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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十一章 侍の国

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侍の国:妖刀探し1

 一方、時間を戻してアティとナギたち。屋敷を飛び出した二人を追いかけてユキもその後ろをついて行っていた。二人は楽しそうに手を繋いでいたが、ユキは、”はぁ”とため息を吐く。



「お二人とも、楽しむのはいいですが、ちゃんと探さないとダメですよ」

「もちろんです! 任されたからには私もお父さんに負けないくらい張り切っちゃいますよ!」

「せやで! グレンはんに散々オレは馬鹿にされとるんや……っ ここで目にものを見せてやろうってもんや!」

「あなたの場合、だらけたり適当にしてるから言われてたんじゃないですか?」

「うぐっ」



 ユキの言葉にぐぅの音も出ないナギは苦虫を噛み潰したような顔をする。


 この男、平然と痛いところゆーて来るやないか……。


 そんなナギとユキにアティは二人の前まで出る。



「ユキさん! きっとナギさんは考えてそうしてるかもしれませんよ!」

「と、言いますと?」

「おじ様はナギさんに妖刀探しを任せると言ってました。と言うことは、です! ナギさんは何か考えがあっての行動というわけですよ! ね? ナギさん!」

「お、おぉ! そやで! お、おぉおオレが考え無しにするわけないやないかぁ!」


(今明らかに動揺が見えた気がするんですけど……)



 ユキは疑うような目で見ながら思ったが、まぁ、どちらにしろ探さないといけないのは変わらない。とにかく刀を探しながらアティが会ったという羅生という男を探した方が早いかもしれない。



「アティ、夏鬼と会った男の人の特徴は分かりますか?」

「羅生さんのことですよね? んー、そうですねぇ。私の中で印象が強かったのはお腹すいて倒れていた、もいうのと、変わった羽織りを着ていたというくらいですかね」

「へぇ、どんな羽織りなん?」

「えーと、確か、黒い羽織りに赤と金色の刺繍が入ってましたね。とても綺麗な羽織りだったのでわかりやすいと思いますよ」

「黒の羽織りなぁ」



 周りの人達を見ても羽織りを着ている人は少数。黒の羽織りを目印に一旦は探す方がいいかもしれない。手分けして探したいがあまり遠くだと心配だ。



「では、この辺りで聞き込みをしてみましょう。ただし遠くには二人とも行ってはダメですよ。互いに姿が見える範囲の方がいいと思いますから」

「そうですね。まだお昼頃ですけど、迷子になったら大変ですし!」

「迷子になる前提なんやな……。まぁえぇわ、あとは聞き込み中に見かけても追わんことや。グレンはんにも言われとるけんな」

「分かりました。ではユキさん、ナギさんまた後で!」



 元気よくアティは近くの人に声をかけて行く。


 なんとも行動力が早い……。


 置いていかれた大人二人は互いにチラッと見る。



「ちーっとお願いがあるんやけどえぇ?」

「何です?」

「もし、妖刀探し中にヤバいと思うたら絶対にアティちゃんは連れて逃げることや。最悪、オレは囮になって一人でも逃げれるしな。子ども巻き込むんは、ちとあかんけんな……」

「…………それは、約束しかねますね」

「あぁん? なんでや?」



 ユキの答えにナギは巻舌気味で問い返す。



「グレンとの約束ですからね。自分の身もあなたたちの身も守るようにと」

「あ〜、そういうことやなぁ。そうは言っても時と場合があるやろ」

「あっでもですよ。引き際を間違えるなということは全員無事じゃないとダメってことです。ナギも含めて見ておけってことですからね」

「……グレンはんも人のこと言えへんのにな……」

「え?」



 ユキの答えにナギは少しムスッと不機嫌そうにしていた。そういえば彼女とグレンと一緒にいる時、基本、決定権はグレンだったのに、今回のノアたちの調査の件や協力も含めてナギが無理にお願いしていたような気がする。


 一緒に行動する条件で仕事の邪魔をするなと念押しされていたから、なおさら無理に押し通しなんて考えないだろう。



「……ナギ、グレンと何かありましたか?」

「……オレとは特になかとよ。色々あってん、話そうかどうしようか、オレも悩んでるんや」

「悩んでるってことは何かあったんじゃないですか」

「えぇやん、今はそんなこと」



 そういうような顔では無い気がしますが……。ただ今は聞くのは難しそうですね。


 ため息を吐いていると、ナギが、”あっ”と声を上げる。



「なんですか?」

「あ、アティちゃん?! どこ行ったんや?!」

「えっ?!」



 目を離した隙に一瞬で迷子になった……? いやいやいや、親子揃ってなんでこの一瞬で行方不明になるんです?!


 唖然としていたユキは慌てて先程アティと話していた人の元へ行き、話しかける。



「あ、あの! 先程、このくらいの少女と話してましたよね?! どちらに行かれましたか?!」

「え、少女? それなら話をして向こうに走って他の人に人探ししていたぞ」

「向こうですね、ありがとうございます!」



 指をさされた方向へとユキは慌てて走っていく。ナギもその後に続いて走りながらユキに聞く。



「まずはアティちゃんを探さんと! 居なくなったってグレンはんからバレたらこっちが殺されるで?!」

「僕は向こうに行きます! ナギはあちらへ!」

「わーった!!」



 ナギはダンッと地面を蹴り、屋根の方へと登る。上からならもしかしたら見つかるかもしれない。あのプラチナブロンドの髪色はこの国にはない。だから目立つはずだ!


 そう思うナギとユキが慌てて探している頃、当の本人であるアティは二人が通り過ぎたお店から出てきた。迷子にならないようにとまだ近くで話をしていた。


 店から出たアティは二人がいるはずの方を見るが居ないことに気づく。



(あれ? お二人はどちらへ……? あ、同じようにお店の中まで聞き込みされてるのでしょうか。また後でここに戻ってきたら大丈夫でしょうし)



 せっかくお店の方から美味しいお店も教えて頂いたのですが……。そんなに遠くに行かれてないなら大丈夫!


 そう思ったアティだったが、聞き込みして約2時間。一向にナギとユキがいないまま。お腹がすいてきてしまった。



(お二人とも迷子になってしまったのでしょうか……。人混みも多いようですし、屋敷まで戻った方がいいですかね?)



 そう思うアティだったが、父の言葉を思い出す。



 ◇



 それは旅を一緒に初めてから間もない時。父から念押をされたことがある。



「いいかい、アティ。君は僕に似て割と感覚的に動くこともあるから、もしみんなで行動中はぐれたら、できるだけその場から動かないでいて欲しいかな。命の危険性があるなら逃げる必要はあるけど、そうじゃない時は下手に動くと迷子になるからね」

「わかった!」

「特に、アティはよく迷子になるからね」

「わかった! …………え? ちょっと待って、お父さん、今、なんて言ったの?!」

「あははっ 迷子になりやすいアティはあまりうろうろしないように、ってことだよ」

「むむむ〜っ!! 私、そんな迷子になったりしないもん!!」



 ◇



 ……思い出しただけでもちょっと腹立つ。それに今回は私じゃなくて、ユキさんとナギさんが迷子だもん。

 けど、お父さんにも言われてたし、変に動き回らないようにしながら探そう。


 目に入ったおにぎりを売る屋台を見つける。ちょうどお昼すぎだ。少し小腹が空いている。


 だけど、一人で食べるのも、どうだろ……。



(……あ、そういえば羅生さん、前にお腹空かせて倒れてたことあったし、またお腹空かせてる可能性を考えて食べ物も準備しておこうかなぁ)



 あとは、妖刀のことで羅生さんたちが隠れて動くなら裏路地の方にいる可能性もある。お父さんたちとか考えるだろう動きを真似でもいいから考えなくては。おじ様からも頼りにしてもらっての今回の聞き込みだから、絶対に成果なしで終わらせたくない。



「よし! 今いる場所から遠くもなく近い辺りの裏路地を探しましょう! 頑張るぞぉ!」



 腕を高らかに上げ、バタバタと走って目の前のご飯屋のお店の人におにぎりを作ってもらい、お父さんから貰ったお小遣いで数個、買う。


 キョロキョロとしながら路地裏っぽいところを探し、少しだけ薄暗そうなところを見つけた。



(……うぅ、まだお昼すぎではあるけど、ちょっと暗い。危険があれば逃げればいいだろうし)



 恐る恐る警戒をしながら中へと入っていく。

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