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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第三章 魔封じの森

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守護者とは3

 上から見下ろすアリスの髪が頬にあたって擽ったい。



「だから、私たちも強くなる。あんたにばっか守られてないで、私もあんたを守れるようになるわ」

「……あはは、君たちが僕を守ってくれるかぁ。それは楽しみだね」

「あら、まだまだ先って感じのいい方ね」

「君たちが覚醒まで出来るようになるまではね、それに君たちが強くなるなら越えられないように僕も頑張らないといけないなぁ」

「ふーん、いいわよ。あっと驚く間になってみせようじゃない。ソッコーあんたと隣に並んで戦えるくらい強くなるわよ」

「うん。楽しみにしてるよ」



 彼女たちが自分たちの身は自分で守れるようになれば、恐らく僕はある意味では不要な存在になると思う。


 実際、僕は彼女の守護者じゃない。


 本来は一緒にいることはないからだ。



「……さて、アリス。そろそろどいてほしいかな。君の髪があたって擽ったいからね」

「あらいいわよ」



 そう言いながら何故か顔を近づけて来る。息がかかるくらいの距離。顔の真横にあった両手がアッシュの頬に触れる。



「? アリス……? 近いけど、どうしたの?」

「…………」



 ジーッとアリスはこちらを見下ろす。さらに顔がだんだん近づいてくる。制止しようと身体を動かそうとするが、腕しか動かないが動く腕もそんな力が入るわけでもなく、どうにもできない。



「え、ちょっ、待っ――」



 額に何かが柔らかいものが触れる感触がした。顔を真っ赤になりながら恐る恐る目を開けるとニヤニヤしたアリスが目の前にいた。



「ふふふー。この前のヴィンセントの時のお返しー」

「ヴィンセントの時……? え、僕何かしたかな……?」

「え、あんた忘れてんの?サイテー」

「いや、ほんと僕ここまでされる何かした覚えないって……」



 あの時、僕何したっけ……?

 んー、抱きかかえて避けたり、あとは守護者の言葉言ったくらいだし……。


 それにまだ顔が熱い。耳まで赤くなってるのがわかるから、なお恥ずかしい。


 何をしたか考えてもやはり見当もつかなくて困ってると、アリスはため息をつく。



「あんた、無自覚で女の人落とすタイプよね……。私じゃなかったら多分他の人傷つくわよ」

「さ、さようですか……」

「ところで起き上がれるの?」

「んー、腕はちょっと動かせるくらいかな。それ以外は鉛みたいに重くて力が入らなくて全く動かない」

「意識ははっきりしてるのにね」

「恐らく魔力回路がズタボロなのが原因だろうな」

「うわっ?!」「きゃっ?!」



 急に現れたグレンに思わずアッシュとアリスは驚く。視線を見上げると、グレンが本を片手に立っていた。

 グレンは半分呆れたような様子で腕を組み、本を持つ手の指でトントンと叩く。



「あ、おはよう、グレン」

「あぁ、それよりお前ら何してるんだ?」

「え?」



 グレンから見ると色々まずい状態だとアッシュは気付く。さらに顔を真っ赤にしながら辛うじて動く手で否定するように横に振る。



「あ、いや、これはその……!」

「アッシュにプチ復讐したら怒られたのよ」

「プチ復讐?」

「騎士団いる時に、私、恥ずかしい思いしたの。だから仕返しに額にチューっしたの!」



 ドヤ顔をするアリスにますます呆れた様子でグレンは片手で頭を抱える。けど少し考え、”ふむ”と一言呟いてから視線だけこちらに向けてきた。



「アリス、お前は一応、女という自覚を持った方がいいぞ。アッシュも何したかわからんが程々にな」

「待って、ほんと僕、何もしてない!」

「はいはい、そういうことにしよう」

「か、勘弁してよぉ〜……」



 アリスはアリスで何故か勝ち誇ったような顔をするし、多分そうじゃないの分かってるけどアッシュの反応を楽しんでいるグレンは本で口元を隠していた。


 この2人、あわせるとタチが悪い……。



「さて、冗談はさておき、起きるなら早めに準備しろ。アッシュは私が手を貸してやる」

「…………ありがと……」



 苦笑いしながらアッシュはため息をつく。


 少し時間が経つと、エドワードたちも起きてきた。アッシュは今は準備も何も出来ないので、グレンに椅子に座れるように手を貸してもらった。


 ちょっと見ているだけというのも申し訳ない。



「ごめんよ。僕、何も出来ないから」

「気にすんなよ。俺らあん時全然役に立たなかったしよ」

「そうですよ。僕たちは今これくらいしかできませんからね」

「あ、そういや昨日のシチュー残ってるしグラタンとかやってみるか?」

「ど、どうでしょう?火力足りますかね?」

「んー、おーい、アリスー。アッシュの炎まだ持ってんだろ?貸してくれー」



 テントの方でまだゴロゴロしてるアリスに向かってノアが呼ぶ。

 気付いたアリスが懐から少し小さくなった白い炎の猫を取り出す。少し魔力を流すと猫はノアのところまで走っていく。



「サンキュー」

「後で返してねー」



 あれ、気づいたらあの炎、アリスの私物化してる。……まぁいいか。嬉しそうだし。


 アリスから受け取ったノアは同じように魔力を流して炎の形状を変えて料理を始める。

 どうやら料理にも活用されてるようだし、役に立ってるならいいや。



「アッシュ、少しいいか」

「ん?」



 グレンはアッシュの腕を掴む。掴んだ腕の袖を捲り上げる。腕を確認するように指で指圧したり、撫でたりしていた。



「……ん。やはりまだ魔力回路は回復しきってないな。体調の方はどうだ?」

「吐き気や痛みはないよ。触れてるとこも感覚はあるから麻痺はしてないと思う」

「そうか」



 グレンはアッシュの前までいき、膝をつくと、アッシュの靴を脱がせて自分の足の上にアッシュの足を乗せる。ふくらはぎや太もも、先程と同じように指圧をしながら確認する。



「魔力回路が完全に壊れてないのが良かったな。あとは森を出ればお前の治癒力で治るだろうが、かなり傷ついてる状態だから、恐らく時間はかかるだろう」

「……これ山、登れるかなぁ……」

「まぁ、無理だな」

「そうだよねぇ……」



 要介護状態なのが本当に困った……。せめて腕とかでも動くなら逆立ちでも進めるんだけど、もしくは足とか……。


 何とも度し難い状態にアッシュが頭を悩ませるがグレンは触診が終わったのか、アッシュの靴を履かせて、立ち上がる。



「よし、とりあえず回路以外は問題なさそうだな。副作用も治まったようだし」

「そうだね。昨日よりは全然大丈夫。動けないことを除いて」

「昨日も伝えてたが、お前が本調子になるまでは同行してやる。山越えする際はお前をおぶってやるから安心しろ」

「ありがとう。ごめんね、君仕事とかあるって聞いてるけど」

「しばらくは非番だから構わん」



 実際一応仕事中とは言えない。こいつらの監視も仕事。それにそのほかの仕事はある程度、終わらせながらもしている。そのため急遽な仕事がない限りは今は時間があるからだ。



 朝食後、出立のための最終準備してる時際に、アッシュをどう運ぶか悩んでいた。

 前回は気を失っていたから肩に担いでいたけども、さすがに大の大人を抱きかかえたりおんぶは大変ではないかという話になった。


 現在は正面でグレンはアッシュを抱えてる状態だ。いわゆるお姫様抱っこ。


 なぜこの持ち方にしたんだとアッシュは思いながらも動けないことは文句言えない、けどやめて頂きたい。



「別におんぶだろうがなんだろうか私は気にしないがな」

「僕が気にするよ。君、今日森抜けて街に行くんだよ。まず、今のこの正面での抱きかかえはやめよう」

「あんた、恥じらいなんてあったのね」

「恥じらいくらい持ってるよ。それに長時間は僕を抱えるのはきついんじゃないかな」

「まぁそれもそうだな。……。運べれば文句はないな?」

「え、まぁ君が運べるならいいよ。ある程度は」

「わかった。”小人(チャイルド)”」



 グレンはアッシュを抱えたまま、魔法を唱えるとポンッと音とともにアッシュの姿が変わる。姿の変わったアッシュはすっぽりとグレンの腕の中におさまるくらいの大きさーーもとい、子供の姿になっていた。服はもともとのサイズのままのためかかなりだぼだぼな状態で、靴は脱げ落ちていた。


 姿を変えられたアッシュはプルプルとしながらグレンの方を見る。



「これなら運ぶのも楽だな」

「え、ちょっ、待って、いろいろツッコませて。これ何?」

「運びやすい子供」

「……、これ戻るの?」

「どう足掻いても24時間以内は解けない。24時間経てば解けるぞ」

「それってもはや(のろ)いだよね。ていうか、24時間以内どう足掻いてもって、ならこれ”魔法解除(ディスペル)”も効かないってことだよね?」

「効かんな。術者か、それより魔力の強いやつならできるかもだが」

「僕、君より魔力が強い人知らないけど」

「そうか。それは残念だったな」



 涼しい淡々と答えるグレンに対して、すべての回答で腑に落ちないのか現状のアッシュは動く腕で頭を抱える。

 そんな彼を無視して、グレンは落ちた靴を拾ってアイテムボックスにしまっていると、アリスが目を輝かせながら二人に近寄る。



「めっちゃ可愛いじゃん!!」

「うわっ⁈」



 グレンの腕からアッシュを横からアリスが軽く持ち上げ抱き上げる。

 今のアッシュの身体は恐らく今は大体3~5歳くらいだろう。小さくなっているアッシュはサイズの合わないズボンが落ちないように必死に掴んでいた。



「あ、アリス!ストップ!ズボン落ちるからその持ち方やめて!」

「あら、それは申し訳ないわね」



 ちゃんとした抱きかかえてくれたためホッとするが正面で持つような形になる。咄嗟に後ろに引いてしまい落ちそうになるとエドワードが支えてくれたおかげで落ちずに済んだ。


 だが、咄嗟に逃げようとしたものに顔が埋もれてしまう。



「アリス、気をつけろ」

「ごめんごめん。アッシュも大丈夫?」

「うん……大丈夫……」



 いろいろ大丈夫ではないが、もう考えないようにしよう。


 諦めていると、横からグレンがアッシュを再度抱きかかえる。



「それと、今の状態で魔力は極力使うな。酷使は特に。怪我も禁止だ。回復にも魔力を使うからな」

「この状態でさすがにしません」

「ならよし」



 そう言いながらグレンは先を歩く。

 後ろでアリスがアッシュにちょっかい出そうとしているが気づいたのかグレンは後ろを振り返りながら少し睨む。



「遊んでないで行くぞ」

「あ、はーい」



 アリスの軽い返事で全員グレンの後に続いて先に進んだ。

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