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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十二章 雨の里
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雨の里:協力6

6月13日はお休みです

 一方、ユキの侵入しているマーダー帝国のキャンプ地。


 昨夜の片付けの最中に聞いていた行方不明者の件もジャンヌに届いたようで、早朝急遽集められたようで、こっそりとユキも隊列の中に紛れ込む。



一夜(いちや)で何があったか聞きたいレベルなことが起こってるのは何故ですかね……)



 と、頭を抱えるユキを吹っ飛ばす勢いで、団長であるジャンヌの号令が始まる。



「皆の者、おはよう!!」


「 「 「 おはようございますッ!! ジャンヌ隊長ッ!! 」 」 」



 まさかこんな朝礼に参加することになるとは思わなかった。それに加えてものすごく気になるもの、というか、人が映っているものがそこにあった。頭を抱えてるのはそれが一番の原因だ。


 見えずらい状態のままではあるけど、あの、見覚えのある金色……、いやまさか、ですよね。


 少しばかりの現実逃避をしていると、その映し出されている映像の前にジャンヌは立っており、力強く話を続ける。



「皆の知っての通り、昨夜、また同胞が行方不明となっている。そして、別の報告によると、以前から報告のある雨の里という集落が原因との事だ」


(え、雨の里? 特にそういう事はアッシュから報告はなかったですけど……)



 ユキは疑問に思いながらも聞いていると、ジャンヌは映像の前から退いて、画像のようなものを隊全体にハッキリと見えるように展開する。


 ようやく見えた映像のその姿にユキはさらにギョッとしてしまう。



(や、やっぱりアッシュ?! 姿、見られてるじゃないですか!! それに、あの手に持ってるの、何でしょうか?)



 平常心を装い、真顔でいたが思わず呆れてため息を吐いていると、ジャンヌの隣にいた副隊長と呼ばれていた男が一歩前に出る。



「偵察隊の報告によると、深夜に黒い塊のようなものが里から現れ、そして、外壁にこのような人物が現れたようだ。この黒い塊は、他の兵からも報告にあった失踪の元凶、それが里から現れたという事は、宣戦布告の可能性も高いとみている」

「詳細をさらに確認でき次第、里へ向かう。が、いつも言っているが勝手に先行して行動を先走る事は禁じる。(めい)が下されるまで、皇帝の(めい)の捜索中の件は私の判断で一旦中断とする、いいなッ?!」


「 「 「 御意ッ!! 」 」 」


「では、総員、わかれ!!!!」



 ……これはマズイかも知れない。まだすぐに攻撃的に攻めてくる訳では無いようだけども、もし攻めてくるとなると、アリスたちが危うい。


 あとは、探索というのは皇帝の命令とは思わなかった。何を探しているか調べるように言われていたけど、悠長に調べられる時間はあるのか……。


 悩みながら解散に紛れていると、後ろから誰かが走ってきて肩を掴まれる。



「おい、ユキ」

「うわっ?! え、えぇと、た、隊長?!」

「新兵はこの後、鍛錬の時間だ。どこに行く気だ?」

「……あぁ、そうでしたね。お手洗いに行ってから向かおうと思っておりましたので、お伝えせずに向かおうとして失礼致しました」

「そうか。だが、一言伝えるようにしろ」

「えぇ、かしこまりました」



 軽く頭を下げるとジャンヌは新兵たちがいる方へと歩いていく。

 苦し紛れな誤魔化しが通じたのだろうか、一瞬バレたかと焦った。というか、アッシュが姿を見られた話の段階でものすごく焦った。


 動悸で胸がドキドキしてしまったが、まだどうにか平常心を保つようにしよう。


 お手洗いと言ってしまったし、森に入って少し間を空けてから戻ると、既に何人もの人が集まっていた。駆け足で戻ると、隊長と副隊長が隊の前で構えている。



「さて、揃ったな。本日は実戦をふまえた鍛錬をする。半分にわかれ、片方は副隊長、もう片方は私と戦うぞ」

「 「 「 御意!! 」 」 」



 まさか鍛錬するとは思わなかったが、マーダー帝国の戦い方を見るいい機会だが、少し後ろに下がりながら鍛錬に加わる。


 ユキの加わった隊は隊長との対戦。


 あまり手の内は見せたくは無いけども中途半端にすると言われそうだ。



「総員、かかってこい!!」



 そう言われ、兵士たちは剣を抜き、一斉に向かっていく。


 向かってくる兵に向かったジャンヌは剣を顕現せず、素手で攻撃をいなしていく。新兵とはいえ、剣を持った相手に素手で相手するなんて、何処かの誰かさんたちみたいだ。



「貴様、踏み込みが甘いぞ!! それでは簡単に反撃を喰らうぞ!!」

「どわぁっ?!」

「貴様は大振り過ぎる!! 単調な攻撃ほど、躱されしまうぞ!!」

「うぐぅっ?!」

「貴様ら腑抜けばかりかッ!!!! 死ぬ気でかかってこんかッ!!!!」

「 「 「 ぎょ、御意!! 」 」 」


(割とスパルタですね。けど、グレンの時ほどではないです)



 容赦なく薙ぎ倒していく隊長は凄い勢いでこちらに迫ってくる。それに対してユキはサッと躱して、剣をいなしていく。彼の動きに対して今度は追撃しようと魔法を放ってきたが、それも難なく躱す。


 他の兵は当たってしまったり、慌てて逃げているが、これくらいの速さならおそらく隊長も手加減をしてくれている。むしろなんで躱ないのだろうかと思っていると、ユキの動きにジャンヌはニヤリと嬉しそうに笑う。



「ほぉ、貴様、いい動きではないか」

「恐れ入ります。ですが、やはり隊長程ではございません」

「フッ 何だ、謙虚な物言いだな。よし、ならば良かろう。おい、ジーク、ジークフリート!!!!」

「ハッ いかが致しましたか? 隊長」



 動きを止めたジャンヌは副隊長であるジークフリートと呼ばれる男を呼ぶと、ジャンヌは楽しそうにユキの方を見る。



「ジーク、今回の新兵でユキはそこそこやれる。他の兵の手本になるだろうから、貴様とユキとで模擬戦をする」

「え、も、模擬戦をですか?」

「あぁ、貴様のあの身のこなし、本気ではないだろ? もし、周りの動きで思うように動けていないのなら、ジークとの模擬戦をして、貴様の実力と隊の見本となってくれ。さ、前に出ろ」

「は、はぁ……」



 普通そんな新兵にそこまでする事があるかと思ってはいたが、言われた通りにした方が良いのだろうか。目立ちたくないし、そもそもこの兵士という訳でもないのに……。


 苦笑いを隠せずにいると、やる気満々なのか、ジークフリートは大剣を取り出す。


 待っているならさすがに断るような雰囲気でも無くなったため、渋々、ユキも前に出ようとする。


 その時に頑張れよと元気づけるようにジャンヌはユキの肩に手を置くと、ボソリと彼のみに聞こえる声で呟く。



「いいか、殺す気でやれ」

「えっ?」



 どういう意味か、振り向いたがジャンヌは答えず、手をユキから離す。


 疑問に思いながらも指示された位置にたち、剣を構える。



(あまり長引かせず、さっさと降参してしまいましょう)


「では、いいな? ……始め!!」

「ッ?!」



 ジャンヌの合図と共にジークフリートはドシンッと地面を叩くように一歩踏み出す。踏み出したと同時に気付けば目の前まで距離を詰められていた。


 容赦なく振り降ろされた大剣を間一髪でユキは躱す。



(ッ!! この男、今、殺す気で……?!)


「ほほぉ、躱すか」



 不敵に笑うジークフリートは振り降ろした大剣を持ち直し、そのまま避けたユキの方へと横に振るう。それも、どうにか躱したが、息をつく暇もなく、立て続けに攻撃をしてくる。


 もはや模擬戦というレベルでは無い。本気の殺しの戦闘。この国の兵はそれが当たり前なのだろうか。


 加減するとか、簡単に降参するというのも難しすぎる。一撃でも喰らえば、死ぬレベルの攻撃だ。



「ほらどうしたッ?! 避けてばかりでは模擬戦にならんぞ!!!!」

「くっ!!」

「クッハッハッハッハッハッ!! ”雷魔法:雷の槍(サンダースピア)!!”」



 狂気を含んだ笑い声を上げながら雷魔法を放つ。無数の雷の刃を躱しきれない。



「”魔障壁:(ひょう)”!!」



 ユキを囲むように氷のドームが現れる。ズガガガッと音を立てて氷の障壁を貫通して雷の槍が突き刺さっていく。


 魔法を使わされた。これ以上の戦闘は危うい。


 どうする? 氷で今、姿が見えなくなっている間にその場を離れるか?

 いや、ここまで来ると身の危険。いっその事、殺して、この場を去る?


 顕現した銃に魔力を込めようとしたが、踏みとどまる。


 いや、ダメだ。もしこの場で反撃してしまえば、それこそ、今、雨の里が宣戦布告と疑われているのに、自分の判断でノアやアリスたちを危険に晒す訳には行かない。反撃しないで全て躱すか防ぐかどうにかしてこの場を凌ぐ。


 銃をしまい、氷の壁を自分の前に連続して出す。少しでも時間を稼ぐためにと出していくが、いくつもの氷の壁は破壊され、目の前に残った最後の氷の障壁にピシッと音を立ててヒビが入る。


 力任せに振り降ろした大剣により完全に砕けちり、その勢いのまま、ユキに向けて剣が振り降ろされた。



(マズイ、躱せな――!!)



 躱しきれず、振り下ろされた大剣はユキに当たるかと思われたが、大剣と彼の間に剣が入り込み、弾く。



「そこまでだ」

「ッ! ジャンヌ隊長、まだ終わっておりやせんが……」

「これ以上はコイツが真っ二つだ。それに、模擬戦と言っただろ」

「……そうでしたな」



 不機嫌そうにジークフリートは剣をしまい、去っていく。


 歩き去る彼を見みた後、ジャンヌはザワザワとする新兵たちに向けて、ダンッと地面を持っていた剣で叩きながら吠える。



「皆の者、今の動きが出来るように精進するように!! 本日の鍛錬は終了だ!! わかれ!!」


「 「 「 御意ッ!! 」 」 」



 ジャンヌの号令にユキ以外の新兵たちはそれぞれ去っていく。


 尻もちを着くように倒れていたユキは、”はぁ”とため息を吐いて、立ち上がろうとすると、ジャンヌは彼の前まで来ると手を伸ばす。



「いい動きだったぞ、ユキ」

「は、ははは……、全く反撃は、出来ませんでしたけどね」

「ジークフリートの攻撃をあそこまで躱しきれたなら十分(じゅうぶん)だ。次の司令があるまで休むといい、と、言いたいのだが……」

「?」



 ジャンヌの手を借りて立ち上がったユキに彼女はそのまま腕を掴み、引っ張ていく。



「少し面を貸せ」



 本当は早々にこの場を去りたかったが、ジャンヌの指示に従い、彼女の後をついて行く。

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