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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第九章 HALの世界
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ラストクエスト:プロローグ

 ラストクエストの受諾のため、彪たちやギルドのメンバーが走り回って説得してくれたおかげでどうにかできるようになった。


 その間に、アッシュたちはもしものために何パターンかの作戦を練って挑むことにした。


 そして、再度、案内人のもとへと向かう。


 向かったのはアッシュとアリス、アティ、そしてグレンだ。エドワードとユキ、ノア、ナギには別件で頼み事をしており、今はこの場にいない。


 彪と共にアッシュたちは、相変わらず、入国してきたヒトたちの案内をしている。


 第一関門はまずはここだ。ここでの行動と決断で、今後が大きく変わっていく。これを乗り切れるなら、だいぶ動きやすくなってくるからだ。


 ブリキの前に彪が立ち、一度、不安そうな顔でアッシュの方を向く。



「大丈夫。任せて」

「……っ わかった。……おい、案内人!」

「おや、皆様、いかがいたしましたか?」

「……あ、”アクセスコード:9999、ラストクエストの受諾を希望する”」



 そういうと目の前のブリキはカタカタと音を立てて、彪の方を見ながら言葉を放つ。



「”アクセスコード:9999、認証、受理いたします”。全住人(アバター)の参加となりますが、よろしいですか?」

「もちろん、構わない」

「かしこまりました。一時入国を中断。……全システム切り替え完了。……では、ラストクエストの説明を開始いたします。全ての住人(アバター)の皆様、ご確認をお願い致します」



 ブリキの声に合わせて、空を埋め尽くすほどの通知のウィンドウが現れる。その通知のウィンドウはそれぞれの住人(アバター)の姿のモニターのように変わった。


 そして、唯一の自分の目の前にあるウィンドウから文字が現れ、ブリキの声で再生される。



 《改めまして、住人(アバター)の皆様、いつもHALの世界をお楽しみいただき誠にありがとうございます。今回、皆様の同意の上のもと、全住人(アバター)参加によるラストクエストとなります》



 次に画面には注意事項が現れる。彪と話していた通り、今回のクエスト中の死亡はアバターロストによる完全な死。再復活ができないこと。事前に知らされてるとはいえ、やはりみんな怖いのだろう。ウィンドウ越しに皆、不安な様子だった。



 《続きまして、このクエストの流れになります。このクエストでは三つの戦闘クエストを全てクリアすることです。そしてステージはこのHALの世界全てとなります。ただし、住居、ギルドなどの建物に関してはプログラムにより、被害が出ないようになっております。屋外判定となるベランダや屋上は対象外なのでご了承くださいませ。また、クエスト中のギルド内のみ出入り可能ですが長時間の滞在は失格としますのでご注意ください》



 その内容にアッシュが手を上げる。



「一応聞くけど、いいかな?」

 《はい、どうぞ》



 上空のモニターの一面にアッシュの顔が映る。わざわざすべての画面に映さなくてもと思いつつ、アッシュは質問をブリキに問う。



「二つあるんだ。一つは建物の中にいたら安全ってことなのはわかるけどさ、ずっと入れないのは、いささか不公平だと思うんだ。だって、あくまでもこれはクエスト。戦えない、非戦闘員の住人(アバター)の人たちもいるだろうし、彼らは建物に被害が出ないなら、そこにいることしかできないと思うんだ。モンスターに襲われるクエストのことも考えて、非戦闘員の住人(アバター)は被害が出ないようにすることはできないのかい? 例えばクエストの失敗があったときに、この世界で遊ぶ人がいなくなって、君たちHALはそれでいいのかなって思ってさ」

 《なるほど。それは一理あります》



 そう、これが第一関門。これはある意味では交渉だ。

 なるべく守る者を確実に守れるようにするための提案。聞いた限りだと、戦闘可能な住人(アバター)と非戦闘員の住人(アバター)の比率はだいたい3:7。クエストの難易度もわからないのに守りつつ、クエストのクリアを目指すのは厳しくなってくる。確実にできるようにしないといけないし、クエスト失敗にする気はないが、こっちのデメリットをカバーしつつ、相手のメリットも交渉に持ち込む。


 それにHALの目的は明確ではないにしろ、今のところ彼らがしてるのは、この世界に引き込んで住人していこうとしている。だから、住人をなるべく減らいたくないはず。じゃなければ抵抗の強い強者を狙って殺害し、クエスト続行不可能まで持ち込まないはずだ。


 考えたブリキは口を開く。



 《いいでしょう。では、非戦闘員の住人(アバター)の方々に関しては、建物の中への長時間の滞在の時間制限を免除いたします。ただし、範囲を限定させていただきます。先ほどの建物には被害が出ないようになるとお伝えしましたが、被害が出ないのはギルドの建物のみ。判断しやすく非戦闘員の住人(アバター)の方々には青い印、戦闘可能なの住人(アバター)の方々には赤の印をお付けさせていただきます。なので青い印のついた非戦闘員の住人(アバター)の方々はギルドの建物の中にいていただくようにお願い致します》

「そう、ありがとう。それなら安心だよ」



 その回答に非戦闘員の住人(アバター)の人たちは安堵する。これで守りは一か所に絞れるから動きやすくなる。



 《して、もう一つの質問もお聞きいたしましょう》

「そうだね。もう一つは失格のところかな。これは失格になった場合はどうなるんだい?」



 これは時間制限は戦闘可能な住人(アバター)の場合のみのところになったけど、失格になるということはどういうことかわからない。もし負傷して動けない場合もなくはない。その時はどうしても治療のためにいないといけないことも考えてだ。



 《失格となった場合は死亡と同じ、アバターロストとなります》

「……失格になりそうな警告とかも通知はされるかい?」

 《ございます。クエスト中に安全地帯である建物、今回はギルドのみとなりますが、この中に戦闘参加となってる住人(アバター)が滞在を30分超えると通知されるようになります。1時間超えますとその時点でアバターロストとさせていただきます》

「なるほどね。それは負傷してても関係なく?」

 《さようでございます》

「わかった。把握したよ」



 ここの時間制限はそれぞれ時間を気にしておけばよさそうだ。負傷しても一旦出てから再度中で待機時間がリセットされるかもか確認もしてみよう。下手に聞いてそれができなくされても困るからここは懸賞になるな。


 再度上空のモニターが元に戻る。



 《では、引き続き、説明を再開いたします。クエストについてです。先程お伝えした三つの戦闘クエストの詳細は一つずつ開示されます。また制限時間があり、日中の時間である朝9時から18時の間にクリアを目指していただくようにお願い致します。夜に関してはクエスト一時中断となり、開始の翌朝まではクエストのクールタイムとなっております。クエストが再び再開されるのも先ほどお伝えした時間からとなります》



 夜は安全な時間帯ということだろうけど、油断はできない。



 《それでは以上ふまえて説明は終了いたします。第一クエスト開始は明日の9時からとなります。それでは皆様、ご武運を》



 そして説明の終えたブリキは一礼をして画面から消えていく。


 隣にいた彪は脱力するようにその場に座り込む。



「マジかよ……。あの提案、向こうに通じるとは思わなかったぜ……」



 彼が言ってるのは非戦闘員の件だ。これは通じるかどうかのイチかバチかではあった。それによって今後の動きも変わってくる。HALがもしこれが却下されたときは現実世界の防御魔法でどうにかしようかと思ったくらいだ。


 戦えない彼らの安全が保障できたのは一番大きいかもしれない。その分戦いに集中できる。


 アッシュは両手を合わせるように、パンッと叩く。



「さて、明日の戦闘に向けて下準備だね。グレン、家に戻ってあれの準備をしようか。あとアリスとアティにも手伝ってもらおうかな」

「そうだな。あれの作業はあいつらだけでは時間が足りん」

「私、何したらいいの?」



 HALの説明中、アリスと一緒にいたアティは小走りで父親であるアッシュの元に向かう。来たアティを抱きかかえて持ち上げる。



「そうだね。お父さんたちの秘密兵器かな。数が数だから少しズルするけど」

「?」



 理解出来てないアティは首を傾げる。そんなアティを置いておき、彪たちに一旦解散を伝えて、アッシュはまだ借りたままの家に向かう。


 明日の戦いに、絶対に現実世界の魔法は必須だ。術式を書く暇がない可能性もあったから魔法陣を書いた紙を大量に準備する必要があった。

 けど、もし、彪が話していた例の件。強者を狙う狐の暗殺者。それが誰なのかも、もしくはHALが準備したここには存在しないアバターなのかも不明だ。


 ギリギリまでは僕たちのメンバー以外では使えることを勘づかれてはいけない。だから僕らだけで作る必要がある。



「さ、アリスも手伝ってね」

「もっちろんよ! アティちゃんも頑張るわよォー!」

「は、はい! よく分からないですが、頑張ります!」



 拳を作って頑張る!という意気込みをアティは見せるがこれは一時間後には後悔に変わることをアティは知らない。


 なんなら今この場に居ないエドワードたちが今ひたすら書いている最中だ。


 徹夜確定な作業だが、明日の勝利のため、内職に近い作業をアッシュたちも帰ってやることとなった。



 ――――――――――――――――――――



 そして、ひたすら書いて、深夜2時。


 アッシュたちが帰ってきてから、ずっと書いていたユキとノア、ナギのしんどい、いや、もう死にかけたような顔をしていたのを見兼ねて、グレンがコピーとペーストする魔法を教えてくれたため、かなりの数の魔法陣の紙が出来た。


 けど、これで足りるのか少々心配ではある。


 何がともあれ、即席の魔法陣の準備も出来たことだ。


 準備中に何人か限界が先にきて、寝てしまっている。

 今、起きているのはアッシュにグレン、エドワードとノアとユキ、ナギの6人だ。


 机の上で突っ伏してるノアは腕をプルプルとさせながら呟く。



「俺、もう、腕、動かねぇ……」

「ぼ、僕も、です……」

「奇遇やなぁ……、オレもや……」

「あははっ 三人ともお疲れ様。よく頑張ったよ」



 途中とはいえ、アッシュもかなりの数の魔法陣を書いていたはずなのにケロッとしている。けど、他にケロッとしてるのはエドワードとグレンもだった。

 いや、グレンは分かる。それでも最初からずっといているはずのエドワードも割と平気そうなのは驚きだ。


 ノアはエドワードの方を見ながら書いた魔法陣をペラペラさせる。



「お前……、なんで終わったあとも平気そうなんだよ……」

「え、あぁ、書くのはそんなに嫌いでは無いからな。よく手紙を書いたりもしていたし、魔法陣も書くのは多い方だからな」

「マジかよ……。あ〜、俺も寝よっと……。明日大変だって言ってたしよ……」

「そうですね……」



 ユキはノアを連れて部屋へと戻っていく。エドワードも眠たそうにして部屋へ。椅子に座っていたナギは気付けばそのまま寝てしまっていたのでアッシュが掛け布団だけナギにかける。


 そんな彼にグレンはため息を吐きながら、ソファーに座る。



「そいつ、そのまま放置してていいからな」

「グレンの相棒でしょ? 流石にそのままだと風邪ひいちゃうよ」

「相棒じゃない、ついて来てるだけの鬱陶しいやつだ。お前以外の相棒など私はいらん」

「お、その言葉は僕は嬉しいけど、ナギにも、もう少し優しくしてあげなよ」

「ふん。黙ってついて来させてるだけでも十分だろ」



 呆れながらもそっぽを向くグレンの隣にアッシュも座る。



「そういえば仕事はどうしたんだい?」

「まだだ。だが、ここで調べられることは今はもうないからな。あるとしたら現実世界の方だけだとは思う」



 何かを調べていたんだろうけど、僕には想像がつかない。彼が探してないのならないんだとは思うけど……。

 あ、そういえばなんか僕も忘れてる気が……。なんだったかな?


 首を傾げながら考えていると、グレンも眠たそうにうとうととし始める。



「もう寝る?」

「…………そうだな。明日は早い。さっさと寝て明日に備えるか」

「うん。じゃあ、また明日」

「ん」



 小さく返事をしてグレンも部屋へと戻っていく。


 明日はラストクエストの第一クエストだ。僕も早く寝て明日に備えよう。

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