシュたちが通ってたであろう場所を見ていくが、穴らしきものはない。適当に落ちてもいいが、別の場所に出てしまう可能性がありそれも安易に出来ない。



「……チッ。こういうことならあいつらに追跡魔法でもつけておくべきだったな」



 ウロウロして無駄に時間を食うのはそれこそ不毛だ。


 仕方ない。あまり効率的では無いが、目星をつけたところから降りるしかないと思った矢先、少し戻って根のある場所を重点的に探すと、ようやく見つけた。

 根のところにうっすらとある血痕。恐らく落ちる前に掴んでいたんだろう。


 血痕がある根の近くに穴があった。


 その穴にグレンは躊躇なく降りていく。


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