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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十一章 侍の国

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侍の国:後片付け1

間に合わなかったです。泣きそうです。夜中のゲームはダメですね。

まぁ、やるんですけど。楽しみなので

 転移の魔法で三条屋敷へ戻るとグレンは伊東を見つけて、そのまま連行するような形で何処かへと行ってしまった。連れていかれる伊東は少しホッとしたような様子だったから怖い目には合うわけではないと思うけども、ひと段落終えたのに彼はどうも忙しそうだ。


 アティは眠気に襲われながらも、心配そうに父であるアッシュを見上げながら問う。



「お父さん、おじ様はどこ行ったんですかね?」

「さぁ、何処だろ。でも、後片付けが終わったら帰ってくると思うよ」



 彼が伊東を連れて何処に行ったか不明だけど、しばらくしたら戻ってくるだろう。三条屋敷に知らせて欲しいとも言っていたから。


 それにしても……。



「ふぁ〜……、さすがに疲れたね。魔力もスッカラカンだし、アティが無事だって分かったら気が抜けちゃったや」



 あくびをするアッシュは畳に座ると、眠そうなアティを自分の足の上に乗せて、抱きかかえる。娘の頭を撫でながら、ウトウトし始めた。


 魔力を使い過ぎると、どうしても眠気に襲われる。それはアリスも同じのようで、座っている彼の後ろへ抱きつくような形でしがみついていた。


 そんな三人に留守番をしていたノアとユキがせっせと布団の準備をしてくれる。



「んなとこで寝んなよ。寝床をひいてやっからそこで寝ろよ」

「う~ん……」



 ノアの注意にアッシュも聞こえてるだろうが、抱えてるアティと背中にいるアリスの体温で心地いい眠りに誘われているのか。もう動く気力が全くない。


 返事はしているが動かないアッシュたちに、呆れた顔でノアがリリィに一先ずアリスを引き剥がして寝かせようと伝える。


 が、リリィがアリスを後ろから持ち上げようとしても、彼女はアッシュをガッシリと掴み、離れない。


 その様子をヴィンセントも呆れながら隣にいるエドワードに話しかける。



「いつもあんな感じなのか?」

「まぁ、そうだな」



 頑張ったのは間違いないが、終わった後のダラッとされると後片付けが面倒だ。まぁ、いつもの事だから構わないけども……。

 運ぶなら、さっさと連れて行ってくれそうな方を動かした方がいいだろう。


 エドワードはまだ寝てない……と、思うアッシュの肩を叩く。



「おい、アッシュ、アリス諸共連れてさっさと寝ろ」

「ん〜……」

「……アリスとアティが風邪を引いてもいいならそのままでも構わんぞ」



 アッシュの閉じかけていた目が二人が風邪を引くと言われて、半開きではあるが目が開く。


 自分の事なら放置するが、アリスも引っ付いているし、抱えたままのアティを風邪引かれるのはコイツは嫌がる事は分かっている。


 彼の言葉にアッシュは何も言わずにアリスを首に引っ掛けたまま、立ち上がった。とは言え、やはり眠いのかフラフラしている。どうにか動くので、ノアが誘導していく。



「へーい、オーライオーライ」

「あ、じゃあ僕らはアッシュたちを連れて寝かせてきますね」

「あぁ、頼むぞ」



 誘導するノアを先頭に、アッシュの背中、もとい、アリスの背中を押しながらユキも部屋を連れて行こうとすると、部屋を出る前にアリスがこちらを向く。



「あ〜、忘れたら困るから先に言っとくわねぇ〜。ヴィンセント」

「何だ?」

「起きて魔力回復したら、神子の件で話したい事あるから、忘れてたら声掛けて」

「神子の事?」



 アリスから神子の事について聞くのは珍しい。興味が無いのか、面倒なのか、普段の彼女からそんな聞こうとする事も話題として出す事は全く無かった。



「わかった。起きたら声掛ける」

「よろしくぅ〜」



 それだけ言い残して、彼女たちはノアに連れられて出ていった。



「……アイツが神子の話をするのは珍しいな。兄様」

「今日、会ったあの神子が原因なんじゃないか? 四翼だったし、さすがにあのちゃらんぽらんも危機感を覚えたんだろ」


(ちゃらんぽらんなのは確かだが、それだけでするだろうか……?)



 自分本位なところもあるアリスは割と自分は自分、他人は他人だと割り切るタイプだ。だからこそ、例え、力が強かろうがどうだろうがそこまで気にする事はない。


 心変わりがあるのはいい事だが、無理をしなければいいが……。


 心配するエドワードとヴィンセントは一先ず彼女が起きるまでに神子の事のまとめや今後の話をする事にした。



 ◇ ◇ ◇



 伊東を連れて行ったグレンは一通り奉行の連中や羅生のやっていた事を知っている連中と話が終えたところだった。

 隣にいた伊東は少し顔を青ざめながら、歩いてるグレンに話しかける。



「ぐ、グレン殿、あれはどういった心境でやったんだ?」

「なんの話だ?」

「いや、その、若様の事だ。若様がしてしまった事を将軍様へは黙っておくようにと、あの者たちにもかなり――いや、結構キツめに口止めされていたから……」

「あぁ、将軍には羅生がした事は話を誤魔化しているからな」

「誤魔化す……?」



 伊東たちからすれば誤魔化したところでグレンにはなんのメリットも無いのにする理由が分からないという様子だ。

 実際そうではあるが、一応、請け負うと言っているし、何より……。



「何より、此処での私の罪がひとつやふたつ、増えたところで変わらん。アイツらにも言ったが、恨むなとも言わないし、殺しにくる事に関しては別に私自身止める気もない。(アビス)がお前たちとの、約束を守るかは知らんがな」



 いや、多分、あの(アビス)がそんな約束を守るとは思えない。人の不幸を好物とする奴だ。アレがいいおもちゃを手放す事も、解放するとは無いだろう。


 なら、まだ望みがあると思っている間の方が幸せだ。あとは、面白い事がそこで起こったり、興味を示さなければ、それまでは(アビス)が手を出してこないはず。



「それにしても本当に将軍様を正気に戻すとは思わなかったぞ」

「神子たちが手を貸してくれたおかげでな」



 通常の浄化で効かない以上、神子であるアリスやあの、マラカイトだったか、あの二人の神子のおかげで元に戻せたようなものだ。

 あとは、加減が面倒だった。殺さずやるのも苦労する。


 グレンはそう考えていると、ふと、何かを思い出したのか、立ち止まり、アイテムボックスから何かを取り出す。



「そうだ。お前たちが使っていた刀の件だが――」

「破壊、及び、回収であったな。グレン殿の判断にお任せする。将軍様からも、恐らくそう言ったご指示が来られるかと思う」

「そうか」



 グレンは返事をすると、砕けた似蛭と陽が落とした村雨をアイテムボックスへとしまう。


 一応、これで表向きの仕事は完了だ。


 何ともまぁ、あのクソ神子(アビス)のせいで厄介事に発展してしまったし、気がかりなのは神子の(めい)の事だ。随分と好き勝手されているようだし、他にないか調べておく必要もある。


 その事もふまえて、確認したい事もあるから、そこはまたアリスにも少し手を貸してもらおう。


 グレンは城の外まで見送ってもらい、伊東と解散した。


 あくびをしながら彼は三条屋敷へと向かう。


 魔力は大して減ってはいないが、変に気を使って無駄に疲れた気がする……。本当に、自分は加減に向いていない。加減に関しては、アッシュはアイツらと一緒にいるから出来てきているが、私はどうもな……。


 とはいえ、またああいうのがあると考えると、頭が痛い。


 その道中にバタバタと誰かが走って来たかと思うと、息を切らしたナギだった。



「グレンはぁぁぁぁぁぁん!!」

「ん?」

「なんで、うちを、置いてったんやぁ!!!! 終わったなら迎えくらい来いやぁ!!!!」

「置いて……あ〜……忘れていたな。すまん」

「すまんじゃないてぇ!! しかも出番なかったやないかぁ!!!!」



 叫びつつ、ナギはバンッと地面を叩く。


 実際、コイツをあの場所に来なくて良かったと思う。あんな密室状態ではコイツの本領発揮は出来なかっただろう。

 それに、保険として遠距離支援がある事は悪い事でもない。


 地面に項垂れているナギにため息を吐き、手を差し出す。



「そんなところで座るな、バカ」

「ふぇ?」

「……なんだ?」

「なんや、あんさんが手を出してくれるん、驚きやで……」

「あ?」



 イラッとして、差し出された手を引っ込めようとしたが、ナギはそれをガシッと掴む。少し不思議そうな顔をして、掴んだ手を引っ張ってこようとするので力を入れて、立ち上がらせる。



「そうだ、私は一度、帰る」

「え、帰るん?!」

「あぁ、また戻る予定だ。報告だけしたら三条屋敷に戻る」

「お、オレも戻る!!」



 グレンは言いながら手を放そうとすると、ナギは焦った様子で掴んだままの手を放さない。なんだと思っていると、何も言わずに必死に掴んで放す気配がない。



「なんだ?」

「ほ、ほら、お、オレ、あ、あ相棒やん? なっ?! 置いてかんといてな?!」

「……ただ報告するだけだぞ」

「行くんや!!」



 どうもこの国に来てからはコイツは押しが強い。何がしたいんだろうか……。


 ため息を吐くと、掴まれている手を捻って剥がそうと思ったが、コイツがいるなら、もし神子の(めい)を使われて、忘れたとしても、話が聞ける可能性がある。



「……おい、ナギ」

「?」

「連れて行くのは構わないが、ひとつ頼みがある」

「頼みやと?」

「あぁ」



 ナギに要件を伝えると、驚いた様子をして、暗い顔に変わる。だが、小さく頷いた。



「よし、なら行くぞ」

「……わーった」



 彼女の返事を聞いて、パチンッと指を鳴らす。

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