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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第九章 HALの世界
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ラストクエスト:第一クエスト1

 翌朝の8時頃。

 本拠点となるギルドに向かうと既に避難も完了していた。彪がこちらを認識すると”お、来た来た”と言いながらアッシュたちの元へと駆け寄る。



「よ、おはよう。アッシュ」

「おはよう、彪。昨日はごめんね。終わって早々に解散して」

「いいよ、なんか準備するって聞いてたし、気にしてねぇよ。こっちもやれるだけの準備をガーナたちとしてたからさ」

「そっか。あと朝のあれは見たかい?」

「あぁ見た。あん時と同じクエストだ。第一クエスト、まだ俺らは突破したことがねぇから、これをまず突破するところからだな」

「うん、そうだね」



 早朝の6時頃に来た通知。そこには事前告知のクエストの内容が届いていた。



 ――――――――――――――――――――


 《ラストクエスト:第一クエスト・モンスター討伐》


 SからFランクのモンスター、56305体が出現いたします。

 制限時間は日没の18時。

 時間制限以内の討伐でクエストクリアとなります。


 ――――――――――――――――――――



 といった内容だ。あとは参加するのかしないのかの、YESとNOの選択が出ていた。もちろんアッシュと彪はYESを押してるため、彼らの左胸には赤い印がついている。


 それに朝にこれを見たときはやはり昨日の交渉は正解だった。前もってこのクエストを受けていた彪には聞いていたけど、守りながらではなく戦闘に集中できるだけでかなり変わってくる。

 それに戦闘可能な住人(アバター)の総人数は1000人ほどだ。その中からまともに戦えるのもそんなには多くない。出てくるモンスターによってはかなり危険だ。


 だからこそのこの魔法陣。今はユキとノア、ナギに街を囲むように防御結界の魔法陣と罠の陣を書いたものを設置してもらっている。そしてまだギルドの屋上にも誰もいないことを確認してアリスとグレンがそこにも大きな魔法陣を書いてもらっていた。


 見た人は分かるかもだけど、神聖魔法の方はあまり知られていないのでそっちの方を書いてもらっている。



「ところでよ。お前らのとこ全員参加すんの?」

「一応ね。ただアティはまだ子供だから参加はさせないつもりだったんだけど……」

「私も頑張る!」



 横から出てきたアティの左胸には赤い印がついている。これは戦闘可能な住人(アバター)の印だ。


 頭を抱えるアッシュはため息を吐いて、アティの前にかがみながら少しだけ困ったような顔をしながら言う。



「参加にしてしまったものは仕方ないけど、アティはアリスの方を守っておいてね? モンスター討伐は参加しちゃダメ。いい?」

「うん! アリスさんのこと、ちゃんと守るよ!」

「ありがと。屋上にグレンといるだろうから行っておいで」

「わかった! お父さん、いってきまーす!」

「ん、いってらっしゃい」



 ギルドの中に入っていくアティに軽く手を振る。姿が見えなくなってから、”はぁ……”とため息を吐きながら立ち上がる。そんなアッシュに彪は少し笑う。



「大変だな、お父さん」

「まったく、誰に似たんだかね。後先考えないで自分のできることをしたいとやっちゃうんだもん」

「俺、お前と知り合ったの最近だけど、お前じゃねぇの?」

「僕はちゃんと考えて動くよ」



 たまに自分の身のことは勘定に入れてない時があるだけで、基本はみんなの安全第一に動く。変に後先考えない方が危ないし。


 なんて思っていると、準備が終えたのか屋上からグレンが飛び降りてこちらに来る。



「グレン、上の方が終わった感じ?」

「あぁ。終わった。こっちの準備は終わったからあとはそっちだな」



 そう言ってグレンは彪の方を向く。



「俺の方?」

「そうだ。昨日話した内容は覚えているか? 今回のモンスター討伐の場合の動き」

「あぁ、それか。もちろんだ。FランクからDランクはギルドの周辺の守り。CランクからSランクは5人一組で動くこと。もうみんなに伝えてしてるぜ」

「ん、ならいい」

「つか俺は前線行かなくていいのか? しかも最前線にお前ら二人だけってのも気になるけど」



 今回クエスト内容もわかっているため、前もって罠も作っており、何より、僕とグレンが一番最前線で行くことになっている。その後ろにギルドのメンバーの人たちも控えるようにしてもらっていた。

 まぁ、これにしたのは正直、魔法の行使の際に邪魔にならないようにするためっていうのと、一掃するためでもある。



「最初はお前の話通りなら大量のモンスターが波のように来るんだろ?」

「俺の覚えてる範囲だけどな。開始直後に街の外に雷みたいなもんが街を囲むように出てそこからまるでモンスターブレイクのように大量発生していたからよ。あれのせいで俺らもすぐ壊滅状態になっちまったし……」

「……今回はそれも起こることも前提で動く。だから開始してもまだ動くな。モンスターが来たことを認識、もしくは私とアッシュの合図まではその場に待機していてくれ。巻き添えになりたいなら構わんがな」



 そう言いながらグレンは街の外に向けて歩いていく。そんなグレンを彪はムムッとしながらアッシュに耳打ちするようにボソッと呟く。



「なぁ、あいつのこと、昨日は聞けなかったけど、んだよ、偉そうにしてさ」

「グレンのことかい? あぁ見えて君らに危害がいかないように結構考えてくれてるんだよ。今回の作戦も大半は彼が考えたものがほとんどだからさ」

「え、そうなのか?」

「うん。なるべく街にも被害が来ないように最善の策と行動で動こうとしてくれてる。だからそこは信用してあげてよ」

「あんま釈然としねぇけど……。どちらにしろ俺らはお前らに任せたんだ。指示には従うよ」

「あはは、ありがと」

「…………ところであいつのステータスってどんなんか知ってる?」

「ん? グレンのステータス?」

「うん」

「あ~……まぁ、強いってだけ伝えとくよ」

「え、お前より強い?」

「どうかなぁ~」



 あまり他人にステータスを開示するのもよくない。ちなみにグレンは全部オールMAXになっていた。スキルポイントの振り分けるとそうなったらしい。レベル30も行かずに早々に最強だ。


 元の強さを考えると間違ってはないけど、そう考えると僕もまだまだ弱い。



「さて、僕も配置につこうかな。彪、ここは頼んだよ。アリスたちをよろしく」

「おうよ! 任せとけ!」



 二かッと笑う彪にここを任せてグレンの後を追う。アリスには今回大将としていてもらうため、ギルドの屋上でリリィとアティとともにいてもらうことになってる。


 最前線である街の入り口でグレンが立って、その近くにどうにか街に設置の終わったノアたちと話しをしているようだ。



「とりあえず設置は終わったぜ。俺らも中でいいのか?」

「あぁ。もし街に入ってきたら応戦してくれ。なるべく入らないようにはする」

「お前のこの結界魔法を通り越していくやつらとかいない気がするけどな」

「念のためだ」

「んじゃ、俺らも配置につこうぜ、ユキ」

「えぇ、わかりました」



 ユキとノアは街の東と西側の外壁に向かって走っていく。この南のみ正門があるが念のため、西と東側も見てもらう。それぞれ連絡も取れるようにパーティー通話も繋がったままだから何かあればすぐに連絡が取れるようにしている。


 残ってるグレンとアッシュ、ナギは三人で最後の確認をすることに。



「じゃ、オレは上で援護射撃したらえぇんやな」

「そうだ。魔法で薙ぎ払うが数が数なだけに取りこぼしも可能性もある。お前なら遠距離でも打ち抜けるだろ」

「あったりまえや! まかせてや!」



 任されてるのが嬉しいのか、正門の外壁の方へ喜んで向かうナギにアッシュは少しクスリと笑い、グレンと並ぶように地平線の先を見る。



「どうした?」

「いや、なんだかんだで君もナギも仲いいなって。ちょっと羨ましいよ」

「昨日も言ったがあいつはついてきてるだけだ。素直に聞いている間はまだいい。それにあいつのせいでアビスに会わせた時とか、こっちがひやひやしたんだぞ。しかも私の部屋に入れる羽目にもなって最悪だ……」

「あははっ! なんだ、やっぱり仲いいじゃないか」

「どこがだ……」



 舌打ちをするグレンにアッシュは楽しそうに笑う。


 そんなやり取りをしていると何処からかビィィィッというアラームのような音とともに、ブリキの声と通知が表示される。



 《ラストクエスト:第一クエスト、始動、開始いたします》



 その声が終わると同時に東から西にかけて強い光が落ちていき、ドォォォンッと爆音が鳴り響く。


 視界が晴れるとそこには地平線を埋め尽くすほどの黒く蠢くモンスターの群れ。

 情報通り、かなりの数がいるが、そんな群れを見てもアッシュもグレンも余裕な顔は崩れない。むしろどこか楽しそうな顔をしている気がする。


 地響きが鳴っているのも気にもとめることなく、アッシュは続ける。



「今回はさ、こんな形だけど、また君と並んで戦えるの、本当に嬉しいんだ」

「……急になんだ?」

「ほら、前は、僕、あんま戦えなかったし、あの日以降、レイチェルやアリスたちに会う前でもずっと疎遠になっちゃたからさ」

「そうだな、主様(マスター)が亡くなってからは、会うことはあっても一緒に戦うなんてことはなくなったからな」



 互いにそう言いあいながら、モンスターの群れに向けてグレンは左手を、アッシュは右手を前に出す。


 主様(マスター)が亡くなって、あの地獄のようなところを飛び出したとき、グレンは深淵の神子の元へ残り、僕は、逃げるように別の国へ行って、そしてレイチェルやアリスたちと会った。

 相棒と呼んでいた君を一人にしてしまったのは僕だ。共に戦う機会を奪ったのも。共に、苦しみから抗うのもやめてしまったのも。

 それでも君はこうして今も僕を守ろうとしてくれてるのも、僕の大事なものも一緒に守ろうとしてくれてる。


 隣にいるグレンはあの時と変わらず優しく笑う。



「私も、お前と並んでこうして戦えるのは嬉しく思う」

「っ! あははっ それはよかった!」



 二人の守護者は互いに笑う。嗚呼、本当に今、大変な時だとわかっていても心が躍る。


 遠くにいたモンスターの群れはだんだんと街に近づいてくる。大きな津波のようにくるモンスターの群れには目もくれず、手元にある魔法陣を握りながら、詠唱する。



「 「 ”原初の炎よ、我を仇なす者を灰へと還せ――神格・殲滅魔法:加具土命(カグツチ)” 」 」



 詠唱に応えるように握られた魔法陣が輝きを増し、二人の前に巨大な魔法陣が現れる。


 そこから炎の神が、顕現された。

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