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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第三章 魔封じの森

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守護者とは1

 グレンは悩んでいた。目の前にいるエドワードがそう聞くとは思わなかったからだ。それにこういう話をもしアッシュがしてるならすでに何かしらあるはずだが、これは私から伝えるべきか……。


 少し悩んだ末に、口を開く。



「……我々守護者の力はただ認識するだけでは本来の力は発揮しないだけだ。それぞれの能力は使えてもちゃんと扱えないのであれば一般人とさほど変わらんからな」

「? どういうことだ?」

「ふむ、簡単に言うと、記憶持ちや元々守護者が生まれる家系で超人的になってる奴や、後々発覚して急に強くなったやつとかいるか?」

「いや、ない、と思うが」



 実際、私自身がアリスに守護者として認識してもらっても大して変わらなかった。身体も弱い。変わったことと言えば予知夢が使えるというのと雷の扱いが上がったくらいだ。



「……そう考えると私はかなりダメだな……」

「いや、そもそも守護者は”攻撃(アタッカー)型守護者”と”防御(ディフェンス)型守護者”の二つパターンある。私やアッシュは見ての通り攻撃(アタッカー)型だ。みたところ、お前とノアはどちらかというと防御(ディフェンス)型だ。攻撃(アタッカー)型はリリィだけだろう」

「なら、いくら足掻いても難しいのか?」

「そういうわけではない。逆に攻撃が最大の防御になるように防御が最大の攻撃になることもある。一概に型が違うだけでは弱くもないし強いわけでもない。現に今回アッシュは防御に回った結果どうだった?」

「……あ」



 普段、強いアッシュが今回、防御に回ったことによって防戦一方になり、結果敗北してしまった。最後は攻撃的になっていたらしく一掃したが、そうでなければ誰か死んでいた可能性もある。



「だからこそ、守護者には攻撃と防御の2種類あるんだ。ーーって、お前らまで何してるんだ?」

「え?」



 呆れたような顔でグレンが見ている方向を見ると、アリスとリリィ、ノアにユキまでエドワードの後ろで聞いていたようだ。


 アリスがバッと手を挙げる。



「はい!先生!」

「誰が先生だ。……で、なんだ?」

「その攻撃(アタッカー)型と防御(ディフェンス)型で本来の力を発揮するためにはどうしたらできるようになりますか!」

「……。はぁ……、まぁ、いいか。今回だけだぞ」



 そう言って分かりやすくするために魔法で文字や絵を描いてくれる。

 なんだかんだで教えてくれるのかと正直、エドワードは思ったが口にせず聞く。



「本来、神子に関しては防御やサポートがメインであり切り札だ。そして守護者はよくゲームでいう大将を守ることが役目だ。そこで守護者は何度も言うように攻撃(アタッカー)型と防御(ディフェンス)型があることは理解したな? ただそれ以前に守護者として自覚するだけでは本来のその力は発揮できない」

「ふむふむ」

「それを含め、現段階でお前たちに必要なのは、まず”覚醒”することだ」

「覚醒?」

「あぁ、これがかなり重要であるしかなり難しいからな。それぞれ守護者によって”覚醒”の条件は異なるが順序としては、守護者としての”自覚”、そして力の”覚醒”、最後は.……まぁこれは”覚醒”に慣れてからアッシュから聞いた方がいいだろう。とにかく今のお前たちは”自覚”で終わったまま。だからまだ人並だ」

「覚醒の条件って今のところ分からないってことかしら?」

「これは人による。いわゆるきっかけ、そして自身の願いがはっきりしないと”覚醒”はできない」

「願いとはなんだ?」



 エドワードの問いに、先程まで出していた魔法を解除する。そして、足を組み、こちらをまっすぐ見る



「お前が守護者になった理由はなんだ?」

「え? それはアリスに守護者として昔選ばれてーー」

「違う。そこから認識がすでに誤りだ。アリス、お前は何でこいつらが自分の守護者と認識できるかわかるか?」

「うぇ⁈ え、えーと……、ちょ、直感!!」

「…………」

「た、タンマ!! えーとえーと……」



 アリスの答えに冷ややかな目をされて焦るアリス。うーんうーん、と嘆いてると、グレンはため息をつく。

 ハッとしながら、アリスは拳を握る。



「わかったわ!! 第六感かしら!!」

「これにて授業は終了します」

「ああぁぁ!!待って!!グレン、ちょっと本当にわかんない!!」



 またそっぽを向こうとするグレンの服を掴み、そうにかこちらを向き直してもらう。呆れながらグレンは答えてくれた。



「お前たちの神子は少々不安になるな……。まぁ要するに”覚醒”の条件がそれぞれ異なる理由は、何のために守護者となったか、何を一番願ったのか、それを強く願うことで”覚醒”する。神子が守護者がわかるのはその願いをもとに魂で契約してるからだ」

「……私が願ったもの……」

「こればかりは本人と神子しかわからない。それに記憶持ちも何度も転生して生まれると記憶は劣化して断片的になる。覚醒はより難しくなる、が、元々自分が願ったものだ。いずれ答えに行きつく。それを意識してするかしないで”覚醒”まで時間かかるかどうかだ」



 そう言ってグレンは立ち上がり、手をたたく。



「さて、話は以上だ。あとは自分たちでどうにかしろ。私はアッシュの様子を見てくる。それと洞窟から出るなよ。結界張ったから出たら入れなくなるぞ」



 そう言ってテントに向かう。


 エドワードはグレンがテントの中に消えたあと、アリスの方を見る。



「お前、あの守護者の話知ってたか?」

「うぅん、全然知らなかった。結構私生きてるけどそもそも守護者にタイプがあるのも初めて知ったもの」

「やはりそうだよな。だが、いいこと聞いたと思う。この話は兄様にも共有しておこう。もしまた生まれ変わる場合覚えてない可能性もあるがエフェメラル家で記録として残しておけば役に立つ」

「わかったわ。ヴィンセントにも共有しましょ。内容だけエドワード、まとめてくれる?」

「あぁ、分かった」



 だが、こんな神子にとっても守護者にとっても重要な内容を何故、今まで残っていないのもいささか疑問でもあった。

 自然的に忘れ去られていたのか、それとも意図的に消されていた可能性もある。


 ヴィンセントに共有するための内容をまとめるため、手紙の準備をする。


 ―――――――――――


 少しだけ時間を戻して、テント内。

 グレンが中に入ると、アッシュは無理矢理に身体を動かそうと這いずるような状態でいた。そんなアッシュの襟首を掴み、寝袋に押し込む。

 苦しそうにしているが、相変わらず睨むようにこちらを見てくる。



「黙って休め。無理に動かすな」

「……っ」

「ん? あぁ、()()か」



 そう言ってグレンは隣に座り、アッシュの心臓部分に手を置く。



「”解呪(ディスペル)”」



 白い淡い光が出てそのまま消えていく。きつそうな様子は変わらなそうだが幾分マシになったか、呼吸の乱れがおさまる。



「まぁ、その呪いだと、解呪(かいじゅ)も一時的だが、気休めにはなるだろ」

「……、なんで、君がそこまで、するのさ……?」

「別に、気まぐれだ」

「…………」



 回らない頭で何が目的なのだろうと考えたが、うまく思考がまとまらない。視界がかすむ中、横目にグレンを見る。



「……、君、さ……」

「なんだ?」

「………………いや、何でもない……」

「レイチェルのことを聞きたいのか?」



 グレンの問いに頷きもせず、黙って見たまま。


 そう、正直、聞きたい。

 君がレイチェルを、殺したのか、どうか。


 横目で見たまま、グレンを見上げると、いたずらにグレンはニヤリと笑う。



「さぁな、どっちだろうな。お前がつっかみかかれるようになったら教えてやる。私がしたことはお前にとってはどちらとでも取れるからな」

「……そう」

「さて、その様子だと、森を抜けても身体は動かすのは厳しそうだな。お前が本調子に戻るまではアイツらの面倒はみてやるから、回復に専念しろ」



 そう言ってグレンはアッシュの目を手で覆い隠す。

 グレンは少し寂しそうな顔をしながらボソリと呟く。



「……結果がどうであれ、お前は私を許さなくていい。それでも私は、お前が今度こそ笑っていられるよう、手助けくらいはしてやる」



 その言葉が聞こえた気がした。次第に眠気が襲い、眠りに落ちる。


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