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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第九章 HALの世界

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この戦闘狂どもめ!!

 翌日、グレンの提案でまずレベル上げという話になり、Bランクの依頼をこなすため、砂漠エリアへと来ていた。


 ここに出現するBランクのモンスター、ワームを倒すためだ。


 グレンの横で歩いているエドワードは、まだため息を吐いてる。



「どうした? エドワード」

「お前やアッシュは気楽でいいな。強いとそんな強い敵に対して恐怖心なんて無いだろ」

「恐怖心? そうだな……。ない訳では無いぞ。知らない敵やどう対処したらいいか、そういう敵が出た時は少し困る」

「少しはあるのか」

「当たり前だ。ま、その時は一度力押しでしてみたりはしている。有効な攻撃は後で再度、分析したり、試したりすることが私の場合は多かったな」

「なるほどな……」



 分析はすることがあるものの、したいことに対して身体が追いつかないことが多い。だから、思い通りに身体の動くことの出来るアッシュに頼むことが多かった。


 本当は自分で出来た方が一番効率がいいのは理解してる。



「どうせだ、今回のモンスター。レベル1の我々だけで倒してみるか?」

「えっ?!」

「それにアッシュのことだ。ゲームでも全員が死なないようにはするだろうから、安心して砕けに行くのも存外、楽しいかもしれんぞ」

「いや、楽しいというか、怖いだろ……。Bランクなんて一撃食らったら即死だろうが……。ところで、ワームはどんなモンスターなんだ?」



 砂漠はまだ現実の方でも行ったことがない。暑いのがアリスが苦手だからというのもあり、用事がない限り行くことはないと思う。


 ワームのことを聞くとグレンは”そうだな……”と呟く。



「簡単に言うと、大きなミミズだな。小さいものでだいたい10m、大きいものだと街をひとつ飲み込む程の大きさになるそうだ」

「……Bランクなのに、街ひとつ飲み込むえげつない魔物なのか……?」

「さぁ? ギルドの判断基準ではSにもなるそうだがな」

「…………倒せる気がしない……」



 項垂れても既に到着してしまっているものは仕方ない。それでも少しワクワクしているように見えるのは気のせいだろうか……。


 乗り気のないエドワードを他所に、先頭にいたアッシュは立ち止まると、こちらを振り向く。



「さて、ここから先に進むとエンカウントするよ。アリスとアティはとりあえず一撃与えるように魔法で当てるだけでいいよ。レベル差がかなりあるけど多分レベルアップには全然足りるから」

「わかったわ」

「私もやりたかったなぁ……」



 ムスッとする娘の頭を撫でながら今度はリリィとエドワード、そしてグレンとナギの方を向く。



「えーと、エドワードも戦闘参加でいいのかな?」

「……一応……」

「無理しなくていいからね。それに危なかったら僕が防御魔法使うからさ」

「レベル1なのに防御力あげても差程意味無くないか?」

「僕が使う防御魔法は使用者の魔力によって決まるんだから大丈夫だよ」



 そうだ。こいつ、剣士なのに魔力をカンストしてたんだった……。


 乗り気のないエドワードにグレンは彼の肩に腕を回す。



「ワームは私の代わりにエドに仕留めてもらうぞ」

「えっ! エドワードがするの?!」

「…………」

「サポートは私もする。ワームの弱点さえ一撃入れれば問題は無い」

「……まぁ、グレンがサポートしてくれるならいいかな。じゃあこれ、朝、武器屋で買ってきた短剣。攻撃力が+500されるからそれならダメージは入ると思うよ。リリィやナギには本人に合う武器をもう渡してるからよろしくね」



 渡された短剣を持ち、まだ眉間にシワを寄せたままのエドワードは大きくため息を吐く。


 覚悟を決めてやるしかないか……。



「わかった、やる。やればいいだろ……」

「よし、ならアッシュ、念の為、全員に防御魔法をかけておいてくれ。それと、アリスたちの後の初撃は私が行こう。通常時がどれくらいか試したい」

「あははっ やっぱ、そうだよねぇ。まず今がどれくらいダメージが行くか、試したいよね」



 試したい気持ちになれる、こいつらがおかしいのか、それともそう思わない私がおかしいのか。だんだん分からなくなる。


 不安と諦めのついたエドワードの連れて、グレンはリリィ、ナギを呼んで作戦会議をすることに。


 さすがにレベル差のあるモンスターに多少は不安になってるかと思ったが、全然そんな様子のない二人は目をキラキラとなぜかさせている。普段、感情の読めないリリィまでそんな顔なのでエドワードはだんだんと頭が痛くなってるのか、”ぅあ”ぁ”~、もう~……!”、とやや半ギレになっていた。


 そんなエドワードを無視してグレンは作戦を話す。



「さて、レベル1の我々でまず狙うのはワームの弱点の隙間だ」

「弱点の隙間?」

「あぁ、魔物にはそれぞれ弱点となる箇所がある。スライムなら核、ドラゴンなら逆鱗、そして今回のワームには見た目はミミズのようにロープのような長い身体だが、筋肉の層に分かれてる。頭から数えて四段目と五段目、それと七段目と八段目、十段目と十一段目の三か所に間にわずかに一か所ずつ隙間がある。そこに弱点があるからそこを一突きすれば子供でも一撃で仕留められる。そのためには三人で同時に仕留めることになる」

「? そのくらいなら、そんなに手こずるとは思えない。なんでBランク扱いだ?」

「ワームは巨体な上に弱点は腹側。ひっくり返さないと見えん。あとはタイミングがずれると即再生されて厄介だ」



 リリィの質問にグレンは手のひらを見せてひっくり返すような仕草で説明をしてくれる。わかりやすいがそのひっくり返すのはいったいどうやるのだろうか……。


 そう思っているとアッシュがにっこりと笑いながら言う。



「もし上に打ち上げないといけないなら、僕が殴り飛ばしてあげるから任せて」

「そうだな。いろいろしてみてダメなら、お前にワームを上にぶん投げてもらおう」

「おぉ~」「おぉ~」



 リリィとナギは手を叩きながらそう言うが”おぉ~”じゃないんだよ。巨体だからひっくり返すのもできないんだろうが。なんでできる前提なんだ。馬鹿かよ。いや、できるから言ってるんだろうけど、もうツッコむのもめんどくさい。


 やけになりつつあるエドワードの方にアッシュは心配そうにみていたが、今、何か言ってもちょっと怒られそうになるかだろうから、そっとしておくことに。


 やる気満々なグレンが初心者の大剣を構えて先に前に出る。


 その様子を見送るアッシュは自身の腰に手を置く。



「にしても、グレンがあんなにやる気なのも珍しいね」

「あー、たぶんやけどな。グレンはん、あんさんらと別れてからずっっっっと不機嫌やったんよ」

「え、そうなの?」

「いつものように動かない身体に、いつものように魔法も使えなくてイライラしとったんや。せやからレベルアップで解消されるならしたいっていうのと、モンスターでストレス解消も考えとんやろ」

「あ、あはは、そういうこと」



 グレンは仕事に対してどんなものでも責任を持ってすることが多いようで、普段通りに動けないことはこの上なく耐え難いのだろう。しかも、前にナギにも口酸っぱく、”絶対に仕事の邪魔をするな”、と言うほどだ。それなのに今は思い通りに動けないし、ある意味では完璧主義なのかもしれない。


 軽々と大剣を片手で持ちながら、グレンはフィールドに入っていく。


 エンカウントしたかのように視界にはワームの名が現れ、砂漠が揺れる。大きな揺れとともにワームが姿を現すとそこにはまるで聳え立つ塔のような巨大なワーム。


 入っていったグレンに続いてアリスたちも入っていく。一瞬、思ったよりも大きいワームに二人は怯むが、彼女たちから先制で魔法で攻撃をする。フィールドに入ってみているアッシュの後ろに二人は隠れていく。


 魔法で気づいたワームはこちらに向けて咆哮を放つ。


 それに臆さないグレンは歩きから、だんだん走っていき、ワームに斬りかかる。


 ガキンッ!


 弾くような金属音。そもそもワームの防御力と今のグレンの攻撃力の差で押し負けてしまい、グレンが振るう大剣を弾き返えされた。


 だが、グレンは、なにやら楽しそうにニヤリと笑う。



「ははっ! 弾かれた……! あははっ!! いいな! レベルの差でこうも変わるのか?!」



 ザザザッと止まりながらも、まだ楽しそうなグレンは剣を砂漠に突き刺す。左手につけている手袋を外し、そこに何やら魔法陣を書く。その間にリリィとナギが出る。


 リリィはアッシュから渡されたミスリルでできた槍を片手に高く飛び上がる。数十m飛んだところで槍をググッと石突の部分を強く掴み、ワームの脳天に目掛けて振り下ろす。ガッとダメージが入ったようだが今一つのようだ。リリィは舌打ちしながら、ガンガンと振り下ろしていく。


 ナギはグレンの近くまで走っていき、アッシュから受け取ってるスナイパーライフルを構える。


 パパンッと連射してワームの頭の方を撃つが全然効果がない



「ホンマ、ダメージ、入らへんな。銃やけんこっちの攻撃力関係ないはずなんやけどな……」

「それでいい。気を逸らしておけ」



 そう言ってグレンは今度は武器も持たずに突っ込んでいく。


 今度は横から魔法を放つ。



「”炎魔法:凄絶なる灰の矛(グレイダスランス)”!!」



 グレンの唱えた魔法は、まるで炎の槍のようなものが無数に顕現する。一斉にワームに向けて放たれ、ドドドッという音とともに刺さり、そこから炎が燃え広がっていく。ワームはその攻撃に対して呻き声のようなビィィィィィィッ!!と音を出しながら巨大な身体でのたうち回る。


 振り落とされたリリィは一旦グレンたちのところまで降りながら、グレンに声をかける。



「どうする?」

「ふむ。ある程度、威力もわかった。次、仕留める。リリィ、ナギは高く飛べるか?」

「さっきと同じくらいまでのジャンプなら」

「オレもそんくらいの高さなら」

「それでは少し足りんな。アッシュ、エアステップをこいつらにかけてさらに高く上がるようにしてあげてくれ」

「おっけー」



 エアステップはこの世界のジャンプ力を三倍にする魔法。いわゆる補助魔法だ。指示を出しながら、グレンは今度は別の魔法陣を手に書く。書きながらアッシュにもう一つ指示を出す。



「あと、今からワームを無重力にするからお前はあれを宙に蹴り上げろ」

「ん、任せて」

「さて、最後にエドワード」

「あ、はい。任せるから、ほどほどにしてくれ」



 諦めた目でそういうとグレンはにっこりと笑いながらエドワードを腰に抱えて、ワームに向かって走っていく。それに続いてリリィとナギも駆けてく。


 その後ろでアッシュは魔法を二人に向けて唱える。



「”エアステップ”」



 魔法の効果で、リリィとナギは体が軽くなる感覚になった。そのまま続いて、先にワームに到着したグレンはワームに足をかけながら、手はワームに向けて唱える。



「”重力魔法:無重力(ゼロ・グラビティ)”」



 ワームの身体が一瞬カッと光る。それを無視して、グレン、ナギ、リリィはワームを踏み台にしてそれぞれ高く飛び上がる。


 グレンに抱えられていたエドワードは思ったよりも高く飛んでいるため思わず”うわ……っ”と声が漏れるが、飛びあがっているグレンを見るとひどく楽しそうに見える。左右にいるリリィとナギも見ると二人も同様に楽しそうにしていた。理解し難いエドワードは苦虫を噛み潰したような顔をしながらーー



(この戦闘狂どもめ!!)



 心の中でエドワードはそう叫んだそうだ。


 四人が上空に上がったのをアッシュは確認し、”無重力(ゼロ・グラビティ)”のかかってるワームに向けて思いっきり蹴り上げる。

 ドスンッという鈍い音とともに半回転しながらワームが宙に浮く。


 くるりと腹のところが見えると、それぞれ言われた箇所を確認する。リリィは四段目と五段目を、エドワードは七段目と八段目、ナギは十段目と十一段目を目視した。確かにひし形の隙間がある。


 グレンもそれぞれ確認して叫ぶ。



「確認したな?! 穿て!!」



 それに応えるように、二人は構える。



槍術(そうじゅつ):紫電一閃!!」 「”狙撃銃(ライフル)生成:マウザー M1918”!!」



 弱点に向けて、放つ。


 エドワードは魔法以外でそんなに使える技もないのでどうしようかとあたふたしていた。



「わ、私はどうしたらいい⁈」

「その短剣を隙間に向かって投げろ」

「えぇ⁈」

「いいから、さっさとしろ」

「~~~っ!! どうなっても知らんからな!!」



 半泣きのエドワードはブンッと短剣を投げる。隙間の方に無事サクッと刺さるが浅い。だが、そこにグレンが追撃のようにエドワードを抱えたまま、ドスンッと鈍い音を立てながら、その短剣に全体重を乗せるように踏みつける。重力と二人分の体重が短剣へとしかかり、弱点を貫いた。


 ビィィィィィィッとおたげびをあげながら、ワームは、アイテムと硬貨を残して飛散する。


 ワームを倒したことで5人にレベルアップの通知が現れた。


 スタッと着地したグレンは、”ふむ”、と言いながらエドワードを降ろしつつ、通知を確認した。



「上がったな。にしてもこのレベルアップの通知やかましいな」

「設定で通知オフにできるよ」

「そうか」



 それを聞いてグレンは無駄そうな通知はすべてオフに変える。


 変えているとリリィとナギも楽しそうに戻ってきた。



「あんな大きな魔物、初めて倒した……!」

「お、そうなんや。にしてもマジで術式とかあれば出せるんやな。銃も生成できてよかったわぁ。いちいち買うの面倒やし、相棒も出せるからラッキーや」

「二人ともいい一撃だったぞ。よくやった」

「うん」「せやろ」



 グレンに褒められて自信満々に返事をする二人。


 一方でエドワードは結構満身創痍な様子で座り込んでいた。さすがに心配になったアッシュはエドワードの隣に行って、同じようにしゃがむ。



「大丈夫?」

「この戦闘狂どもに、付き合いきれない……」

「あ、あはは、君、普段なら補助の方に回るもんね……。お疲れ様」



慰めるアッシュだが、それも慰めのうちに入らないと言わんばかりに両手を地面につけながら首をガクッとして項垂れる。


そんな座ったままのエドワードの横にグレンはニヤニヤとしながら寄ってくる。”なんだ?”と思うものの声に出さず、露骨に嫌な顔をしながらそちらを向く。



「どうだ? 楽しかったか?」

「全然、楽しく、ない……」

「ふむ、そうか。それは残念だ」

「次やるなら少しは私が役に立てる範囲でしてくれ。結果的にお前の一撃なんだからな……」

「そうか、なら今度はお前ごと投げるようにしよう」

「やめろ。冗談抜きでやめてくれ」



”はははっ 冗談だ”、と笑うグレンにそんな冗談言われてる気がしない。絶対否定しなかったらやる気だっただろ。こいつ……。


 深いため息を吐くエドワードだったが、無事に全員レベルを上げることができた。経験値も分けられるようでみんな平均20くらいまでは上がったそうだ。目標のレベル5以上は上がったから良しとしよう。

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