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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十一章 侍の国
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侍の国:私の考え方2

 アリスの神子の(めい)にアッシュの瞳が瑠璃色から片目だけだが、スファレライトの色へと変わった。瞳の色が変わった事にアリスは喜び、”変わった!”と声を上げると、その言葉に反応したグレンは顔を上げ、ノアも彼の顔を見る。


 そして、驚いた顔をアッシュはしたがすぐに、ふにゃっと笑う。握った手を引き寄せて、彼女の髪に触れる。



「神子の(めい)かい? そんなの使わなくても、君が望むなら連れて行ってあげるよ」

「え、ホント?! やってやって!」



 アリスは元の目的である神子の(めい)が他の守護者に効くかどうかの実験を忘れて、先程の命令をやって欲しいと言わんばかりに目を輝かせ、両手を広げて待機する。


 ワクワクとした彼女の様子に、アッシュは軽々と抱え上げた。外へ出ようとする彼をグレンが止めに入る。



「おい、ちょっと待て。お前、神子の命(それ)、かかってるのか?」

「? ん〜、半分かかってて、半分はそうじゃない感じかな。元々、僕は彼女のお願いは聞くつもりだったから、あまり違和感無いけどね」

「……お前じゃ、あまり参考にならない事はよくわかった」



 いつも通りのアッシュだと思うと、アリスからの神子の(めい)は彼には意味がなさそうな気がしてしまう。


 グレンが呆れていると、待ちきれないのか、アリスはバタバタと催促する。



「ねぇねぇ、もういいじゃん〜! 一応、今はかかったのわかったんだからさ! ほらほら早く、ピューンと飛んでよ、ピューンと!」

「はいはい、あと、飛んでる時は危ないから放したらダメだよ」

「はーい」



 アッシュは部屋を出て、中庭まで出ていくと、パチンッと指を鳴らし、魔法を発動させ、グッと足に力を入れて、地面を強く蹴り飛ばし、高く高く空へと飛んでいく。アリスは急な風圧と衝撃に思わず目をギュッと瞑ってしまう。


 そして、およそ高さ的に5000メートル程だろうか。アッシュはアリスを抱えたまま、再びパチンッと指を鳴らし、その高さに留まる。



「アリス、もう目を開けていいよ」

「んん……ッ!! わぁッ!! すっごい!!」



 彼女のルビーの瞳が太陽の光に反射してキラキラとし、その視界には白く光る雲、透き通るような青い空がいっぱい広がる。下を見ると先程までいた国が小さく見えていた。



「すごいすごい!! こんな高くまで飛べるの?! てか、落ちてない!! 空にずっといるみたいじゃない!!」

「あははっ 浮遊魔法でキープしてるからね。これくらいは普通だよ」

「ねぇねぇ、まだ高く上がれるの?」

「んー、まだ高くは上がれるけど、僕はいいけど、君、酸欠になっちゃうからねぇ。これ以上は難しいかなぁ」

「え、酸欠なるの?」

「うん、そうだよ。それに危ないし、結界じゃあ空気はどうにもなんないからね」

「ふーん」



 酸欠になるのは嫌だけど、上を見上げるとまだまだ空は続いている。こんなに高く上がってもまだ上があるのだと感心してしまっていた。


 心地よい程度の風に、温かな陽の光、そして辺りを見渡しても誰もいないこの景色はもう少し居たい気持ちになってしまう。


 彼女はアッシュが支えてくれている事をいい事に、彼から手を放して両手を天へと伸ばす。急に手を放したアリスに驚きながらも彼は落ちないように足を使い、持ち直す。



「おっとと! アリス、急に手を放したら危ないよ!」

「えへへ〜、アッシュが落とさないのわかってるから大丈夫〜」

「んん〜、そりゃあ、まぁ落とす事は無いけどさぁ」



 困った顔をするアッシュに、アリスはキャッキャッとはしゃいでいたが、突然、”はぁ”、とため息を吐く。そんな彼女の顔へアッシュは自身の顔を近づける。急に顔を近付けられてアリスはドキッとする。



「な、何よ? アッシュ」

「まだ、朝の事、気にしてるの?」

「……なんで、そう思ったの?」

「ん〜、いつもの君なら今の状況をもっと楽しんだり、はしゃいでたりするからさ。気のせいならいいよ。君も、ため息つくことはあるんだろうからさ」



 アッシュにそう言われてなにか言いたそうな顔をしたが、アリスはニカッと笑う。



「うぅん、大丈夫! ありがと!」

「……そっか」



 さっき彼女からちょっと落ち込んでるんじゃないかと思ったけど気にし過ぎだったのかな。ここ最近、よくグレンから過保護過ぎると言われてるし、あまり気にしすぎるのも良くないかも知れない。


 ふと、アリスが再び上を見ると何かを見つけたのか、アッシュの肩をトントンと叩く。



「ねぇねぇ、アッシュ、アレは何かしら?」

「アレ?」

「ほら、あそこ。雲と雲の間に何かあるみたいなんだけど」



 アリスが指をさす先を同じ視線になるように顔を寄せる。ジッと雲を見ていると、確かに雲と雲の間に何かが見えた。


 ……あれは建物……?


 なんであんな空にあるんだろうか。



「建物、よね?」

「建物だね。それも結構な高さにあるみたいだけど……。なんだろ、もしかしたら神様の住んでる建物かもよ?」

「え〜、どうかしら。今度ルーファスに聞いてみるわ」

「ルーファスに? どうして?」

「ちょっと話があるのよ。その手紙も送ったし、後は返事待ちねぇ」



 興味深そうに建物の方を見ながら呟くアリスと同じように建物を見ていると、何か、建物の方からキラッと光るものがこちらに落ちてくるのが見える。



「アッシュアッシュ! アレ! キャッチキャッチ!」

「え、えぇ?! アレ掴むの?!」

「こっちに落ちてくるんだから取ってよ!」



 アリスにそう急かされ、慌ててアッシュはアリスをしっかり片腕で支えながら、ソレに手を伸ばす。慌てていたというのと落下してきた何かの勢いで、クルンッと一回転しつつ、それを掴み取る。



「おっとと」



 キャッチしたものを見ると、どうやら金色の装飾に赤い宝石のはめ込まれたネックレス。かなり高価なものなのは間違いないが……。



「なになに〜? 空の落し物、って感じかしら」

「見た目が結構綺麗だもんね。あの建物から……って考えた方がいいかも」

「……とはいえ、さすがに今、みんなを置いて行くのもどうかしら。ルーファスからも聞いておきたいし、それまで預かっておきましょ」

「それもそうだね。アリスが持っとくかい?」

「無くすからヤーダ」

「あはは、アイテムボックスに入れてたら無くさないと思うけど……」



 苦笑いして、アッシュはネックレスをアイテムボックスへとしまう。再び先程の建物へと視線を移したが、忽然と姿が無くなってしまっていた。雲の中へと消えたのか、それとも転移魔法か何かで何処かへと行ったのか……。


 視界から消えた建物にアッシュとアリスは互いに目を合わせる。



「……戻ろっか?」

「そうね。戻りましょ」



 そうアリスが返事をすると、アッシュは再び指をパチンッと鳴らす。浮遊魔法が解除されて、魔法による支えの失った二人は地上へと落ちていく。



 ◇



 上空に上がっていたアッシュとアリスが降り立つと、ノアとユキがようやく戻ってきたと言わんばかりに駆け寄り、降りてきた二人に彼らは笑顔で軽く手をヒラヒラと振る。



「二人ともおかえりなさいです」

「うん、ただいま。……あれ、グレンは?」



 先程までユキたちと一緒にいたはずのグレンの姿がなかった。キョロキョロと見るがやはりいない。


 グレンを探しているとノアと一緒にいたユキがアッシュたちに声をかける。



「先程、アティが呼びに来たんですよ。羅生が来られたそうで」

「そうなんだ。将軍たちと後片付け、もう終わったんだね」

「さぁ、どうでしょう。お国の事はさすがに僕もわからないですから」

「……それもそうだね、僕たちが気にしたところで彼らの問題だし」

「まぁ、あとはアティもくっついてっててくらいじゃね」

「え、アティも一緒に行ったの?」

「はい」



 何故、アティ(あの子)は行ったんだろうかと思ったが、グレンが理由もなく連れいてくはずもない。もしかしたら何か考えがあっての事かも知れないし。


 そう考えて、一旦、思考するのを止めた。


 どちらにしろ、これ以上、この国事情に自分が関与する事は無い。アリスも特に言わなければ終わる話だ。


 そう結論づけていた頃、グレンとアティは、将軍や羅生、伊東を含めた奉行の人たちと大広間にて話をしていた。

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