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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十二章 雨の里

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雨の里:協力2

 里の外にて、ノアとユキ、そしてアヴェルスは木々を飛び越えながら、足跡や気配を感じ取られないように、ノアの能力で気配を消していた。


 木々を飛び越えている時に音が鳴るはずの足音はなかった。


 ノアの能力――気配遮断。ノアの周囲5メートル以内の人物の気配を無くし、物音すら立てることなく、移動することが可能になる。が、能力を発動している間はノア自身は多少は動けなくも無いが動き過ぎると能力が続かない。

 そのため、ユキがノアをおんぶした状態だ。これなら能力を使ってても問題無く力を行使できる。



「……守護者っつーてのはレインのババァから聞いてたけど、ガチでやべぇ力だな」



 アヴェルスは飛び越えた木の上で足で木を爪先で蹴るが音がしない。ユキの背中にしがみついているノアはアヴェルスの言葉に首を振る。



「んなこたぁねぇよ。俺の能力はそんくらいだからよ。アッシュみたいな炎とかエドワードの予知夢の方が役立ちそうだけど、コレに関しては本当に隠密とかそう言うのになっちまうからな」

「でもアリスたちと会うまで僕らが無事だったのはノアの能力のおかげですからね」

「まぁそうだけどよ。俺からすると、もうちっと使える力だったら良かったけど」



 ため息を吐くノアにクスクスとユキは笑う。


 ただ、彼は自分の能力に自信が無いだけだと思う。気配が完全に消せるのはかなり強い。あとは移動してる時に能力が途切れないようにすればかなり強いはずだ。今はその能力の向上のため、アッシュが色々と訓練してくれているそうだ。


 なんて話をしながらも、さらに森の奥へ進んでいると、アヴェルスがユキを止める。



「待て、そっから先は崖になるから危ねぇ。少し迂回すんぞ」

「おや、本当ですか。ありがとうございます」

「いいって。……あの野郎があんなこと言わなけりゃあ、こんな面倒なこと絶対やんねぇのに」



 ボソッと嫌味を言った気がするが、もう気にするだけ無駄だろう。ここまで来る間にアッシュに何を言われたのか聞こうとしたが、真っ青な顔をして言わない。


 あの5分で何したのか気になるけども……。


 もう少し先程に行った所でアヴェルスが止まったため、ユキも止まる。



「この辺りだ。マーダー兵を見たのは」

「なるほど。このあたりですね」



 辺りを見渡しても、今のところ人の姿は見当たらない。雨の中という事もあり音でも判別は難しいだろう。


 背中に乗っていたノアも周りを見るも人の姿は見当たらない。



「どうする? ここに来るまで待機しとくか?」

「……いいえ、此処に来るかどうかも怪しいです。探し出した方がいいかと思います」

「とはいえ、この辺りでしか俺らは見てねぇよ」

「大丈夫です。見つける方法は、あります」



 そう言うユキは前髪をかきあげる。かきあげられた事で隠れていたユキの瞳が(あら)わになった。彼の瞳孔は猫のような瞳、そして、悪魔特有の深紅の瞳だ。彼の目を見てアヴェルスは驚きと、恐怖に変わった。



「お、おまっ?! あ、悪魔?!」



 アヴェルスの言葉を無視してユキはジッと目を辺りを凝視する。


 正直、悪魔だと騒がれるのは予想していたし、嫌だが、アリスたちのためだ。正体がバレたくないと言ってはいられない。今まで役に立てなかった分、返したい。


 だが、アヴェルスはその間に先程まで静かだったが、悪魔と知った彼はユキたちの方まで来る。



「お、お前、悪魔だったのかよ?! それはあの神子も知って――むぐっ?!」



 近寄って騒ぐアヴェルスの口を塞ぐように鷲掴みをする。


 ノアの能力で隠密で動いているのに、ひっそり動くという言葉を知らないのだろうか。



「はぁ……、アリスたちが知っていたらなんですか?」

「あぁ?!」



 睨むように言うアヴェルスにユキは冷静に答える。



「アリスたちは僕が悪魔だと知っている上で、仲間として行動してくれてます。それこそ、あなたで云う、よそ者に関係がありますか? あと僕は悪魔なのは間違いないですが、あなたに何かする気もありません。隠密行動しているのに、うるさく吠えるのはやめてください」

「ッ!! ……チッ、こんな状況じゃねぇなら、悪魔なんてもんに関わる気なんてなかったのによ」

「おい」



 舌打ちをしたアヴェルスにノアはユキの背中から降りて、ギロッと睨みつけた。



「んだよ、ユキが悪魔だったらなんかテメェらに都合でも悪ぃのか? 別にユキがテメェらになんかしてる訳じゃねぇのに、悪魔だからってだけで、そこら辺の連中と一緒にすんなよ」

「……チッ」



 ノアに強く言われていたが、アヴェルスは不服そうにそっぽを向く。別に何がユキがした訳でもないが悪魔ってだけで、魔族ってだけで敵対心を持つ人は多い。


 どの国でもどの場所でも、女神信仰が根強いからだろうけど。


 庇ってくれたノアにユキは少し嬉しそうに微笑みながらも、本来自分の正体を明かしてでもやろうとした事を続ける。


 森を全体的に見るように意識を集中させる。


 自分が認識出来る範囲で幾つかの魂の気配を感じた。


 所々にあるのは恐らく動物の魂。これじゃない。これも違う。人の魂は、もっと分かりやすい。何よりも、人を殺してきた人たちの魂だ。


 人を殺せば、殺すほど、人間の魂は濁る。まるで罪が魂を穢すように濁る。それは酷く甘美なもの。昔、何度も食べた事があるからこそ、分かる。


 場所を確認して、目を閉じると前髪を下ろす。目を擦ると、視界が違和感があるのか、目をパチパチと瞬きをさせている。


 ……やっぱり、魂を多く見ようとすると酷く疲れる。



「お二人とも、それらしいのを見つけました。たくさんの人らしき魂が此処から600メートルってとこでしょうか。この先に町とか何も無いですよね?」

「……ねぇよ。あとは洞窟があるくらいだ」

「そうですか。では、向かいましょう。そこにいるかと思いますので」



 ユキの案内と危険な場所を避けながら目的地へとたどり着く。

 そこには鎧を着た兵士がおよそ50か60程だろうか。沢山の兵士が野営をして滞在している。ちょうど夕ご飯のタイミングだったのか、食事をしている。



「んで、どう探るんだ? まさか魂を喰うとかか?」



 アヴェルスに嫌味を含めて言われた気はするが、ユキは無視して何かを探すようにキョロキョロと見る。



「そうですね。魂を喰う事が出来れば確かに分かりますけど、一般兵の魂を食べたところで大した情報は手に入りませんし、ノアから怒られるので致しません」

「へぇ、何だ、悪魔の契約でもしてんのかよ?」

「してませんよ。ノアにそんな事したら魂を貰わないといけなかったりしますからね。さすがに致しません」

「うげ、やっぱ魂とかの契約になんのかよ」

「えぇ、まぁ、内容にもよりますけどね。……おや、どうやらちょうどいいのがいますね。ノア、ちょっとチワワ君と待っててください」

「おん」



 何かを見つけたユキはその方向へと向かう。木の上で座るノアはアヴェルスと一緒に上からその様子を見ていた。


 どうやら隊から外れた男が一人茂みに入っていったのが見える。用を足しに来たのかもしれないが、ユキからするといい獲物だったのかもしれない。


 用を足し終えた男は隊に戻ろうとした所を――



「こんにちは、少々、失礼しますね」

「ッ?!」



 笑顔で上から降りてきたユキは声をあげさせる前に意識を刈り取った。崩れ落ちる兵を肩に担いで、ノアの方へ戻る。


 気を失っている兵士から鎧を剥ぎ取り、ぐるぐる巻にし、洗濯を干すように、木の上に放置した。剥ぎ取った鎧はユキが着る。


 パチッと兜の留め具を止めるとノアとアヴェルスの方を見る。



「こんな感じでしょうか。では、僕が直接乗り込みます。クロを通してアッシュが情報をまとめたりしてくれるでしょうし、何かあればノアとチワワ君はすぐ里に戻ってくださいね」

「おー、りょーかい、りょーかい。ユキも気をつけろよ」

「えぇ、ありがとうございます。では、行ってまいります」



 そう言い残してユキは下へと降りていく。


 降りていったユキを見失わないように彼を目で追う。見えるか見えないかのところでノアは能力が切れない程度に動き始めようとする。

 だが、そんなノアの腕をアヴェルスは掴んできたため、何かと思い、ノアは振り向く。



「んだよ?」

「な、なぁ、本当にあの悪魔は大丈夫なんだよな?」

「あぁ? そりゃあどっちの意味で聞いてんだ? 心配か? それとも悪魔の話?」

「りょ、両方だよ! あの金髪もおかしいし、悪魔と一緒に行動してるお前らの気が知れねぇ! なんで悪魔とつるんでんだ?! アイツは女神の使徒、神子なんだろ?!」



 まだそんな事を言ってるのかと呆れた顔をするノアは、掴まれた腕を振りほどく。


 気が知れねぇのは、こっちが言いてぇよ。なんなんだよ、マジで。


 イラつき始めてきたノアはガジガジと頭をかきながら仲間を侮辱してくる目の前の男を下から睨みつける。



「つーかよ、魔族は俺らと同じ人族だ。種族が違ぇだけだろ。さっきも言ったけどよ、悪魔だからって、ユキの何がわかんだ?」

「昔から悪魔はろくな事をしねぇよ! それに、魔族は人を騙したり、魂を喰うだろ?! どう考えても同じ人じゃねぇ!! ありゃあ人の皮を被ったバケモンだろ?!」



 化け物という言葉にノアは目を見開き、腰につけていた短剣を抜く。目にも止まらない速さで今度は軽くジャンプしたかと思えば、そのまま足をアヴェルスの首にひっかけて、相手のバランスを崩す。

 突然のノアからの奇襲に驚いたアヴェルスは動揺していたのか受け身をとるので精一杯だった。器用にノアは木から落ちないように木の上に叩きつけ、後ろから彼の服を掴みながら首を絞め、短剣を突きつける。



「テメェ、さっきからなんなんだよ……? 次、俺らの仲間に対してバケモンって呼んだり、侮辱してみろよ。マジで殺すぞ」


(な、なんだよ、コイツ……?! ()()は悪魔なのに、仲間……?! 頭やっぱおかしいっての……!!)



 抵抗出来ない形で身体を固定されて振りほどけない。ノアはギリギリと締め上げているが、しばらくして手を放す。

 首を閉めていた圧が無くなり、足りなくなってた酸素を肺に取り込もうと大きく息を吸い、咳き込む。



「ゲホッ!! ゲホッゴホッ!!」

「やっぱ、お前、邪魔だわ。俺とユキだけでいい。アッシュに言われてたけど、崖の場所も先に俺で確認しておけばいいしな」

「んだと……?!」

「……言っとくけど、俺はアイツらの中で一番クソ最弱なんだよ。そんな俺に首絞められて蹲るんなら戦力にもなにもねぇよ。つーか、お前、やりたくねぇんだろ? 俺からアッシュに言っとくから、協力する気もねぇならさっさと帰れ。クソ邪魔」



 イラついた顔でノアはユキの跡を追うように、その場から離れていく。ノアの小さな背中の姿が見えなくなり、残されたアヴェルスは締められた首に触れながら舌打ちをする。



「んだよ……ッ 何も知らねぇよそ者のくせに……ッ」




 そう嘆く彼の後ろから、黒い影がひとつ、落ちてきた。だが、彼は気づく間もなく、意識が、暗転した。

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