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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第十一章 侍の国

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侍の国:三条の刀鍛冶師1

しばらく投稿は2日に1回になります

 ヴィンセントのあとをついて行く最中、少しの間、沈黙だったが、先頭を歩いていたヴィンセントが口を開く。



「そういえば、スノーレインの方はどうだった?」

「アリスから手紙とか来てないのかい?」

「……アリスからは、”美味しい、楽しい、また行きたい”、という幼児レベルの内容しか来ないから、エドワードからも報告は来ているが、あいつらから見たものとお前からだとまた違うだろう?」

「……僕からの視点かぁ」



 ”んー”、と考えていると、フードの中からクロが鳴きながらアッシュの肩に乗り、頭を頬へとスリスリとする。そんなクロの顎下を撫でる。



「そうだなぁ。ヴィンセントは今日、夜は暇かい? その時に旅の話をツマミに飲みながら話そうか」

「ふむ」



 肩に乗っている黒猫を見ながら言っているのかと思ったが、腕を組んでいる神子を見ているようにも思える。


 こいつは酒が飲めないとアリスから聞いているが、そう言ってくるところを見ると、いくらアリスと同じ神子でも、仲間内の内容を話しを聞かれるのは避けたいようだ。それにこんな街中。誰かどこで聞いてるかも分からない。



「……わかった。アリスたちも会いに行った方がいいだろうし、構わん」

「あはは、ありがと」



 ニッコリと笑うが、目が笑っていない。なんだコイツ、不機嫌そうな感じがする。


 なんて話をしていると、ヴィンセントの足が止まった。そこには、大きな御屋敷のような建物、そして”三条鍛冶”という看板が建物の入り口に立てかけられている。


 その入り口には、どうやらエドワードもいるようだ。



「ッ! 兄様、アッシュ。なんでこんなところに?」

「エドもなんでここいるの?」

「……リンの弟の三条がここにいるそうだから見に来ただけだが」

「え、リンの弟、ここなの?」

「そうだ」



 返事をしたエドワードに、アッシュの隣にいたヴィンセントがエドワードの元へと行くと、ジッと見て小さく彼も頷く。



「ふむ。ならついでにお前も刀を見て貰え。旅の時は自分でずっと手入れしていただろ」

「……自分の刀は自分で見れるが……」

「お前も扱ってる刀も妖刀だろ。定期的にメンテナンスはしてもらっておいた方がいいぞ」



 そう言いながら三条鍛冶へと向かう。


 エドワードの使っていた刀も妖刀だったのは驚きだ。



「エドワードも妖刀っていうの使ってるんだね」

「ん? まぁな。あまり刀は自体はそこまで興味はないが、旅の時に母上から持たされたものだからな」

「へぇ。じゃあ僕らも行こうか」

「……マラカイトも行くのか?」

「もちろんでございますわ! 刀鍛冶師様がどのように刀を作られてるのかも気になっておりますの!」

「……てことで、一緒に来るらしい」



 露骨に嫌そうな顔をする彼にくっついたままのマラカイトの返しにこのノリをずっとアッシュは相手をしていると思うと大変だなぁと思ってしまう。


 先に屋敷へと入っていったヴィンセントを追いかけるようにアッシュたちも足を踏み入れていく。屋敷から少し離れた離れなようなところから、何かを打ち付けるような音が響き渡る。


 カンッカンッと金属を打ち続ける音の方へと行くと、頭にタオルを巻いている青年が汗を流していた。真剣な眼差しで刀を打つ姿はとてもかっこよく見える。

 そんな彼にヴィンセントは歩いていき、肩をトントンと叩くと気付いた青年が振り返る。



「あ、ヴィンス、いらっしゃい」

「頼んでいたものを取りに来た。終わってるか?」

「もちろん、終わってる。……て、なんか連れが多くないか?」

「私の弟と、それの仲間、あとは神子だ」

「へぇ」



 青年はハンマーを置いて、立ち上がり、つけていたタオルを外すと、汗で湿った黒髪が露になる。



「初めまして。俺は三条 夏鬼だ。弟くんのことはヴィンスからよく聞いてる。なんでも自慢のおと――ッむぐ?!」

「余計なことを言うな。クソが」



 ヴィンセントが話していた夏鬼の口を平手でバシンッと叩きながら言葉を遮る。言葉を遮ったが、何となく理解したエドワードとアッシュはチラリと彼を見て、エドワードは少し嬉しそうな表情をしていた。が、アッシュに至っては面白いものを聞いたと言わんばかりにニヤリと笑う。



「へぇ、自慢の弟、ねぇ」

「ニヤニヤするな、気持ち悪い」

「あははっ いやぁ、騎士団のところではあんなに貶してたわりには他所のところでは自慢の弟って話してるんだぁ。知らなかったぁ、ヴィンスくんがそこまで弟思いのお兄さんだったなんて」

「貴様に愛称で呼ぶ許可した覚えは無いし、自慢してない。ふざけんな」

「いやいや、だってお前、刀の手入れ終わって取りに来る度に――ッだ?!」



 今度は夏鬼の顔面に左ストレートパンチを思いっきりぶつける。

 不意な拳を避けることも出来なかった彼はそのまま後ろへと倒れてしまった。慌ててエドワードが倒れた夏鬼の様子を伺う。



「お、おい、大丈夫か?」

「いつつ……ッ ホント容赦ないな……。ヴィンス、そんなに照れるなよ」

「うるさい。喋るな。黙って預けた刀を出せ」

「はいはい」



 痛む顔を抑えつつ、夏鬼は部屋の奥はと消えていった。


 その間、アッシュはずっと笑いを堪えるのに必死になっており、肩が震えている。


 笑っているアッシュに凄い睨むヴィンセントの間にエドワードが入り、呆れた様子でアッシュを注意する。



「お前、程々にしろよ?」

「あはは、ごめんよ。面白くてつい」

「ついで兄様で遊ぶな。馬鹿者」

「ふふ、みな様仲良くて羨ましい限りですわ」



 これが仲良く見えるのだろうか。いつヴィンセントが怒ってしまわないか内心エドワードはハラハラしつつも、深くため息をつく。



「あ、そうだ。エドワード、僕はまだ見つけきれてないんだけど、君の予知夢で見たりはできない?」

「私のはあくまでも予知夢はいずれ起こるものを見ているだけだ。それがその人かというのは分からないし、まだ完全に使いこなせる訳じゃないから私の意思でピンポイントの部分は見れないな」

「そっか。ごめんね、無理を言って」

「いや、大丈夫だ。役に立てなくてすまん」



 申し訳なさそうにするエドワードにアッシュは、”そんなことはないよ”、と笑顔で伝える。それでもやるせない気持ちなのか、少ししょんぼりとしてしまった。


 出来ればと思っただけだからそこまで落ち込まれるとは……。


 あまりエドワードに気を使わせないようにしないといけないかもしれない。以前もお願いごとをされてからかなり気落ちしていたし……。

 でも以前はそういうのなかったんだけどな……。


 そう思っていると奥から夏鬼が刀を持って戻ってきた。

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