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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第ニ章 クロノス騎士団
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僕のこと4

 ようやく、落ち着いたアッシュは、アリスと一緒に鼻をかむ。二人とも涙と鼻水でえらいことになっているからだ。

 チーンッと鼻をかんでる横で、エドワードは腕を組みながらアリスの方を見る。


 アリスが来なければ、実際死んでいた可能性がある。けどタイミング的に良すぎたため少し疑問だった。



「にしてもお前、よく気付いたな」

「気付いたんじゃなくて、ルーファスに教えてもらったの。もしかしたらアッシュがエドワードを襲ってるかもってそれで慌てて来たんだからね。部屋からすごい殺気も出てたし」

「あー、そういえば朝、ルーファス起こしたときそれっぽいこと言ってたね……」



 あの時のことはこれだったのか。おかげでエドワードも助かってはいるし、結果としてはいろいろといたたまれないくらい、いい歳して泣いてしまうというのはどうも小恥ずかしい……。


 赤くなってしまってるだろう顔に向けてパタパタとアッシュは手を扇ぐ。その様子にアリスは何やらニヤニヤと笑う。



「あんたの本音もなかなか聞くことがないから、泣きっ面を記憶玉に保存でもしておけばよかったわねー」

「あ、あはは……。それは勘弁してほしいなぁ」

「ただ、今回のことは皆には内緒。3人だけの秘密にしましょ」

「うん、ありがとう、アリス」



 彼女なりに気を使ってくれたのだろう。不可抗力とはいえ、仲間に対して首を絞めてしまってることは正直ほかのメンバーに知られたくはなかった。なのでアリスの提案はとてもありがたい。


 アリスの提案にはエドワードも同意してくれる。


 そしてアリスはもう一つ思い出したような顔で、手をポンッと叩いた。



「あ、そうだアッシュ!あんた助けてくれた人、もう一人いるわよ」

「え?そうなの?」

「えぇ!グレンって確かユーリが呼んでたわね」

「……え、グレン……?」

「そうよ」

「グレンがいたって、君達何もされてない⁈ 大丈夫だったの⁈」

「だ、大丈夫も何も、あんたを診て、原因突き止めて帰っていったわよ。また来るっては言ってたけど……」



 かなり焦った様子でアッシュはアリスに食い気味に言い寄られて、さすがのアリスもびっくりした様子でたじろぐ。そんなに焦るような人物でもないだろうし、アリス達から見ても普通の人、だとは思う。雰囲気は少々独特ではあるけども。

 少し眉間しわを寄せながらエドワードはとりあえずアリスを放すような仕草をしながら、気になることを口にする。



「言える範囲でいい。お前、グレンとどういう関係なんだ?」

「……そ、それは……」



 少し言いにくそうな顔をするが、それを首を振ってどうにか決意したような目で、再度エドワード達をみて、震える声で、答える。



「……グレンは、僕と同じ(マスター)に仕えていた守護者で……」



 次の言葉が出てこない。喉につっかえるように言葉が詰まる。

 脳裏に嫌でも思い出してしまう、あの時の光景。胸が苦しくなってくるけど、深呼吸してゆっくりと言葉にする。



「僕の妻、レイチェルを……、殺した、本人の可能性が、あるんだ」

「可能性?」

「僕が実際に殺したところを見たわけじゃないんだ。ただ、焼け落ちかけた屋敷の中で、血塗れで倒れていた彼女のすぐ横で、同じように血塗れで剣をもった状態で立っててさ。その時の僕には、グレンが彼女を殺したようにしかみえなくてね……」

「……そうだったのか」



 そんな状態だと誰でもそう思ってしまうだろう。たださえ、大切な人が殺されていて、その近くにいたのであれば……。


 エドワードが少し深刻そうな顔をしていることを気にしたが、アッシュはいつもと同じようにニコリと笑う。



「とはいっても、もしかしたら勘違いかもっていうのは、今、冷静に考えるとグレンがレイチェルを殺す理由が見当たらないからさ。次に会える機会があればちゃんと話をしてみようかと思う。いい加減、仲直りしないとね」



 へらっと困ったように笑うアッシュは無理をしてる気がする。

 その出来事はアッシュにとってはトラウマに近いのだと思う。平気そうにみえて、いまだに声が少し震えてしまっているのが何よりの証拠だ。


 そんなアッシュに肘でつつく。



「もし、グレンと二人で話すのができないなら、私達がいてやる。安心しろ」

「っ! ……ありがとう。本当に」



 どれだけ僕は彼らに救われてるのだろうか。思わず口元が緩む。

 するとアリスが急に顔を近づけてきた。



「あぁあ!!今の顔、ガチの笑顔じゃん」

「え、え?急になになに?」

「あ、戻った。あー、せっかくいつもの作り笑いじゃない笑顔だったのに」

「え、そんな僕、普段から作り笑いになってる?」



 そういうと、アリスとエドワードは同時に頷く。


 ……今度笑う練習再度しようかな……。


 ちょっと複雑な気持ちになりつつ、ため息をしてると、後ろからノックの音が聞こえる。

 扉に寄りかかりながら、振り向くとユーリが立っていた。



「取り込み中悪いな。今大丈夫か?」

「えぇ、いいわよ。どうしたの?」

「お前、自分の守護者達にルーファスと話したこと伝えたか?」

「まだよ。その前にしないといけないことあったし、今からみんなと話すところよ」

「ん、わかった。とりあえず部屋移動早めにしろよ。奴が来たらあぶねぇからな」

「わかったわ」



 いつになく真面目に話す二人にアッシュとエドワードは首をかしげる。


 誰か来るのだろうか。


 アリスは二人を連れて、他の3人を見つけて、使っていた別の部屋へと案内される。

 結構入り組んでいるからはぐれると本当に迷子になってしまうほどだった。

 連れられている中、気になったノアは口を開く。



「なぁ、アリス。なんで急に部屋移動なんだ?別にあそこでもいいだろ」

「ダメよ。絶対に会うなって、ルーファスからいわれてるから」

「……。そんなにやべぇやつなのかよ?」

「えぇ、私は会ったことないけど。神子なら絶対に会うとダメって。へたしたら神子としての資格を奪ってくるようなやつ、らしいの」

「まじかよ」



 普通は資格を奪うことなんでできない。それを奪うことが可能にするなんて聞いたことがなかった。

 どういう奴だろうと考えていたエドワードは隣を見るとアッシュが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 アッシュは言うか否か、迷った顔をしてたあと、しばらくして小さく手を挙げる。



「多分僕、そいつ知ってる……」

「え、知ってるのか?」

「ちょっと詳しくは話せないけど、絶対に会わない方がいい。これは神子だからってじゃなくて、誰であろうが会わない方がいいよ。あれは人でも何でもない、生きる災厄と思った方がいい。もしものことあっても僕でも太刀打ちできないからさ」

「うっそ⁈アッシュでも無理なの⁈」

「うん、ちなみにあいつがいるならグレンも一緒だろうけど、グレンは僕より強いよ」



 それを聞いた全員は真っ青になる。無理もない。この場で一番強いであろうアッシュが太刀打ちできない。しかも強い付き人もいるならなおさらだ。


 アリスは青ざめたまま頭を抱える。



「私、明日は一日部屋でおとなしくしてよ……」

「それがいいよ」



 しょげているアリスの肩をアッシュは軽くポンポンと撫でる。



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