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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十二章 雨の里

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雨の里:彼の居ない三日間2

 話が片付いたところで、アリスはどデカいため息を吐いて、机に腰掛ける。



「はぁぁぁぁ〜〜、じゃあアンタらの話はこれで終わりってことでいいわね。ところでジャンヌ(アンタ)何時(いつ)までいる感じなの?」



 腕を組んだままのジャンクにアリスは指をさす。指名されたジャンヌは”おっ”という顔をする。



「私か? そうだな、私はもう話は済んだようだから森に残している隊と合流しようとは思っている」

「そ、じゃあ気をつけて帰りなさいよ。ユキ、最後まで見送りよろしくね」

「え、僕ですか?!」

「連れ回ししてんだから当たり前よ。それにアンタなら大丈夫でしょ」

「……ま、まぁ、いいですが……」



 チラッと隣にいるジャンヌに視線を移す。ユキもため息を吐く。



「では、隊長、テントまでご案内しますよ」

「うむ、任せる」



 頷いたジャンヌを連れて部屋から出ようとしたところで、ジャンヌが口を開く。



「あぁ、そうだそうだ。この里には美味しいスイーツあっただろ。それを食べてから出たいと思っているんだが、それは付き合ってくれるか?」

「あぁ、アレですか? 別に構いま――」

「スイーツ?!」

「うわっ?!」



 先程まで不機嫌そうな様子のアリスが、”スイーツ”という言葉に目を輝かせてユキの肩に乗るように飛びつく。



「私も食べたい!!」

「あ、アリスもですか?!」

「お、アリスも来るなら来てくれていいぞ。私としてもアリスとももう少し話したかったからな」

「あら、私と?」

「そうだ」

「ん〜、スイーツご馳走してくれるならいいわよ」

「うむ、構わない」



 奢りという事でアリスは嬉しそうにユキも連れて里にある美味しいスイーツを食べに出ていった。


 残ったエドワードとリリィ、それとスイも後はアヴェルスとレインに任せると言って部屋から出ていく。


 廊下に出た三人は歩きながらこの後の動きについて話し始める。



「アリス、元気になったな」

「スイーツに目が無さすぎなだけだろ。それに、アッシュがいないことで落ち込んでるのは変わらなさそうだがな」

「……あのバカ、どこに行ったんだか」

「まぁ、ルーファスのところで手伝いしているんだろ。何の手伝いかは知らないが」

「ボクとしてはあの金髪がいない方がいいけど。人とは思えないくらいヤバいやつだもん」

「スイ」

「はい。ごめんなさい」



 いない方がいいと言うスイに怒るように名前を呼ぶとビクッとして、そのままエドワードの首元から服の中へとスルリと入って身を隠した。


 主人である彼に怒られるのは嫌なのだろう。



「……というか、元々ルーファスに話を聞く予定だったのに気付けばグダグダとここにいてしまってるな」

「問題が起こったからだろ。とはいえ、アッシュが帰ってこない限りはここを離れられないな」

「はぁ、そうだな。現状立ち往生か……」



 痛む頭に手を当てていると、フワリと風を感じる。振り返るとグレンが魔法で来たようだった。



「グレンか」

「あぁ。……アリスたちはいないのか?」

「アリスはジャンヌとユキと一緒にスイーツを食べに行ったな」

「そうか。なら、伝言を頼まれてくれないか?」

「伝言か? 別に構わないが」

「アッシュが戻る日に目処が立った。あと3、4日頃だろう」

「……ほぼ半月も何してたんだ?」

「そうだな、アイツ、守護者だが、記録を遺せてないだろ。お前はヴィンセントがいるからある程度は遺せてるからルーファスのところで記録を保管して貰うことになったんだ」

「記録か。確かにアイツのいた国は無くなったってアリスが言っていたな」



 アッシュが復讐で国ごと滅ぼしたらしい。実際にその場所に自分たちがいなかったからどうなってそうなったかは不明だ。詳細は、あの二人しか知らない。


 気にはなるが……、アティもいる手前あまり無理に聞き出すのも気が引ける。



「ん? 記録を遺すとはいえ、お前はいいのか?」

「一応、私も一緒に記録遺しをしている。アイツだけさせるのもって話だからな。で、目処が経ったから伝えに来ただけだ」



 まぁ、一緒に遺すというのはこれは嘘だ。元々記録を遺すつもりは無いがここで否定するとややこしくなりそうだ。


 その答えで納得したのかエドワードは小さく頷く。



「そうか。なら帰ってくる目処はアリスには私から伝えよう」

「あぁ、ついでにアイツに魔力増加の訓練もさせているから帰った頃には魔力は多いだろうな」

「……唯さえ魔力量が化け物なのにあれ以上に増やすのか?」

「覚醒している守護者はなるべく増やすようにした方がいいからな。アイツも増やし方は知っててもやろうとしないから数日一緒にいるついでにさせる」

「そうか」



 魔力増加は言うかどうか迷ったが帰ってた時に”魔力増えてないか?”ってなってないよりはいいだろう。


 伝えたいことは終えたのでグレンはまた軽く手を挙げて去っていく。



「……ふむ、どうする?」

「え、どうするって……、何がだ?」

「アリスに伝えるのだろ?」

「そうだな、アリスには伝えるが戻ってからでもいいだろ。どうせヤケ食いしているだろうし」

「それもそうか。…………なら、修行するか? アッシュ(アイツ)が鍛錬しているのにコチラは何もしないっていうのも置いてかれる気がして気に食わない」

「修行って……、私とリリィでか?」

「そう」

「……手加減ありか?」

「ない」

「そうだと思った。ならしない。一人でやる方がいい、一方的は鍛錬にならん」

「わかってる。前にやった条件と同じ、槍技だけ。その代わりお前は刀や魔法あり」

「なら、やる」



 完全では無いが覚醒できるリリィに勝てる気がしない。魔法や刀ありで、槍技だけのリリィにようやく五分五分……いや、三割の勝算だ。



「あ、なら、ボクも参加しようか?」

「私は構わないぞ」

「……ついでにノアも連れていくか」



 リリィから手合わせの参加の許可を頂いたところで、素知らぬノアを捜し、手合わせをするため再び足を進める。



 ◇



 その頃、スイーツを目的にしているアリスたち。道中はアリスは珍しく黙ったまま。着いてくることにはなったが、ほとんど口を開くことはなかった。


 店内に入り、メニューを確認する。



「えーと、隊長が言っていたスイーツはどちらです?」

「これだ。水わらび餅というものだ。見た目は完全に水滴のようなものだが、優しい甘さときな粉がいい塩梅になっているそうだ」

「なるほどですね……。アリスも同じものでいいですか?」

「そうねぇ。あ、それ以外の甘いものとかある?」

「あとは、パフェとか、アイス……あとはパンケーキですね」

「……パンケーキならアッシュにお願いするからそれ以外頼むわ」

「ほぉ」



 パンケーキ以外を食べると言ったアリスに、ジャンヌは興味津々な様子になる。


 このお店のパンケーキもそこそこ人気のようなので美味しくないことは無いはず。それなのにあえて手作りを選ぶということはそれだけその人のものが美味しいのだろう。



「あの男が作るパンケーキはそんなに美味しいのか?」

「今のところ、アッシュが作ったパンケーキ以上の美味しいやつは知らないもん」

「気になるな。是非いつかご馳走になりたいものだ」

「アッシュがいつ戻るか分からないからタイミングが合えばいいんじゃないかしら」

「そうだな。では、私は水わらび餅とパンケーキを頂こう」

「僕はそうですね……、水わらび餅だけでいいです。甘いものはそんなに多くは食べられないので」

「パンケーキエッグもあるぞ」

「なんでそんなに食べさせたがるんです?」

「よく食べて鍛錬するといいからな!」


(発想が脳筋ですね……)



 半分呆れた顔になるが、こう見えて隊長格の彼女だ。ある意味ではそれで彼女は強くなってるところもあるし、信仰に近いくらいの彼らも普通の一般兵より強い人たちも多かった。新人枠で参加はしていたがそれ以外は手練も多い。


 そう考えると、彼女たちと衝突しなくて良かったと心底思う。


 注文し終えた後、まだかまだかと楽しみにしているアリスとジャンヌにユキもクスクスと笑う。



「あら、何よ?」

「あぁ、いえ。先程までアリスも隊長も少々不機嫌そうだったのですが、お二人とも甘いものとなると上機嫌になったようで、よかったなぁと思いまして」

「そんな私が甘いもので機嫌取れると思ってるの?」


(思ってます……、て言うと怒られそうですね)



 笑って誤魔化していると、ジャンヌもこちらに視線を向けていたことに気づく。



「た、隊長?」

「私もそんな不機嫌だったか?」

「え、えぇ、まぁ」



 なかなか里での問題に決着がつかなかったことと、あと、アヴェルスからゴリラと言われてから、目に見えて不機嫌だった。


 そのため、ここにいる間に毎日と言っていいほど、水わらび餅等を食べにここに来ている。



(今、ゴリラの発言もう一度したら暴れそうですし)


「まぁいい。それはそうと、アリス」

「んー?」

「これは私個人的な質問なのだが、アリスは何故、神子として旅をしているんだ?」

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