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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第九章 HALの世界
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ラストクエスト:第一クエスト3

 第一クエストを達成した。


 雲ひとつない上空で、アッシュは”ふぅ……”と息を吐く。



(なんだか呆気なかったなぁ。モンスターもそんな強くないし、狐の面も出てこなかったし……。あ、でも、グレンと一緒に戦うの、楽しかったなぁ……)



 そう思いながら、地上へと降りていく。


 下にいたグレンが降りてくるアッシュを見ながら、下から風魔法をその風圧で減速し、難なく地上に着地出来た。



「ありがとう、グレン」

「ん」

「さて、少し予定とはズレかけたけど、どうにかこっちにHALの意識は向けられたかな?」

「さぁな。この後の向こうの出方次第だろ」



 元々この第一クエストは僕とグレンのみでする予定でもあった。目的は狙いをこちらに全て向けるため。本来全員でするクエストを二人で完遂することで、HALに最優先でこちらに注意を向けることが必要だった。


 そうすることでアリスたちに狐の面が向かうことを避けることができるはずだ。



「さて、戻ろうか。向こうに狐の面がいるならあまり離れておくのも良くないだろうし」

「あぁ」



 頷いたグレンとともに街へと戻っていく。


 戻る最中、焼け野原になっていた大地は気づけば元通りになっている。さすがはゲームの世界だなと思いながら、街へと戻って炒った。


 南門で待っていたナギがこちらに手を振ってきていたのでアッシュも降り返す。ナギの隣にいたノアとユキも気づいたようだ。



「あんさんら、さすがやなぁ~。あの魔法もやばいし、殲滅も早かったやん」

「うぅん、ナギも手助けしてくれてありがと。あの砲撃はちょっと危なかったけどね。君の眼のおかげで大事にもならなかったし、すぐ対処できたからさ」

「お、もっと褒めてえぇでぇ~、もっと褒めてえぇでぇ~!」



 にやにやと笑うナギにグレンはムスッとし、腕を組みながら”ハッ”と笑う。



「普段からあれだけ聞き分けがいいならいいなら扱いやすいんだがな」

「なぁん言っとんよ! ちょ~聞き分けの良い相棒やろ!」

「寝言は寝て言え。それとお前は相棒じゃない」

「え~、おんなじ部屋や~ん。同室同士やでぇ?」

「……明日のクエスト、背後に気を付けてくださいね。相棒のナギ君」



 にっこりと、わざと明るいトーンの声で、敬語を使っているグレンにゾッとしたナギは、今までで見たことないくらい素早い動きで土下座する。



「調子乗りました!! サーッセンしたぁ!!」

「いやいや、気にしなくていいですよ。私の相棒なんですよね? なら……」



 急にグレンが声のトーンを落とす。



「死地に放り込まれても問題ないな」

「そ、それ、オレ、生き残れへんよ……?」

「相棒だろ? 死なば諸共という言葉があるじゃないか。アッシュのようにSランクだろうが何だろうが共に先陣きってついてきてくれるのだろう。いやー、頼もしい限りだ」

「ホンマ、ごめんなさい。調子こきました。安易に相棒とか言わへんから許したって下さい!!」



 全力で土下座してるナギにグレンはそっぽを向きながらギルドの方へと向かっていく。


 僕から見るとまるでコントのようで面白いけど、”そんなに嫌なんだなぁ”と思いながらもそれでも仲良さそうなのは変わんないけどな。


 二人を見ていたアッシュにノアが後ろから声をかける。



「俺らも行こうぜ。お前らのおかげで午前中にクエストも終わったことだし、アリスたちも心配してるだろうしな」

「そうだね。戻ろうか」



 ギルドに戻ろうとした時にふと思い出す。


 あ、グレンと何体倒すか勝負していたけど途中で数を数え忘れてた……。


 先を歩いていたグレンの方へ早歩きで駆け寄る。



「あ、グレン。ごめん。勝負していたのに数、途中から数え忘れちゃった」

「ん? ………………あ、そういえば私も忘れていたな。150、くらいまでは数えてはいたんだが……」

「あはは、僕も。途中、砲台の件も出たから忘れちゃったや」

「なら、一旦勝負はおわずけだな。また今度だ」

「ははっ そうだね」



 二人でクスクスと笑いながらギルドへと戻っていく。


 ギルドへ戻ると屋上にいたはずのアティが一階へと降りてきており、こちらに走ってくる。両手を広げながら笑顔で駆け寄ってくる娘にアッシュはしゃがみこんで、同じように両手を広げる。それに飛び込むようにアティはジャンプした。



「お父さん! お帰り!」

「ただいま。上にいたんじゃないの?」

「一つ目のクエストが終わったので、そのまま降りてきちゃった」

「そっか。アリスたちも大丈夫そう?」

「うん! アリスさんもギルドにいた人たちもすごい喜んでたよ! それに今からお祝いのパーティーだって!」

「パーティー?」



 どうやらクエスト終了後にみんなでこんな昼間から飲もうということになっているらしい。そもそもこの第一のクエストすらクリアできなかった彼らにとってはかなり喜ばしいこと。


 そしてアティの後についてきていたギルドにいた面々がこちらに目掛けて走ってきて、雄たけびをあげながらアッシュとグレンを囲む。アッシュはアティを抱きかかえて、”なんだろう?”と思っていると、そのうちの一人が一歩前に出てきた。



「おいあんたら!! ほんっとうにすげぇよ!! マジで第一クエストクリアしちまったな!!」

「え、あぁ、うん。君たちも信じて待ってくれてありがとう。おかげさまで無事に完遂できたよ」

「ガッハッハッハッ!! いやいや、俺たちは待ってただけだしよ、さすがはSランク冒険者! 考えもやり方もぶっ飛んでんな!! あ、俺はSランク冒険者のランスロットだ!! 同じSランク冒険者にはみえねぇだろうけどな!!」

「あははっ よろしく、ランスロット。僕はアッシュだよ」

「そっちの兄ちゃんは?!」



 アッシュの隣に来ていたグレンにもランスロットは眩しいくらいの笑顔で名前を聞いてくる。グレンは視線をそらして自身の名前を言う。



「グレンだ……」



 彼は言いながらも少しアッシュの方へ下がっていく。グレンがこういう反応するのは珍しいと思って、彼を見るとグレンはランスロットに対して露骨に嫌な顔をしていた。おそらくあぁいうタイプのヒトは苦手なのだろうか。


 ランスロットはそれでもお構いなしに一緒に囲んでる住人(アバター)に拳を突き上げながら叫ぶ。



「よろしくな!! さぁ!! みんな!! 英雄たちを胴上げするぞぉぉぉぉぉぉ!!」

「 「 「 おおおおおおおっ!! 」 」 」

「え、ちょっ?!」



 驚いてる間にアッシュはアティごとギルドのメンバーに胴上げされる。

 わっしょい、わっしょいと持ち上げられて驚きはしたが、アッシュと一緒に持ち上げられたアティは自分のお腹の上で嬉しそうにしていたので、”まぁいいか”と思い、されるがままになっていた。


 一緒に胴上げされていたはずのグレンの方を見るといない。少し遠くにいるノアたちのところにいつの間にかいた。やはりなんだか嫌そうな顔をしている。


 ノアがニヤニヤして隣に来たグレンに肘でつつく。



「胴上げされて来いよ。”英雄殿”」

「うるさい……。あぁいうやかましい連中は苦手なんだ」

「へぇ、意外だな。あんま気にしねぇって思ってたのによ」

「ナギを見たらわかるだろ。あぁいうやかましく、ノリで生きてるようなやつのは何言っても聞かん。こちらが疲れる……」

「まぁ、確かに。アッシュは黙ってされるがままだけど大丈夫なのかね?」

「知らん。害がないならいいんじゃないのか? アティもいる。害がないからされるがままなんだろ」



 グレンはため息を吐いて、一度、あの借家へ戻ろうとすると今度はアリスが彼に向けて突撃してそのまま首に腕を回して抱き着く。一瞬、何事かとグレンは驚くが、なにやら彼女からはすでに酒の匂いがしていた。



「おっかえり~グレンん~! あんたらほんとすごぉいわねぇ!」

「おい、酔っ払い神子。なんでもう仕上がってるんだ……」

「うへへぇ~、彪からおいしいってはなしのおしゃけもらったのぉ~」

「あ~! 鬱陶しい!! 放れろ!!」



 いつまでも引っ付いているアリスを振り払うように、グレンはブンブンと身体を振るうが、まるで接着剤でくっついてるんかと言いたいくらい、まったく放れない。二回、三回としたが放れなくて諦めた。



「はぁ……。引っ付くならアッシュに引っ付いてこい……」

「……むり……。いま、はずい……」

「は?」

「それに、あっしゅ、いま、あてぃちゃんといっしょだもん……」

「……お前、割と図太いと思っていたんだがな」

「うっさぁ~い」



 グレンの首にしがみついたまま頭をぐりぐりとする。首は絞まるしそういうことはアッシュ本人にしてほしい。


 そのあとからはどんちゃん騒ぎだった。


 第一クエストのクリアに喜ぶ者もいれば、ようやく出られるかもしれないという期待でひたすらに泣き叫んでいる者、様々だ。皆思うところがあったがただ喜びでのちの不安も消したかったのかもしれない。


 気づけば時間は夕方。


 胴上げされたアッシュはそのままギルドまで連れていかれ、この時間までみんなとはしゃいでいた。お酒は少し飲まされたけど、一口だけだったので酔いつぶれることはなかった。が、熱気にやられそう……。そう思い外で涼んでいた。



「ふぅ~……、あっつ……」



 噴水のある受け皿の座れるところに腰を降ろす。


 冒険者の人たちと話すことは現実世界(リアル)でもあったけど、ちょろっと話す程度だった。ここまで話込みことはなかったからあのノリはちょっと驚いた。酒飲みいっきするなんて僕からするとあんまり考えられない。飲んだらつぶれちゃうし。

 アリスはものともしないで飲んでいたなぁ。あれはすごい……。素直に感心する。



「あ~しゅ~?」

「ん?」



 でろでろに酔っぱらってるアリスがふらふらとしながらグレンに肩を貸してもらいながら来る。そういえば、今日、彼が飲んだところ見てないな……。


 なんて思ってると、グレンは半分押し付けるみたいにアリスをアッシュのすぐ隣に座らせて、そのままアッシュの方に倒れるように軽く横に押す。そのままアリスはアッシュの膝の上で寝るように寝っ転がってしまった。


 ややめんどくさそうな顔をしたグレンはアッシュの方を向く。



「その酔っ払いやる。疲れた……」

「あはは、アリスに付き合ってくれてありがと」

「はぁ、別に構わん」



 今度はグレンはアリスは逆の方に座って両手を後ろに置き身体を支えながら、顔は上を向いて”はぁ……”と、ひと息つく。



「……”加具土命(カグツチ)”が使えたのはでかかったな。神格魔法が使えるかどうかは気になっていたが、問題なく行使できたな」

「そうだねぇ。しかも同じように魔力消費無しでできたんだもん。びっくりだよ」

「あれが使えるならほとんどの魔法も問題ないなく使用できる。次のクエストでもいい武器になる」

「うん。そうだね」



 自分の膝で寝息をたてているアリスの髪を撫でる。


 もしできたらと思ってした現実世界(リアル)の魔法。いいバグ見つけてよかったと思う。これがなかったら倒せないことはないけど、あの第一クエストの方は少々骨が折れていただろうから。



「にしても次のクエストはノーヒントでしないといけないんだよね。どうにかわかるかなんかいい方法ないかな……」

「あいつらもクリアしたのは初めてだと言っていたから情報のカンニングはできんだろうが、だいたい予想はつく。出されるクエストは戦闘クエストとは言っていたから、おそらく次は少数精鋭で来る可能性が高い」

「だよねぇ。数がダメなら質でしてきそうだもんね。考え的に」

「……機械的な考えであればだが、我々の力の分析やパターン化、いろいろ分析されていることも視野に入れていた方がいい。どう足掻こうも、ここはHALの世界だ。全体を把握していることも考えて動かないと嵌められかねない」

「そう、そこなんだよ……」



 ”ん~”っとアッシュは考える。


 何か今回の魔法のように、バグ、バグがあればな……。

 ……? バグ?


 《*逡ー遶ッ縺ョ蜉帙r蠑輔″邯吶℃縺セ縺吶°?》


 あ、思い出した。



「これもバグなんじゃないかな?」



 そういって自分のポケットにずっと入れていたクリスタルを取り出す。金平糖のようなトゲトゲとしたいろんな色に光る石。


 これ、最初にここに来た時にワールド外に行こうとしたらあった石。ずっと文字化けしている変わった石だけどこれ何かに役に立つかも。

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