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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第四章 雪山の旅

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魔力循環

 


 食事を終えて就寝したその日の夜。


 目を覚ましていたグレンは小さな姿になったままのアッシュの額に手を当てて、微弱に魔力を流していた。こうすることによって魔力回路の回復に向上するように促している。それに当初に比べ、顔色もいい。

 寝ているアッシュの隣に座ると、アッシュと一緒のベッドで寝ていたエドワードを起こしてしまったようだ。



「んん……。あ……? グレン?」

「あぁすまんな。起こしたか?」



 目をこすりながらエドワードはゆっくりと起き上がり、まだ眠そうにあくびをしながらこちらの方を見る。



「いや、大丈夫だ……。ところで何していたんだ?」

「魔力循環。アッシュに微弱な魔力を流して魔力回路の回復を早めているんだ」

「なるほどな。ん?ずっとしていたのか?」

「ずっとではない。こいつが寝ている時に10-15分ほどの時間だ。それ以上すると逆効果になるからな」



 それでもずっと継続的に一定の魔力を流すのはかなり難しい。どうしてもぶれてしまったり集中力が持たないことの方が多く、魔力自体が繊細だ。

 感心しながらグレンが魔力を流してる様子を見る。確かに薄っすらと流れてるのがわかる。本当に微弱な魔力を流し続けていた。



「……それは私もできるか?」

「できないことはないと思うが、少々難しいと思うぞ。自分の身体に魔力を巡らせるのと他人に魔力を巡らせるのとでは勝手が違うからな」

「それでも慣れれば魔力の扱いはよくなるだろ?」

「まぁそれはそうだが、……お前焦ってるのか?」

「……、私はみんなよりも身体が弱いし、魔法も援護ばかりでそう役には立ってない。覚醒もどちらにしろ今すぐできない。だから少しでもできることは増やしたいのだ」

「…………」



 グレンは目を細めながらエドワードを見る。


 やはりかなり焦っているようだ。だが、魔力を見る感じではそう弱いわけではないはず。自信がないのだろうか。



「なら、一度やってみるか? 私で試しに流してみろ。手本を見せてやるから感覚で覚えくれ」

「わかった。ありがとう」



 アッシュの額に置いていた手をエドワードが差し出してきた腕を掴む。触れてもわかるがそこそこの魔力は持っているし、魔力回路も問題ない。

 だがせっかく本人の希望だ。向上心を無碍にするわけにもいかない。先程、アッシュに流していた微弱な魔力をエドワードにも同じようにする。対象の魔力回路に浸透するように、薄く、柔らかく、全身に回るように流していく。


 魔力を流しているとエドワードが少々きつそうな顔をしていた。



「……大丈夫か?」

「あぁ……。すこし、苦しいだけで、問題ない……っ」

「苦しい?」



 慣れてもらうために流してる魔力量的に子供でも問題ないくらいの本当に微弱な魔力だ。流す量が多いとそれだけ負担になる為息苦しかったり不快感が出てくる。そのため、今流してる魔力量で苦しいのは少々気になる。一度流すのをやめて、エドワードの魔力回路の確認をした。



「……。おかしなところはないと思うがな」

「? なにかあるのか?」

「今の魔力量で苦しいならどこか魔力回路に異常がある可能性がある。エドワード、背中をこちらに向けろ」

「わ、わかった……」



 後ろを向いたエドワードの肩に触れる。両手で触れながら触診するがいまいちわからない。


 ……あまり気は進まないが、もう少し詳しく診るしかないか。



「エドワード」

「なんだ?」

「もう少し詳しく診るから直接触れて魔力を流しつつ、魔力回路に触れる。痛みや不快感が出ると思うが、少し我慢できるか?」

「大丈夫だ。わからないままよりはマシだからな」

「ん、耐えれそうにないときは中断するからその時は言え」



 頷いたエドワードは自身のシャツを捲り、背中を出す。グレンは片手の手袋を外し、魔力を手に流しながら触れる。触れた肌にずぷんっと沈めていく。本来は触れることができない魔力回路に直に触れるとエドワードの身体はビクッとし、痛みで呻くがどうにか声を噛み殺してた。


 それもそうだろう。魔力回路はある意味では神経のそのものだ。だからこそこれが傷つけば痛みが走り、今のアッシュのように動くこともできなくなる。


 なるべく痛みを与えないように慎重に触れていく。



(…………? なんだこれは?)



 魔力回路に何か黒い種子のようなものが張り付いている。それは心臓に近いところだからあまり安易に触れることは厳しそうだが、本来こんなものついてるはずがないし見たことがなかった。


 グレンは顔をしかめるが、現段階ではこちらでできることはないため、気になりはするが一度手を引き抜く。



「もういいぞ。大丈夫か?」

「……っ だ、大丈夫だ」



 かなり顔が真っ青になっている。ヨタヨタと捲っていた服を直して、身体の向きもグレンの方へ向き直す。



「どうだったか?何かあったのか?」

「……いや、まぁそうだな……」

「…………」

「魔力回路に少し気になることがあってな。私の方で調べておくからわかったら教えてやる」

「そうか……」



 暗い顔をするエドワードにグレンは少し考えながら再度手袋をはめる。しょげるエドワードに両手を差し出す。



「魔力を流すこと自体はできると思うから少し試してみるか?」

「あ、あぁ、わかった」



 差し出された手を掴み、集中する。まだ流せていないため、グレンが口を開く。



「最初は初めてだろうから自分に流すのと同じようにしろ。左手から対象を通して右手に巡回させるようなイメージだ。そう、ゆっくりと流して……」

「…………っ」



 魔力を流すのもきつそうな様子。やはり先程の何かが原因だろう。

 そして、荒く相当量の魔力の流れこんでくるのを感じる。普通ならこれは不快感と吐き気を催すほどのもの。あまりグレンは気にしないでそのままエドワードがどうにか魔力を流そうと必死な間に自身の魔力を再度エドワードの魔力の流れに合わせて流す。


 するとエドワードの表情が少し柔らかくなっていく。



「ん、少しきつくなくなった?」

「お前の流してる魔力に合わせて流している。そのまま集中。私が流す魔力と同じように流して」

「あぁ」



 荒い魔力の流れから徐々に柔らかな流れに変わっていく。が、まだ魔力の流す量が多い。



「まだ多い」

「……わ、わかった」



 エドワードにグレンは”ゆっくり、ゆっくり……”と言う。それを聞きながらどうにかゆっくりと魔力の量を調整しながらしていく。

 そしてようやく微量な魔力で少しずつなっていく。それでもまばらで流れではあるがよくなっていた。



「……よし、いいぞ」

「…………」

「? エドワード?」



 まだ魔力を頑張って流そうとしてる。これ以上は魔力不足になってしまう。

 丁度エドワードの顔の近くに手があったので、パチンッ!と指を鳴らす。鳴った音に驚いたのかビクッとし、過剰に魔力が流れてきた。


 不意に流れてきた魔力に一瞬グレンも驚きの表情したが、すぐいつもの表情に戻る。



「……集中してるところ驚かしたのは申し訳ないが、集中しすぎと急な魔力はやめような?」

「す、すまん。大丈夫か?」

「私は大丈夫だ。それより魔力循環の仕方はわかったか?」

「あぁ、まだ難しいがどうにか……」

「これができるようになれば魔力を行使する際に無駄な魔力の消費を抑えることができるから、頑張って慣れることだな」

「なるほど、やってみよう……」

「まぁ慣れるまでは付き合ってやる。あとはアッシュに付き合ってもらえ。ただし10分以上するなよ」

「わ、わかった」



 これができるようになるだけでもまた少しは役に立てるかもしれない。


 フンスッと意気込みながらまだ手のひらに魔力を込めながらやろうと頑張るエドワードの姿に面白かったのか少し笑いそうになりグレンは口元を隠して立ち上がる。



「っ! 体調が悪いのか?」

「ん?あぁいや、そういうわけではない。前向きなお前の姿が少々面白かったからな」

「真面目にやろうとしてるつもりなんだが」

「そうだな、それは失礼した。すまんすまん」



 小さな舌打ちをエドワードはしながら再度、微弱な魔力でできないか練習を自分の手でし始めた。

 向上心はいいが無理をするタイプだなと思い、枕にしていたソファーのクッションをエドワードに投げる。

 もちろん集中しようとしていたエドワードは避ける前に当たってしまった。



「ぶっ⁈ な、なんだ⁈」

「ほどほどにしろよ。明日早いんだろ?」

「う……、わかった」



 渋々布団へもぐり、眠るかどうか見守っていたら次第に寝息が聞こえてきた。


 どうやら寝たようだ。


 その確認ができた後、グレンも眠りにつく。

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