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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十三章 枯渇事件

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枯渇事件:魔力強化4

 彼が眠った時、少し違和感があった。


 あの時、アリス君が連れてきてくれた時と違い、力が増していたのと比例して彼からは生命力が弱まっている気がします。身体がボロボロになっていたから、というのもあるでしょうが、それとはまた別に……。



(……まぁ、今は私の知るところではない、という感じですね)


「おい、ルーファス、早く部屋の鍵開けろよ。俺、お前の部屋の鍵あるけど両手塞がってんだからよ」

「はいはい」

「私がこじ開けてやろうか?」

「グレン君、君がそれしようとしたら扉の破壊になるからやめてください」

「扉の破壊ってよりもグレンはんの場合、粉砕やろ」

「ナギ、お前、埋めるぞ」

「中庭にちびっ子たちがいんだからやめろよ」



 ルーファスとユーリ、そしてグレンとナギの四人でアッシュが寝ている部屋へと向かっていた。少々人数が多いが、あれから三時間程だったので迎えに行っていたところだった。


 正直、グレンとルーファスの二人だけでいいと言ったが、ユーリは彼らを二人にしたくないらしく、仕事の書類を片手にくっついてきていた。ナギは、ついでだ。


 カチャンッと鍵を開け、扉を開ける。



「……相変わらず部屋が汚いな」

「ははは……、お恥ずかしい限りです」

「そう思うなら片付けをしろ」



 苦笑いをするルーファスにグレンが先に部屋へと入る。中に入ると散乱した書類、そして、唯一片付いているベッドに寝ているアッシュがいた。


 近付いて、トントンと肩を叩く。肩を叩かれてモソモソと動くが少し起きる気配が無かったので、今度は肩を揺する。



「おい、起きろ」

「……んん……。…………? あれ、グレン……?」

「あぁ、よく寝たか?」

「ふぁ〜……、うん、よく眠れた……」



 目を擦りながら、起き上がる。まだ眠たいのかウトウトとしている。寝惚けているアッシュの腕を掴み、魔力量を確かめる。



「……? おい、お前、私がいない間、何をしていた?」

「ふぇ? いや、普通に、ユーリとアティ……、それとルーファスから魔力、受け取って……それから、寝てた……」

「…………その三人以外からは受け取ってないのか?」

「うん」



 嘘をついているようには見えない。けど、アティとユーリが受け取った時、まだそんなに魔力量は増えていなかった。なのに……。



 チラッとルーファスの方を見ると、ユーリと何か話しをしている。



(……ルーファス、アイツ、やっぱり何か隠してるな……)


「グレン……?」

「……まぁいい、なら、魔力譲渡の続きはまだやれるか?」

「うん、寝たおかげか、だいぶ体調もいいから大丈夫だよ」

「そうか。……おい、ユーリ」

「んお? んだよ?」

「魔力の状態はどうだ? 回復はしているか?」

「あ〜、大体はな。……て、魔力の譲渡、まだやんの? んな頻繁にしちまって大丈夫なのかよ」

「本人の魔力酔いがあればやらないつもりだったが、大丈夫そうなら渡してくれ」

「…………別にいいけどよ。ほれ、ルーファス、気になってた案件いくつか持ってっから、渡してる間、確認してくれよ」

「えぇ、分かりました」



 持っていた書類をルーファスに手渡し、彼もベッドまで近寄り、腰掛ける。アッシュの手を取りながら、腕を前に組んでいるグレンを睨むように言葉を吐き捨てる。



「つーかよ、俺はアッシュに恩義もあるから協力してっけどよ、テメェは魔力の譲渡はしねぇのかよ。テメェの性格からしてしねぇってことねぇはずなのに、なんでしねぇの?」

「…………」



 ユーリの問いにグレンは黙ってしまう。


 黙ったまま、答えない。答えない彼にイラついた表情に変わり、舌打ちをする。



「おい、聞いてんのかよ?」

「いいんだよ、ユーリ」

「あ?」

「グレンが出来ないのは、多分、何か理由があるんじゃないかな。じゃなかったら君は僕のために無理するような人だからね」



 ”そうでしょ?”、と笑顔でグレンの方を見ると、視線があうと、少し黙った後、ボソッと呟くように口を開く。



「……私は、神子以外に自身の魔力を渡せない。それに、どちらにしろ私自身、魔力がないと死ぬ身体でもある。安易に渡すことも出来ないがな。……ま、私を殺したいなら、”魔力喰い(マジックイーター)”の群れでも連れてこい」

「え、いいんですか? そんな大事なこと、私たちの前で言っても」

「アッシュのことで協力してもらっているからだ。それに、ユーリは私をお前から引き離して、あわよくば殺したいんだろ?」

「……テメェがルーファスや騎士団に手を出さねぇって言うんならしねぇよ。おら、魔力渡すぞ」

「あ、うん」



 魔力を受け渡される。渡した後、まだ不機嫌な顔をして立ち上がる。



「つーかよ、そんなの理由になんねぇだろ。嘘かもしれねぇ言葉に俺は信用する気はねぇよ」

「ユーリ」

「るっせぇよ。さっきも言ったけどよ、今回はアッシュのためだ。テメェの魂胆はこの際知らねぇよ。信用だけはしてねぇってだけだ」



 睨むユーリにグレンはまたそれ以上言わない。言わない二人の間にアッシュがトンッと入り、ユーリの肩を軽く叩く。



「まぁまぁユーリ、僕のために力を貸してくれてありがとう。でも、グレンをあまりそんなにいじめないであげてくれないかな」

「…………あー、くっそ、わーってるよ。けど、俺はここの安全とルーファスの安全が第一なんだよ。いくらテメェの頼みでも、最悪を考えねぇといけねぇんだ。特に、アビスに深く関わりのあるコイツだぞ。いつ、何処で、どのタイミングで、あの忌々しい深淵の神子の野郎がテメェを使ってここを壊さねぇとも限らねぇからな」

「……そうだな。その判断は間違いは無いからな」

「全く、君もそういうこと言うから、無駄に敵を作るんじゃないの?」

「”神子の(めい)”を使われる可能性考えたら妥当だろ。それに、しばらく暇だからお前にも構えるんだぞ」

「あ、そうなの?」

「あぁ、(あるじ)黎眠期(れいみんき)に入ったからな」

「何それ?」

「簡単に言うと冬眠だな。一定の年数でそういう時期がアレにはある。その間はある意味平和だな」

「…………今の間に殺せないの?」

「出来るならしてる。尋常じゃないほどの不浄の瘴気のせいで私でも近寄れない」

「わ〜、マジかぁ。もし、そうなら殺しに行くのに」

「お前ならやりそうだけどするなよ。お前が不浄の瘴気に耐えられるとは……、あ、いや、どうだろうな」



 前に侍の国で不浄の瘴気がコイツには効いていなかったな。……偶然なのかなんなのか。



「とにかく、数ヶ月は非番だ」



 なら、しばらくは一緒にいられるのかな?


 そうアッシュは内心嬉しそうにしているとルーファスがパンパンッと手を叩く。



「なら、しばらくはユーリが心配することは起こらない、ということですよ。心配しすぎです」

「ルーファスは、ちと警戒とかそういうの頭に入れろよ!」

「ははは、ユーリがしてくれるので」

「俺の仕事が増える!!」



 ダンッと床を叩くと辺りの書類がブワッと飛ぶ。嘆くユーリにクスクスとルーファスは笑う。



「……なんやぁ、ツンデレなん?」

「何処がツンデレだよ!」

「え、ちゃうの?」

「ナギ、テメェは黙ってろ!」

「なんやぁ、照れくさそうにせんでもえぇやん〜」

「だあああああ!! 真面目に考える俺が馬鹿みてぇな雰囲気になんだろうがぁ!!」

「叫ぶ方が馬鹿だろ」

「テメェ!!」



 ブチ切れているユーリの相手を任せている間に、ルーファスはグレンの方へと軽く寄る。近寄ってきた彼に視線だけ向ける。



「なんだ?」

「もしよろしければ先程のアビスの黎眠期(れいみんき)のことを聞かせて貰えませんか?」

「別に構わないぞ。それに、聞いたところで(あるじ)にお前たちがどうこう出来るとは思わんが……」

「そういうのがあることがわかっているのとそうじゃないのとでは、神子たちの安全等や各国の動きも変わります。少しでも、あの神子の弱点があるのであれば、記録として残しておきたいのです。もしもの時に備えて、というものです」

「……奴との契約上、お前たちから聞かれたことには応えられるがお前たちが的確に聞かない限りは話せないぞ」

「ふふふ、そこまで聞ければある程度の情報を頂ける、ということですよね?」

「そういうことだ」



 あのアビスが不利になるなら、私としても()()()()()。あの、忌々しい神子が嘆く姿を見れるならいくらでも言ってやる。それに禁則事項に引っ掛からなければ喋れるし。



「……本当になんであなたはアビスに仕えてるかわからないですね」

「契約上、従ってるだけだ。じゃなければ、お前たちにあの時、コッチの情報渡すわけないだろ」

「まぁ、そうですね。あ、スパイしませんか?」

「無理。面倒。それに契約上で従ってる手前、聞かれたら言わないといけないからな。スパイには向かん」

「言ったことはいいんですか?」

「私の口から言われても大した問題がないからだろ。あとは、アレに常識的な考えでやっても無駄だぞ。話されてもそれはそれで面白い、というようなやつだからな」

「ご忠告ありがとうございます。では、ある程度のもの、聞かせてください」

「そうだな。じゃあソイツに魔力譲渡しながら聞け」

「はい、そうですね。分かりました」



 アッシュの肩に手を置き、魔力を流す。



「まだ、アッシュ君は魔力の受け取りはできますか?」

「うん、大丈夫だよ。というか、僕も聞いてていの?」

「別に」



 魔力を流しながら話している間にユーリは頭痛そうに書類をペラペラと進める。

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