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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第ニ章 クロノス騎士団
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来訪者1

 部屋を移動して、翌日。

 例のヤバいやつが来る事を危惧し、アリスは部屋で待機をしながら、他のメンバーも代わり替わりに見張りをすることにした。


 ただ、アリス本人はよほど暇らしく、ベッドではなく、床に寝転がっていた。



「いや、ホント……暇すぎる……」

「仕方ないよ。いつ来るかも分からないし、一日だけ我慢したら大丈夫さ」

「んんんん〜!!甘いもの食べたいぃ〜!!お買い物行きたい〜!!」



 寝っ転がったままじたばたとする姿はどうも知人としては恥ずかしいが、身内しかいないのが幸いだ。

 アッシュもさすがに気の毒になったのか少し考えたあと、アリスに提案した。



「じゃあ、僕が何か作ってくるよ。君が美味しいと思えるお菓子は作れるか分からないけど、せめて甘いものくらいは食べたいでしょ?」

「えっ!マジで?!いいの?!」

「おい、アッシュ、本当にお前アリスを甘やかさないでくれ」

「いいじゃないか。外に出る訳でもないし、それに僕は向こうの気配は分かるから大丈夫だよ。それじゃ、アリス待っててね」



 そう言って部屋から出ていった。

 浮かれてるアリスは”どんなのを作ってくれるんだろぉ〜”と既に甘いものにしか考えがいたってないそうだ。


 というか、あいつ昨日の今日でまだ体調良くなってないだろうに、大丈夫なのだろうか……。



「……、心配だ。私も行ってくる」

「え、エドも行くんですか?」

「あぁ、あいつ1人だと心配だからな。リリィ、ノア、ユキ。アリスを頼むぞ」

「行ってこい、もやし」

「うーっす、迷子になんなよー」



 リリィとノアは喧嘩売ってるんじゃないかという返事をされたが、一旦はスルーしよう。アッシュが出ていった扉を開けて、左右を見渡す。アッシュの姿はもうなかった。とりあえず左の方へ進む。


 ここの階層は初めてだが、さすがにこの明るい時間だ。窓際を歩いていけばだいたい大丈夫なはず。迷うことなんてない。


 そう意気込んでもはや1時間を経過してしまっていた。



「広すぎる……。既に元の部屋の場所もわからん……」



 ため息をつきながら、窓際を行くと、とりあえず今いる方向が正門方面。元の部屋はたしか東寄りだったと思う。

 一旦、元の部屋まで戻ることにして、最初の曲がり角を曲がろうとした瞬間、誰かが出てきてぶつかる。



「っ!」



 不意な衝撃に、エドワードは後ろに倒れそうになったが、ぶつかってしまった相手から腕を掴まれ、コケてしまうことはなかった。



「す、すまない、よそ見していて」

『「いやいや、こちらこそ我もすまぬことをした」』



 妙な声だった。目の前にいるはずなのに脳へ直接聞こえてくるような声だった。変な違和感を持ちながら掴んでくれていた相手を見る。


 小柄な少女のような容姿に黒髪に黒い瞳、そして黒いローブ。


 ここの騎士団の団員なのだろうか……。



『「なんだ? 我の顔になにかついていたか?」』

「え、あ……いや……」



 なんだろうか、こいつの声、嫌に耳に残る。ふと、コイツは何故ずっと腕を掴んだままはなさないのだろうと気づいた。



「……おい、もうはなしてくれないか?」

『「なんだ、女神の加護がある。貴様、守護者だな……?」』



 少女はこちらを見てニヤリと嗤う。

 不気味な笑みを浮かべた少女は途端に腕を引き、こちらに距離を詰めると、こちらの頬に触れる。



「なっ――?!」

『「是非、会わせてくれまいか?貴様の主に……」』



 黒い瞳と目が合う。気が遠くなっていく感覚と、何か良くないものが自分の中に入り込まれる不快感を感じた。


 ダメだ。こいつから離れないとまずい。


 そう頭で理解してても身体は動かない。

 恐怖心で嫌な汗が溢れ、その間もこいつは入り込もうと顔を近づけられる。


 が、不意に誰かから後ろへひっぱられた。



(あるじ)

『「ん?」』

「――っかはっ!」



 やつの気が逸れたからか、先程の不快感は急になくなる。息を忘れていたのか、足りない酸素をどうにか肺に入れようと咳き込んでしまった。


 朦朧としていた意識の中で、引っ張ってくれていたのは、グレンだった。


 相変わらずフードで顔は見えなかったが、下から見える顔はどうも呆れた目でこちらを見下ろしてから、目の前の少女に移す。



「先に用事を済ませるのが優先です。戯れも程々に」

『「……ふむ、まぁ今回は仕方ない。()()()()はすんだことだ、我は先に行こう。貴様も終わり次第来い」』

「かしこまりました」



 軽く頭を下げ、少女を見送る。少女は闇に紛れえしまうように消えていった。

 エドワードは脱力感をに襲われ、その場に座り込む。



「おい、大丈夫か?」

「……っ 助かった……」

「……お前、戻ったら念の為、浄化を受けておけよ。効果があるかは分からんがな」

「わかった……」

「…………。本当に大丈夫か?」



 エドワードは返事をどうにかしたが意識が朦朧としているままだった。座り込んではいるが、グレンに支えてもらって座っていられるという状態。


 どうにか動かそうとしても身体に力が入らない。


 ずっと座ったままのエドワードと同じ視線になるようにグレンもしゃがむと、観察するように顔を見る。



「……はぁ、(あるじ)の瘴気にあてられたんだろうな。おい、肩を貸してやるが、立てるか?」

「あぁ……、だい、じょう……っ」



 頭がグラグラする。気持ち悪い。どうにか立とうとしても足も腕にも力を入れることが出来ない。


 隣に居たグレンは”仕方ない”と呟いて、エドワードを抱き抱えた。



「部屋まで送ろう。やはりアリスに浄化はしてもらえ」



 そう言って廊下を進んでいると、数分で部屋までたどりつき、グレンが扉をノックをすると、ユキが出てきた。



「はーい、どうされました……ってエドワード?!」

「中にいるアリスに浄化をするように伝えてくれ。多分動けるようになるはずだ」

「あ!は、はい!……えーとどちら様で?」

「通りすがりの客人だ。それより早くこいつを休ませてやれ」



 グレンからユキへエドワードを押し付けるように渡し終えると、そのまますぐにどこかへといってしまった。

 顔色の悪いエドワードをアリスの元へ連れていき、言われた通り浄化をするように伝えると、エドワードの姿を見てアリスは急いで杖を準備してそれを施した。

 浄化によってエドワードの顔色も良くなり、起き上がった。



「アリス、すまん……」

「大丈夫? 浄化するなんて滅多にないけど、それしないといけない程のことがあったの?」

「わからない、正直何されたかも分からないんだ……」



 倦怠感が残る。意識も少しずつはっきりとはしてきたが、起き上がっているのはキツい。

 アリス達に後は休むと伝えて、横になった。




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