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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第四章 雪山の旅
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いざ雪山へ2

 グレンの読み通り、天気が荒れてくる。


 簡易的なテントをグレンが魔法で立ててくれて、その中にエドワードと足の間にアッシュを置いておく。相変わらず湯たんぽ代わりらしい。



「……アッシュ、すまん……」

「ん?僕はいいよ。暖かいし、今のところ僕も何も出来ないからさぁ」

「……そう、か……」



 ギュッとアッシュを掴んだまま背中に顔を埋めてしまった。その時の場合は正直どうしたらいいか分からない。されるがままとりあえず落ち着くまで待っておくことにする。


 一方で、外にいるグレンは荒れた空を見上げていた。


 その後ろではアリスたちが何をするんだろうと見てる。アリスの隣にいたノアは彼女の肩を叩く。



「なぁ、何するんだ?」

「さぁ? 何するか気になるけど」



 顔を見合わせたあと、グレンが動き出した。



「さて、やるか」



 そう呟くと、グレンは武器を生成する。それはライフルと呼ばれる銃だ。魔法の弾を取り出し、装填する。それを空に放つ準備をし、後ろにいるアリスたちに忠告をした。



「耳を塞げ、最悪、失敗をしたら雪崩も起きるから気をつけろ」

「ちょっ?!雪崩?!なんかするの⁈」

「あぁ、今から空を割る」

「割るの?!」



 アリスのその返事を聞き終わる前にパァンッと銃声が鳴る。

 唖然とした三人は弾の飛んで行った方を見る。吹雪で途中見失ってしまい、鳴り響く銃声は大空へと消えていく。



「”殲滅魔法――”」



 パチンとグレンは指を鳴らしながら唱える。

 同時に上空で大きな魔法陣が展開され、無数の魔法陣は雲を全てを覆い尽くす程の数が現れる。アリスたちは空いた口が塞がらない。何故なら、”普通”は無理な魔法だからだ。



「”神炎”」



 眩い光が迸り、爆音が響く。眩むほどの光だが、衝撃は結界のおかげでないものの、アリスたちは言葉を失いながら絶句する。


 何故なら空が本当に割れていた。夜が丸見えになり、夜空が見えている。じわじわと夜はなくなり、綺麗な晴天へと変わった。

 グレンは空が晴天に変わったことを確認して、持っていたライフルを消す。



「ふむ、よし」

「よし、じゃない!!何してるの?!」



 アリスはグレンの腕を掴み、揺らす。

 それでも”何が?”という顔でグレンが首を傾げる。



「なんだ?」

「いやいや普通、殲滅魔法なんて普通は使えないでしょ?!何あれ?!吹き飛んでるんだけど?!?!」

「使えてるから吹き飛ばしただけだが。それに吹雪だと進めないし、エドワードが動けないだろ」

「そうじゃない、違うから、本当に……」

「アッシュも扱える程度の魔法だし、見たことくらいあると思ったんだが……」

「あんたら……ちょっと、規格外にも程がーー、いやあんただわ。アッシュはまだそれ使ったところ見たことないわよ……」



 何故、怒られてるんだろうと分かってない様子のグレンはテントの中へアッシュたちを呼びに行った。

 その様子を置いておいて、アリスはクラクラとする頭に頭を抱える。



「待って待って……。覚醒したら普通にあんな感じになるの……?」

「……わかんねぇ、ヤバいって。まじホント……」



 強くなるために追いつくとは言ったけど、あれは規格外過ぎで追いつける気がしない。身体能力以前に魔法行使するための魔力量がえげつない。先程の殲滅魔法に関しては一般的では魔導士が100人、儀式がないと出来ないからだ。


 それをあんな弾ひとつで空を吹き飛ばす。いや多分あれでもかなり加減してる状態な気がするけども、絶対におかしい……。



「私たち、死ぬ気でやんないとダメね……」

「きっちぃて……」



 項垂れるアリスを他所にアッシュたちが出てくる。

 空が晴れていて、かつアリスたちの様子がおかしいのでアッシュは、”ん?”という疑問を持った顔をし、グレンを見る。



「何したの?」

「…………殲滅魔法で空を吹き飛ばした」



 聞かれたグレンはそっぽを向いてこちらに視線を合わせない。

 そんな彼にアッシュはため息をつく。



「はぁ、天候変える為だけにそれ使うの君くらいだよ」

「一般的に吹雪が吹くと体力を著しく損なうと聞いていたからない方がいいかと思っただけなんだがな」

「思っても殲滅魔法までは使わないよ。僕も使えるけど、さすがに急に撃たない。危ないから」

「ちゃんと結界を張ってる」

「そういうことじゃないからね」



 ぴしゃりとアッシュに言われるが、なんでやってしまったのか分からないグレンは自身の頬を軽く掻きながら”別に殲滅魔法くらい、いいと思うんだがな……”と呟きながら少し困った顔をしている。

 ある意味では強すぎてその辺は加減が分からないのだろう。


 気持ちはわからないでもないけど……。



「そこまで言われるとは思わなかったが……。本来、誰でも使えるものだろうし」

「それは仕組みを理解してる人だけでしょ?」

「……? 殲滅魔法は大勢の魔導士と儀式をしないと発動しないだろ」



 エドワードの言葉にアッシュとグレンは首を横に振る。



「魔法陣の仕組みさえ理解してたら、威力も変えられるし消費量も変えて行使できるんだよ。もちろん殲滅魔法に関しては消費量は多いけど、一人でも使用は可能だよ」

「そうなのか、仕組か……」

「今度、教えてあげるよ。君の魔力量なら問題なく使えるからさ」

「あぁ、楽しみにしている」



 エドワードは魔法に関してかなり勉強熱心だからこういう手の話は結構よく聞いてくれる。今彼が使う補助魔法も僕が教えたものも多い。現にどこから出したのか、メモを取ってる。それに、だいぶ薬も効いたのか顔色もいいし、震えも治まってるようだでよかった。


 熱心にメモしてるエドワードの腕をグレンが掴む。

 急に腕を掴まれ、そのまま引き寄せられたため、驚くが、持っていたペンをグレンが取ってしまう。



「勉強ついでに覚えておけ」



 そう言って、エドワードの手の甲に印を書く。書き終えるとペンは手に戻してくれた。


 模様だろうか。見たことがない。


 まじまじと眺めた後、エドワードはグレンの方を見る。



「万病消符の印らしい。遥か東方の秘術とは聞いてる。私は実際使ったことはないが、気休めでも効くかもな。それと印の書き方は知ってるがこの文字は私も読めない」

「君、わからないもの施したの?」

「一種の(まじな)いのようなものだからな。問題はないだろ」

「だが覚えておくのもいいな。これも覚える」



 書いてもらったのもを書き写す。


 写し終えたことを確認し終えたグレンはアリスたちはすでに先程の驚きで疲れてそうだが彼は気にせず結界を解く。解いたことで先程までの冷気が容赦なく襲ってきたため、アッシュとグレン、エドワードを除く四人は引っ付いて震える。


 平然としてるが、グレンは防寒着や今エドワードとアッシュが羽織っているマントをつけてない。赤いマフラーのみ以外は薄着の黒の長袖と長ズボンの彼だ。


 寒くないのだろうか……。



「お前、寒くないのか?」

「ん?さすがに結界を外しから寒いが?」

「なっ?!こ、このマントすぐ返す!」

「今はいい。日が出てるし、薬が効いてるとはいえお前は暖かくしてた方がいいからな」

「日が出てると言うか君が雲ぶっ飛ばして強制的に出したんだよ」



 そう言われてもグレンはべーっと舌を出しながら地面に突き刺していた棒を引き抜き、先に進む。


 後に、グレンが爆破したあの現象を山の怒りだの女神のお怒りだのと色々尾ひれが着いて騒ぎになっていたそうだ。


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