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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第三章 魔封じの森

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灯り1

 ルーファス達と別れ、クロノス騎士団から出立してからしばらく経ったころ、目の前に広がる恐ろしく不気味な森。魔封じの森と呼ばれるところへ到着していた。


 そんな森の前でアリスはなぜか得意げな顔をして立っている。



「ふっふっふー!ついに目前まで到着したわね!」

「俺、絶対心を読むやつしない方がいいと思うんだけどな~」

「あら、なんでよ」

「だってよ、それ発動したら24時間聞こえっぱなしなんだろ?絶対頭パンクするって」

「大丈夫よ!何度も使ったことあるし、これしき問題ないわ!!」



 ノアの忠告に高笑いしながらアリスは発動させる。中に入ってだと使えない可能性があったので前もって使うことにした。

 余裕そうに手で髪を後ろにバサッとさせ、”いざ、しゅっぱーつ!”と元気に進んでいく。


 そしてーー



「もーだめ……。きもちわるくて、むりぃ……」



 森を進んで約1時間、一番最後尾でよろよろとしながら歩くアリス。魔封じの森のせいか、ずっと耳鳴りのような音とどこからのよくわからない声が聞こえてきてるらしく、かなり気分が悪くなるそうだ。

 となりで付き添うように歩くリリィもかなり心配そうにしており、普段感情が薄い彼女もどうしようという顔でおどおどしているのはかなり珍しい気がする。



「ちょ……みんな、まってよぉ……」



 そんなに早く歩いてはいないが、今のアリスにとってはかなり早く歩いてるように感じるのかもしれない。先頭を歩いていたアッシュ達は一度止まり、心配そうにアッシュは振り向いて、駆け寄りながらアリスの様子を確認する。



「アリス大丈夫?」

「むり……」

「まぁそうだよねぇ」



 アリスの背中をさすりながら彼女の顔元に炎を灯しながら覗き込みと、顔色が悪い気がする。いつもより血色が悪いからわかりやすい。それだけ相当辛いのだろう。

 炎をみて、アリスはぼやく。



「アンタ……、ここでなんでそんな平気な顔で(それ)を使えてんの……?」

「え、僕? あぁ、僕の場合も君と同じように先に発動させてから入ってきたんだよ。もし森の中が暗いと危ないからね」



 実際森の中はかなり薄暗く、今が昼なのかどうかもわからないくらいだ。高々と伸びている木々に囲まれているが、唯一の道しるべになる、長く続く林道のみ。(あか)りすらないこの道にアッシュの炎があることでどうにか進めている。


 始めはアッシュもアリスも両方とも能力を使ってても平気そうな顔をしていたので気付かなかったが、だんだんアリスの様子が悪くなって、現在に至る。

 同じタイミングしてるはずなのにえらい違うのでアリスは疑問だったが、近くまでアッシュが来たからわかった。アッシュも少し様子がおかしい。そんなに熱くないのに汗が滴り、顔色が悪く、疲れてるようだった。



「……アンタも、思ったより、きつそうになってる、じゃない」

「君ほどではないよ。気にしないで」



 笑って強がるが、正直、炎を出しているのはかなりきつい。頭痛と吐き気、それに熱い……。ある意味では酷い風邪の症状をもったまま走る回っている感覚だ。

 滴る汗をぬぐい、エドワード達の方を向きながらアリスを支える。



「アリス、先進めそう?」

「うぅ……。無理、もう、歩けない……」

「あっ!ちょっと!アリス!」



 崩れ落ちそうなアリスを支える。どうやら気を失ってるようだ。

 倒れかけてるアリスを支えてると、エドワードが心配そうに駆け寄ってくる。



「アッシュ、アリスの様子は?」

「んー、どうやら容量超過(キャパオーバー)したっぽいね。ユキ、申し訳ないけどアリスを背負うことはできるかな?」

「あ、は、はい!できまーー」

「待て、アッシュ」

「ん?」



 珍しくリリィがアッシュの服を掴みながら話かけてきた。もう片方の手はアリスの服を掴んでいた。

 任されかけていたユキはおぶっていいのかどうなのか中途半端な距離で止まる。



「アリスは私が背負う。野郎どもに任せたくない」

「や、野郎って……。君、おぶっていくの大丈夫そう?」

「こう見えて、私、力持ちだから大丈夫」



 力こぶを作るようにリリィは見せてくるが、一般的な女性の腕。どう見てもできないんじゃないかと思うがそこは獣人。本当に力強いんだよね。


 リリィは返事を聞く前にアリスをおんぶしてそのまま歩き出す。



「おい、先を急ぐのだろう? さっさと前を歩け。ランプ担当」

「はいはい」



 微苦笑交じりにアッシュは再度先頭まで戻り、歩みを進める。


 となりを歩くエドワードと歩幅を合わせながら歩くが、時間の感覚がない分相当精神的に来る道だ。

 たまにアッシュは懐中時計を確認しながら歩くのは時間の間隔が狂わないようにするためだろう。


 そこから数時間歩き、アッシュが声をかける。



「ちょうど外は夕方ぐらいの時間帯だね。夜になると危ないから何処か野宿できるところ探そうか」

「そうだな。ノア、何処か野宿できそうな安全な場所はありそうか?」

「おっけー、ちょっと待ってなぁ」



 エドワードの指示でノアは近くで枝を拾い、その場にしゃがむ。拾った枝を地面に叩き、地べたに耳を付ける。



「…………お、洞窟ぽいのがありそう」

「安全そうか?」

「わかんね。ちょっと距離あったし」

「そうか。一旦その洞窟を目指そう。ダメそうなら別のところだな」

「りょーかい」



 ノアの案内で洞窟へ

 幸い、中は深く、行き止まりもあり、魔物や変なものはいなかった。到着してすぐに雨も降ったため、ギリギリだった。


 到着してすぐアッシュは土魔法で入口を閉じた後、ズルズルと崩れ落ちる。

 慌ててエドワードが駆け寄った。



「お、おい!ここで魔法はかなり体力も持っていかれるだろうが!」

「危ないよりはいいと思ってさぁ……。ちょっと疲れたから先に休むよ……。なんかあったら声掛けて……」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫〜……」



 ヨタヨタしながら岩と岩のちょうど良い隙間があったのか、そこにすっぽりと入り、膝を抱えて座った。


 あれは絶対大丈夫じゃない……。



「……ユキ、早めにテントたてれるか?」

「そう言われると思って、ノアとすぐ作りましたよ。アリスたちのテントも」

「ちょっとあいつ寝かせてくる。ご飯の献立はこれだ。本当は私とアッシュが担当なんだがすまんな」

「いえ、いいですよ。僕とノアは魔法使ってないのでそこまでは疲れてませんし」

「私も使ってないけどな……。はぁ……、やっぱ、ルーファス達にランプ借りておけばよかった」



 ため息をつきながらアッシュの元へ。

 肩をトントンと叩くと、ゆっくり顔を上げる。



「大丈夫か?」

「……うん、岩が、ひんやりしてきもちい……」

「いや、そこで寝るなよ。本当に」

「……お願いあるんだけど、明日の分の魔力回復しときたいけど、1回でも炎切ったら多分使えないと思うんだ……」



 そう言ってアッシュは頭を伏せたまま、手のひらから炎を灯す。



「これ、一旦は弱い魔力でも炎が消えないようにしたから……、定期的に魔力、注いで欲しい……」

「わ、わかった」



 そう言って蒼い炎を受け取る。受け取った炎をじーっとみて少しだけ魔力を注いでみると、蒼い炎から紫色に変わった。


 一応、身体の方には負担がないようだ。



「色が変わるのか」

「…………」

「アッシュ?」



 あ、寝てる。ここで寝るなって言ったのに。


 ため息つきながら、一旦ユキたちの所へ戻る。だがふたりはちょっと悩みながら渡した献立を見ていた。



「どうした?」

「あ、いえ、よくよく考えたら食事の準備に必要なもの、全部魔法道具なので……」

「魔力注いでも使えねぇ」

「あ〜……。そうだった……」

「せめて火が使えればいいんですけど……」

「火?」



 持っていた炎に目をやる。空いてる手で炎に近づけるがほんとのり温かいくらい。これだとさすがに料理には使えないだろうし……


 そう思ってると炎が少し勢いをつけて、熱くなる。


 あ、使えそう。



「おい、ユキ。アッシュから預かってる(これ)使えそうだぞ」

「それ使い方あってんのか?」

「……まぁ、違う気はするが、どちらにしろ消えないように微弱な魔力を注いで欲しいって言われてたからな。思った通りに温度調節できるようだから結構便利だぞ」

「へー、これ俺も出来んの?」

「やってみるか?」



 炎をノアに渡すと、今度は緑色に変わる。

 本人は楽しいのか炎を大きくしたり小さくしたりと遊んでいたのでさすがに”遊ばないで作れ”と後ろからチョップをした。


 火が使えたため、お湯を沸かし、携帯食として買っていた素麺を茹でたもので夕食を終えた。


 アッシュとアリスに関してはさすがに体調の問題で食べられなかった。

 ユキにアッシュの移動を頼み、どうにかテント内で休んでもらったところで今日は全員就寝する。



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