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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第四章 雪山の旅

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いざ雪山へ3

 雪山を登り始めて数時間。ようやく頂上に着いた。

 頂上はとてもきれいな夕焼けが沈みつつあり、太陽の光でダイヤモンドダストが見られた。この景色はとても綺麗で思わず見とれてしまうほどだ。


 それにしても、てっきり向こうに続くトンネルがあるかと思ったらまさかそのまま登らないといけないとは思わなかった……。

 グレン曰く、吹雪の影響でトンネルはあるらしいが埋もれてるとの事。そりゃあそうだ。埋もれる。

 そして何より、この頂上はだからか空気が薄い。少しの呼吸もきつい気がする。


 後方でバテてるアリスにグレンは近寄る。



「どうする?このまま降りるか?」

「む、むり……。ここで一旦野営しない……?日も落ちかけだし……しんどい……」

「そうか」



 軽い返事をするグレンは平気そうな顔をしており、全く疲れてる様子がない。アッシュ以外のメンバーは結構疲れ果てている様子だ。

 岩に座らされてるアッシュがグレンに向けて軽く石を投げる。気付いたグレンはアッシュの方を振り向く。



「なんだ?」

「昼頃してた結界張れるかな? 空気薄いし寒いからね」

「それもそうか。少し大きめに張る。場所を探そう」



 グレンはそのままアッシュを抱えあげながら、辺りを見る。

 ところどころ、建物らしき残骸があって、その中で広めで瓦礫等が少ないところで結界を張ってくれた。


 アリスたちも避難するように結界内へ入っていく。



「はぁー!生き返るぅ!!」

「こんな長時間寒いところは初めてかもです……」

「つーか、アッシュとエドワードは暖かそうなのはわかるけどよ、1人だけ薄着なはずなのに平気な顔してるか寒いのかなんなのか途中わかんなくなっちまうし……」

「そうか。それは良かったな」

「いや、お前のことだからな?!寒そうにすらしねぇし!!」

「失礼だな。私も寒いのには変わらんぞ」

「だったら少しは寒そうにしろよ、平然な顔しやがって……」



 叫ぶノアに対してマフラーを取りながら言い捨てるグレンはそのまま今いる人数でも座ったり寝転がれるくらいの大きいシートを出してくれる。



「すぐに動けないならこの上で休んでいろ」

「あぁ、ありがとう」



 抱えられたままのアッシュはシートに乗せてもらう。その隣にエドワードも来たので座ったままの状態からどうにかアッシュはエドワードで支えにしながら立つ。傍から見るとまだよろよろしていては危なっかしい。


 エドワードは羽織っていたマントをたたみ、それをグレンに渡す。



「グレン、マントありがとう」

「そこ辺りに置いててくれ。あとで回収する」

「どこか行くのか?」

「仕事」

「この雪山のてっぺんで……?」

「この辺りで害獣がいるらしいからな。それを駆除するだけだ。すぐ戻る」



 それだけ言い残してグレンは結界外へ走っていった。


 こう見るとグレンは本当に色々と同時に事をこなしながらしている気がする。同行してることで動きが制限されてるはずなのに正直にすごいと思う。


 取り残されたアッシュたちは各々で野営の準備を始める。


 せっかくこんな広いシートだ。夜空も見えて、結界の中にいるおかげで寒くもないとの事で今回はテントはなしですることにした。



「アッシュ」

「ん?どうしたの?」

「魔力循環をしたいから付き合ってくれるか?」

「僕でいいならいいよ」



 エドワードがアッシュを正面に置いて両手をアッシュが出す。ニコニコしながら小さな手をグッパーさせていつでも来いと言わんばかりの表情。いつもなら頼もしいのだが今の子供の姿ではどうも遊びをねだる子供にしか見えない。

 そう思いつつもエドワードはアッシュの手を握る。



「始めていいよ」

「ん、わかった。何か気分が悪くなったり何かあればすぐに言ってくれ」



 昨夜の感覚を思い出しながら少しずつ流すようなイメージで魔力を流していく。


 流した直後にアッシュの顔が少し曇る。



「っ! 大丈夫か?」

「大丈夫、ちょっと量が多いと思うよ。なんというかね、こんな感じ」



 アッシュも魔力を流してくれる。自分が流してるところから細く柔らかな糸を流しているような感じだった。グレンとはまた違う流し方で最初はわかりやすくするためか少し魔力を感じる程度のものから本当に魔力を流してるのか思うほどの細さに変わる。集中力と繊細さがかなり必要な気がする……。



「僕の場合だけど、こんな感じ。はじめは難しいようなら少しずつ細くする感じでしたらうまくいくよ。ただ、イメージを崩したら一気にブレたりするから気をつけてね」

「イメージか、わかった……」

「えー、なになに?2人で何してるの?」



 魔力循環の練習をしていた2人の所へアリスが顔を出してくる。エドワードはビクッと驚いてきたことで急に魔力の波が来てちょっと吐きそう……。



「エドワード……、急に魔力出しすぎ……」

「す、すまん!」

「? なに?ホントに何してるの?」

「これ、魔力循環っていって自分の魔力を相手に送りながら自分に戻したりしてるんだよ。これ覚えたら必要最低限の魔力で魔法を使ったり、対象の状態を確認する時にも使えるんだよ」

「へぇ、私もやりたい!」

「じゃあアリスとエドワードでしてみようか。流し方はわかるかい?」

「できるわよ!まっかせなさい!」



 そう言いながら始めるが初めてとの事もあり、エドワードが顔をしかめる。初心者同士だけどエドワードは最初に教えてもらっているからかアリスに少しずつと教えながらしている。

 これなら互いに加減しながらできるだろうし、教えながらだとより理解しながらできるからいい訓練になるだろう。


 そんな二人をみながらアッシュは座ったまま足をパタパタさせつつ、たまに立とうとする。立つのは出来るようになったけど動くのはまだ厳しい。支えがあるとどうにか動けるが走り回っていくのはまだまだ時間はかかりそう。


 そう思っていると、一瞬何処からか爆音らしきものが聞こえた気がして振動もあったがすぐおさまった。


 どこかで雪崩でも起きたのだろうか?


 首を傾げるが少し経っても問題なさそうなのでそのまま無視をした。



 ーーーーーーーーーーーーー



 その頃、少し時間を戻してグレンは自分の用事のため、一時離脱していた。

 先程とは打って変わって強い吹雪の中、アッシュ達がいる野営地から数十㎞離れた場所。そこはある国の軍事基地だ。



「やはり気がおさまらなんな。アレックス。悪いが一つ潰させてもらったぞ」



 そう言ったグレンの手には人の生首ーー、この軍事基地の最高責任者数名の首だ。これは奴への手土産。

 悲痛に顔歪め、怯えた顔。この状態でも、こいつらは魔法のおかげでまだ生きている。


 ゆっくりと生首を持ち上げ、自分と同じ視線までもっていく。



「こ、こんなことをして貴様……ただで済むと思っているのか⁈」

「さっきも言っただろ。アレックスが私の逆鱗に触れたんだ。これはその制裁だ。文句なら奴に言え」

「な、なななんて身勝手だ!! 我々を誰だとーー」

「知らんな。それに奪ってきていた側がただ奪われる側に貴様らがなっただけだ。それとも、自分たちには来ることがないと思ったのか?おめでたい頭だな……。嗚呼、もう頭だけしかないな。それは失礼した」



 グレンは嘲笑うかのようににっこりと嗤い、目は口程に物を言うとはまさにこの事だろう。何かを感じ取った男はグレンを強くにらみつける。



「グレン……!!貴様あぁっっ!!」

「よく吠えるな、貴様は。あぁそうだ、アレックスに伝言を頼まれてくれないか?次、あれらに手を出したら直接、貴様の国ごと潰してその命尽きるまでずーっと苦痛を与えながら愛でてやる、ってな」

「ーーっ!!このくそ化け物がああああああ!!」

「あぁぁ……。痛い、痛い……。た、頼む。死にたくない……!!」

「アレックスが貴様らを助けるかは知らんが、期待してあいつに懇願することだな」



 それぞれいつまでも吠えるこいつらを魔法で生首ごと箱にしまい込み、それをアレックスのところへ転送させる。

 やかましいのがいなくなって吹雪の音だけが残る。



「さて、ここももういらんな」



 銃を生成し、軍事基地に向ける。

 パァァンッと銃声が鳴り、グレンは指をパチンと鳴らす。大きな魔法陣が展開された直後、まるでそこに巨大な火の球体、太陽のような見た目の球体が軍事基地を包み込み、爆ぜた。


 一瞬にしてそこには大きな焼けた跡のみで何も残ってはいなかった。



「……二度目は許さん」



 目を細めながらぽつりと呟く。


 さて、戻ろう。

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