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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第九章 HALの世界

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HALの世界4

 アッシュと別れた彪はギルドに戻っていた。そこにいる受付嬢のところまで行くと、ドカッと肘を置きながら少しムスッとした顔で話しかける。



「おい、ガーナ」

「あら、彪。お帰り」

「今日、誰か初心者の冒険者にCランクの依頼受けさせただろ」

「初心者の人? あぁ、アッシュさんのこと? 私が受けたわよ」

「お前が受け付けたんかい」

「うん」



 アッシュと話しをしていた受付の人、ガーナと呼ばれる女性は持っていた書類を片付けながら彪の方を向く。彪が肩を落としていると、頬杖をついてガーナは首をかしげる。



「あら、その人がどうしたの?」

「いや、街の入り口でさ、レベルもまだ1なのに初期装備のまま、行こうとしてたんだよ」

「え、ほんと?」

「ほんと、ほんと。だから声かけてしばらく同行してたんだけどさ、レベル3のスライムを初期装備で一撃で倒すし、そのままそいつグリフォン倒しに行ってんだよ」

「……私てっきり、誰かと一緒に行って、Fランクから行くんだと思ってたんだけど……。いきなりグリフォンいったの⁈ え、どうなったの? 大丈夫だった?」

「大丈夫だったってどころじゃねぇよ」



 彪は見たものをガーナに伝えると、少し顔が険しくなる。



「え、それってチーター? あの人そういうのする人には見えないんだけど……」

「そう思ったんだよな。けど確認したら別にチート使ってるようにも見えなかったし。ステータス見せてもらえやよかったかな……」

「んー、でもあの人、外ではSランクの冒険者だったのよね」

「Sランクの⁈ ガチ⁈」

「ガチガチ。聞いた感じだといろいろ検証したいタイプみたいだし、もしかしたら、スライムの弱点あったように、私たちが知らないグリフォンにも一撃で仕留める弱点とかあったのかもね」

「あー、かもな。てか、Sランクかぁ。だから初心者なのにCランクの依頼うけてたんか……」



 妙に納得したように、彼は頭を掻きながら顔を上げる。


 そうか、Sランクなら、もしかしたら……。それにあの考え方するようなあいつなら、やってくれそうかも。



「……どうしたの? 彪」

「もしかしたらよ、あいつならやってくれそうじゃね?」

「……無理よ。誰がしても同じだったんだから。期待するだけ無駄なのよ。諦めなさい」

「…………そっか」

「それより、あんた仕事、残ってんだから早くしなさいよ。ギルマスでしょ? サボられたら困るわ」

「サボってねぇよ」



 そう言って彪は、ギルドの奥の部屋まで戻っていく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そのころ、アリスたちはアッシュの戻りを噴水のある広場で待っていた。


 暇そうにアッシュの帰りを待っていたアリスは足をパタパタさせていると、遠くから待ち人である彼が走ってくる。パァッとアリスの顔も明るくなり、そっちに駆け寄って抱き着きに行った。グルンッと一回りしながら止まる。



「おっとと、アリス、ただいま」

「おっかえり! 遅かったわね」

「ごめんよ。いろいろ試してたら遅くなっちゃった」



 頬を掻きながらアッシュは彼女の後にこちらに来たエドワードと目が合う。エドワードの手元には何冊か本が握られていた。


 まだ読み足りなくて借りてきている分かな?



「外はどうだった?」

「結構広大だったね。ステータスの敏捷をMAXにしても2時間かかったから」

「え、お前。もうステータスMAXにしたのか?」

「したよー。レベルアップ特典のスキルポイントで。三つくらいMAXにしたんだ」

「確か元の身体の身体能力に合わせてポイントボーナスあるっていうやつですよね?」



 あとから来たユキが首を傾げながらそう言われたのでアッシュは頷くと、一緒に行動していたノアの方を見ながら、再度アッシュの方をユキは見る。



「ちなみにスキルポイントいくつありました? 僕たちも今レベル7まで上げてスキルポイントも受け取って振り分けてはいるんですが……」

「え、たしか……26000ポイントだったかな。それくらいだったと思うけど」

「はぁ⁈ 20000⁈ マジで⁈」

「え、あ、うん」

「まじかよ……」



 アッシュの回答にノアは、うげぇっと嫌な顔をする。身体能力に合わせてだし、基準はわからないけど、そんなものだと思っていた。ノアたちの反応を見るにそういうわけではなさそうだ。


 不思議そうな顔をしているエドワードも首を傾げて、隣にいたユキの方を見る。



「ユキたちはどれくらいポイントがあったんだ?」

「僕たちはそんなに多くなくて、僕は7000程度だったんですよ」

「俺は4000……。お前、現実でもゲームでも規格外だな」

「んー、そうかな。あんまレベルとかのあの数値期待しない方がいいよ」

「? どういうことだ?」



 疑問に思うエドワードにアッシュは”あはは”と笑いながら、アティを抱きかかえながら一度アリスたちの方を向く。



「一旦、家に行こうか。ここは人が多いし」

「え、家?」

「うん、ギルドの報酬を受け取って借家借りたんだ。宿屋より自由にできる方がいいかなって思って。どうせ、ここの通貨もここでしか使えないからさ」

「まぁ確かに」



 現実ではないここで稼いでも戻った際は、そもそも仮想世界の通貨が手元に残る訳でもないと思う。依頼は受けるのも本当に暇つぶし程度の気持ちだ。ここで住むなら話は変わるだろうけど、アッシュたちはそうではない。この国を出て次の街にいかにといけないからだ。


 彼の案内で少し街外れにある、少し大きめの家に到着した。少し古そうな感じはしたが中は全然新築のようなデザイン。これもある意味ではゲームならではなんだろうか。


 到着してからアリスとアティは二人とも目を輝かせながら、家の中に入っていく。人数分の部屋もあるので結構いいところだと思う。


そしてこの世界にグレンたちもいたので一応チャットで呼んでおいたおかげか、到着して少ししたところで彼も来た。



「グレンも忙しいのにごめんね。一応言っておいた方がいいかと思って呼んじゃった」

「いや、大丈夫だ。こちらもまだ難航していたからな。何かお前の情報で動きやすくなるなら、こちらとしても楽になる」

「役に立つとは思うよ。もしかしたら知ってそうな気はするけどさ」



 部屋の一番広い広間へと全員が集まったところで、アッシュは今回外に出た時のことも共有したが最後のクリスタルのことは話さなかった。少しあれは不確定要素だし、今は特別必要な情報でもないからだ。


 内容を聞いたグレンは小さく頷く。



「なるほどな。現実ではないと思っていたから、魔法は使ってなかったがここでも使えるのか」

「一応ね。ただ、使えるのは条件があるよ。一つは術式そのものを理解してるもの。二つ目は僕やグレンがよくやる無詠唱や省略詠唱はできない。術式や魔法陣が必須。三つ目はこれはバグと呼ばれる要素に当たる可能性があるから、ここの人たちにばれないようにしないといけない。ってところかな」

「ふむ。お前の炎はここでは使えるのか?」

「うぅん、使えない。多分、扱いとしては無詠唱なんじゃないかな」



 彪と別れた後、一人でいろいろ試しながらした結果だ。でも、魔力消費無しで魔法が行使ができるのはありがたい。


 考えながら聞いていたグレンが再度、口を開く。



「ふむ。アッシュ、明日少し時間もらえるか?」

「いいよ」

「即決な回答だな」

「君のお願いに対して断ることはないよ。なんだい?」

「レベル上げに付き合って欲しい。ここの数値のせいなのか思ったように動けないからな」

「そうなの?」

「心当たりないか? 普通なら早く動けたり壊せるものが壊せなかったりしなかったか?」



 そう言われればグリフォンの時がそうかも。武器関係なしに切り捨てられたのにここで切ろうとしたら切れなかったし、普通よりも早く感じた。


そういうところは数値に足を引っ張られてるのかもしれない。




「いいよ。とりあえず明日はみんなでレベル5まであげてみる?」

「お! みんなで行くんか?! えぇな! オレもやりたい!」



 いつもと姿の違うナギも嬉しそうにジャンプをする。仕事中とのこともあって色々と見て回ることも怒られて止められていたそうだ。



「にしてもレベル5ってすぐ上がるんか?」

「そこはね〜、僕と同じ方法使おうと思ってる」

「同じ方法?」



 ナギとエドワード共に首を傾げる。



「明日はみんなで僕とBランクの魔物を倒そう。そしたら1回で終わるからね」

「……ん? 待て、アッシュ、みんな?」



 エドワードがプルプルと震えながら、アッシュの方にゆっくり近づく。


 変わらずニコニコしているアッシュの肩を彼は掴む。



「レベル1の我々もか?」

「うん、アリスもエドワードたちもやろうか」

「私も? やるぅ!」

「ちょっと待て!!」



 慌ててアッシュの肩を思いっきりエドワードは、揺らす。ガクガクと揺れているが、レベル的にも上だからか平気な顔をしている。それでも顔面蒼白なエドワードは揺らし続けた。



「馬鹿か?! レベルアップのためとはいえBランクするか普通?! しかも現実でも、してない!!」

「一撃、軽く当てればいいらしいからあとは僕が仕留めれば経験値を受け取れるからさ」

「い、一撃って……っ」



 こいつ……。その一撃がどれだけ私たちに高難易度がわかって言ってるのか……。


 こっちの気も知れない、グレンは珍しく笑ていた。



「あっはっはっ、ハイエナ戦法か。それなら確かに、周りにとっては楽な戦法だがな……。守護者としては現実(リアル)じゃない分、今のうちに強い魔物も倒せるようになるのもいい修行だと思うがな」

「修行……!」



 グレンの言葉にリリィが反応してアッシュたちの方へ行く。普段、静かなリリィが子供のように明るく目を輝かせていた。


 なかなかないリリィの反応だが、何故かグレンと意気投合している。



「ここで強くなってもしょうもないと思ったが、現実の方にもいい影響あるのか?」

「モンスター図鑑を見ていたら現実の魔物と同じものが出ていた。なら、せめて同じレベルでもいいから余裕で倒せるようになればいい動きの修行にもなるんじゃないか?」

「やる!」

「やるじゃない! やるじゃないぞ?!」



 叫ぶエドワードを他所に、既に行く雰囲気の流れにエドワードはだんだん諦めて項垂れる。


 その様子にユキは少し気の毒に思う。



「ま、まぁ、ほら、アッシュもいるんですから。大丈夫ですよ」

「……絶対に、こいつら話を絶対に聞かなくなるの、どうにかして欲しい……」



 もう、いいや。こいつらが話聞かないのは本当に今更だし、リリィもここまでなるとこっちの方の声なんか知らんぷりだ。レベルアップ上げくらいならどうも面倒事にはならないだろうし。


 明日、筋肉痛とかにならなければいいや。

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