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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第四章 雪山の旅

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雪山の麓にある宿1

 森を抜けてしばらく歩くと、雪が降り積もり、気温は一気に冷え込んだ。


 ちらほら舞い始めた雪が、肌を刺す。


 アリスがバタバタと寒そうにしながらアッシュからもらった自立型の炎を猫の姿に変えて首元で巻くようにしていた。それでも寒いようで震えている。



「うぅー! 寒い!!」


「もう少ししたら街だ。そこでもう少し防寒着をそろえよう」


「それもそうね……」



 エドワードの問いに返したがアリスは震える身体をどうにか暖を取りたいみたいでリリィにしがみつく。

 歩きづらいけど、寒さは少しなくなる。


 その隣でグレンに抱えられたままの子どもの姿をしたアッシュはうとうとしていた。森を出てからずっと眠そうな顔をしている。グレンいわく、回復のための睡眠らしい。無理に起こしたりせず、そのまま寝かせている。


 アッシュの様子が気になってグレンの横までエドワードが駆け寄る。



「アッシュの魔力回路は治るんだったよな?」


「あぁ、寝ているところをみると、一応できているとは思う」


「……前々から思っていたんだが、その回復力は覚醒したらなるのか?」


「あぁ、基本、守護者はな。……だがあまり怪我に関しては覚醒後はしない方がいいぞ」


「そうなのか?」


「どんな怪我でも治るが、その代わり生命力、いわゆる寿命を削るからだ。どんな大怪我でも、どんな瀕死、致命傷など治ってしまう。一番最悪なのは拷問された時だな。勝手に治るから死ぬこともできないから永遠と痛みに耐えさせられる」



 それを聞いてエドワードはゾッとする。

 どんなに傷ついても治る……。確かに拷問にかけられてしまうとなると想像以上の地獄なのだろう。



「だ、だがさすがに首を切られたら死ぬんじゃないのか?」


「どうだろうな。私は心臓を取られても生きていたことがあるが、さすがに首を切られたことはないな」


「しんっ⁈ お、お前心臓取られたことあるのか?」



 エドワードの問いに、しまったという顔を一瞬したが、言ったものは仕方ないという顔に変わり、話を続ける。



「まぁ、いろいろあって」


「何があったか聞きたいような聞きたくないような……」


「聞かない方がいいぞ」


「そうしておく……」



 ゲンナリとして、少し吐き気を覚える。なんだか守護者までも人攫いにあう理由が何となくわかる気がする。ある種の(てい)のいい人間兵器だ。覚醒でもしたらそれこそ一つの軍にも匹敵しそう。



「あ、それと……、もう一つ気になってたんだが……」


「なんだ? まだあるのか?」



 もういいだろう、と言わんばかりの顔をしながらグレンはまた首元に手を当てて搔いていた。少しばかり血が滲んでいる気がする。



「その首を搔くいたり、手を置くの、癖か?」


「首?」



 そう言われてグレンは搔く手を止める。


 何か考えた後、小さく首を傾げる。



「……気にしたこと無かったな。多分、癖……なんだろうか?」


「自覚なかったのか? 血が滲んでるぞ」



 指摘されたグレンは手元を見る。手袋嵌めていたにも関わらず、確かに少し血で滲んでいた。



「……ま、どうせすぐ傷は治るから気にするな」


「あまり掻きすぎると化膿するぞ」


「私はお前らと違ってそんなヤワな身体じゃない」


「いや、そりゃあそうだろうがな……」



 グレンの適当な返事に呆れるエドワードだったが、急にグレンは一度止まり、振り返る。



「さて、村に着くぞ。お前たちは町に着いたらいつもどうしてる?」


「宿探しだな。人数が人数だから早めに部屋の確保しておきたい」


「そうか。ならこの町には、宿は一か所しかない。そこに向かうぞ」



 そう言ってグレンは宿まで先導してくれた。


 宿に着くまで、雪を踏みしめる音だけが、やけに大きく聞こえた。


 そこは少し古びた建物の二階建て。正面玄関の扉を開けると中は暖房が効いてるのかものすごく暖かい。入ってすぐ奥に老婆がうとうとしながら受付にいた。

 グレンはその老婆の肩を軽くトントンと叩く。その振動で老婆は目を覚ました。



「んん……? あぁお客さんかい、いらっしゃい。……あぁ、アンタかい」


「空きはあるか?」


「そうさね……。ちょっと待ちんさい。……。…………。あー、人数は?」


「七名だ。最悪一人は入れないなら六名でいい」



 そう言って名簿らしきものをペラペラとめくる。



「いんにゃはいれるよ。ただベッドが足りないかもしれないからねぇ。今はあいにく一部屋の大部屋しか空きがないんでぇな。ベッド三つしかないんだわさ」


「それでかまわん」


「あいよぉ、じゃあ大人五人とお子さん二人で銀貨3枚ね」


「待ってばあちゃん、俺はハーフフットだからこれでも大人なんだけど!」


「あ、これ、その寝とる坊主に渡してあげんしゃい。飴ちゃんよ」



 そう言って部屋のカギと飴を受け取った。後ろでは子ども扱いされてるアッシュとノアにアリスが腹を抱えて笑っていた。あいつも大概人の不幸をよく笑う。


 場所は二階の大部屋。少々手狭だが、寝れなくもないところだった。後ろから入ってきたユキがアリスに声をかける。



「ベッドどうします?三つしかないですが……」


「二、二、二で寝たらいいと普段なら言いたいけど、なんと我がメンバーには今お子様になってる人がいます。なので二、二、三でどうよ」


「私はソファで寝るから数に入れなくていいぞ」


「え、グレン、入らないの? ベッド」


「……一応私はただの同行だぞ。仲間内にいれるな」


「あら、私は仲間と思ってるわよ」


「…………」



 グレンはアリスの返事には否定も肯定もせず、一番窓際のベッドにアッシュを寝かせる。

 スヤスヤと眠ってるアッシュの頭を撫でて、グレンは窓を開ける。



「私は少し出る。夜には戻れるとは思うが、町の外には出るなよ。それと――」



 こちらを指を()す。



「ここの婆さんの言うことは聞いた方がいい。後々面倒になるからな」


「え、それってどういうこと?」


「とりあえず忠告はしたからな」



 そう言ってバッと外へ出てしまう。


 全員で顔を見合せて首を傾げる。とりあえずグレンが言うのだからそうしようという話でまとめた。


 そして、二階から一階へ、眠っているアッシュのことはアリスとリリィに任せて他の三人は旅の支度のため町に行くことに。


 どこから回ろうかと話していると、先程の受付にいた老婆から話しかけられた。



「ちょい、待ちんな」


「え、あっ! はい! なんですか?」



 呼び止められたのでまずユキが駆け寄った。



「町に行くんかえ?」


「はい、僕たちの旅の支度があるので」


「そうかいそうかい。ついでにお使いを頼まれてくれんかねぇ?」



 そういう老婆は懐からお金が入った袋を取り出し、それをユキに渡す。少し重みがあるのでそこそこ入ってるようだ。



「今日の夕食と明日の朝食の材料。好きなもん買ってきんさい。ただし、肉と野菜だよ。魚は買ってきたらダメだかんね?」


「わ、分かりました。あとは何かいりますか?」


「そうさねぇ。あとはアンタらの好きな物をひとつ買ってきんさいな」


「あ、いやおばあさん。さすがにそれは申し訳ないから遠慮しておく。自分たちのものは自分で買う」


「そうかいそうかい。アンタたちは偉いねぇ」



 なんでも好きなものと言われても自分たちの旅な必要なものだから自分たちで買うのが当たり前だ。エドワードが断りを入れると老婆は優しそうに笑い、『最後に……』と指を立てながら言う。



「時間は十九時までには帰ってくるんだよ。遅くてもその時間までには宿に戻るんじゃ」



 今が十五時だからそれから十九時までに帰るようにとの事だった。どういうことだろうかと三人は顔を見合わせるが、真意は分からない。グレンの忠告のこともある。ここは言うことを聞くのが賢明だろう。



「わかった。十九時までだな」


「そうだよ。じゃあ、いってらっしゃいな」


「ほーい。んじゃあ、ばあちゃん行ってくるー」


「ほっほっほっ。はい、いってらっしゃい」



 手を振りながら見送ってくれる。

 少しエドワードは疑問に思いながらもとりあえず門限がある宿なのだろうかと考えるが、時間を守れば大丈夫だろうと思い、買い出しに出る。


 夕暮れに差しかかるためか、町はまだ賑やかだ。


 あちこちで魚やお肉、野菜が売られている。保存食になるものも欲しいところだが、アイテムボックスは三人ともそんなに量は多く入れられない。程々の量で調整しつつ、手持ちでも持ち歩けるものも準備することに。

 そういえば老婆から夕食と明日の朝食の分を頼まれていた。それも合わせて買わないと行けないので二手に分かれることにした。



「では僕とノアは食材を調達してきます。防寒着とかはお願いして大丈夫なのですね?」


「あぁ、とりあえず人数分と雪山を登るのに必要そうなものを見つけておく。もし持ちきれなさそうなら明日でもいいしな」


「それもそうですね、ではまた。十九時までに宿なので終わり次第直接戻りますので」


「わかった」



 そう言って解散した。


 色々な場所を見て回っていたエドワードはうっかり、時間の確認を忘れてしまっていた。

 時刻を確認すると十八時五十分。慌てて宿まで走って戻っていく。


 そして、十八時五十九分のところで、ギリギリ到着した。



「ハーッ……ハーッ……、危なかった……」


「おやおや、ギリギリだったねぇ」



 そういった老婆の声が聞こえて顔を上げると、笑っているはずなのに、目だけが笑っていなかった。


 そして何故かその手には、包丁が握られていた。


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