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とある異世界の黙示録 -蒼い守護者の物語-  作者: 誠珠。
第ニ章 クロノス騎士団

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騎士団の半神1

 森を抜けてさらに二日歩いてようやく目的地であるクロノス騎士団へ辿り着いた。

 遠くから見ると街の奥にある騎士団の建物らしきものがあった。それはかなり大きい。近付けば20階以上あるのだろうか。教会のようでもある。


 街に入り、騎士団の建物の前まで着いたが、近寄ればさらに高さがよく分かる。

 アッシュは見上げながら、呟く。



「へー、アリス、かなりデカイね」

「そうでしょ!にしても、出てくるかしら」

「あなたが来るのですから、ちゃんと出てきますよ」



 建物の正門から出てきたのは薄灰色の髪に金と紫の瞳。長い髪を肩から流れていた。白と黒で統一された制服を身にまとったその姿は綺麗な女性?だと思う。


 思わずアッシュが”女の人?”というと、クスリとその人は笑った。



「いいえ、私は男です。ただしくは女性でも男性でもございませんよ。それにしても見ない間に新しい仲間が増えたのですね」

「えへへっ そうでしょ!みんな自慢の仲間よ!」

「ふふふ、エドワード君もお久しぶりです」

「あぁ、お前は身体の調子はどうだ?」

「大丈夫です。たまにきつくはなりますが、以前アリス君が持ってきてくれた薬のおかげで助かってます。むしろあなたの方が心配です」

「そうか」



 気付けばその人の後ろに子供が何人かいることに気づいた、怯えながらこちらを覗く。その子供の頭を撫でる。



「あぁ、そうだ。遅れてしまいましたね。私はルーファス。ルーファス・クロノスです。アリス君御一行、我が騎士団へご招待致します」

「えぇ、よろしく。あ、そうそう。みんな、ルーファスはね、騎士団の中ではちょー強いお偉いさんなのよ!」



 まるで自分の事のように褒めるアリスは楽しそうに笑う。そしてそのままアリスはルーファスの近くまで行くと、肩に触れようとして、不意に避ける。


 触れる対象がいなくなって転けそうになった。


 その姿を見てアッシュの目が少し睨むような視線に変わる。



「ちょ!アリス君……、私が女性の方触れられないこと忘れてないですか……?」

「むふふ!なーに言ってんのよ、わざとよ。わ・ざ・と!」

「いや、本当に勘弁してください……」



 困った顔をしようとすると近くにいた子供がアリスに飛びかかる。その顔はどうやらぷくぅっ!と頬を膨らませていた。

 何人かは守るようにアリスとルーファスの間に入る。



「せんせーをいじめちゃだめ!」

「あらあらぁ〜、小さな騎士達に何ができようかぁ〜!」



 両手をワキワキさせながら子供達と牽制させる姿は少々大人気ない。

 参加するようにリリィも向かうが左手には何故かノアも掴んで一緒に混じる。



「俺まで連れてくんじゃねぇ?!」

「混ざれ、子供同士で」

「おい待て!俺は子供じゃねぇぇぇえ!!」

「の、ノアー!」



 バタバタとノアやユキまでも子供たちの所へ行ってしまった。残されたアッシュとエドワードはゆっくり階段を上がり、ルーファスの近くまで来る。



「君、女性に触れないの?それとも苦手なの?」

「苦手というよりかは、まぁ少々違いますね。彼女達には申し訳ないですが」

「ふぅん」



 理由を聞いてもまだ納得できてない様子のアッシュは再度睨むが、ルーファスは困ったような顔をするだけ。


 言い訳くらいすればいいのに、何やらやりにくい……。


 そう思いながら中に入ろうとすると、ルーファスはニコリと笑いながら言う。



「言い訳をしたらあなたは納得いたしますか?」

「え?」

「いいえ、なんでもありません。では、中で休んでてください。どうぞ」



 エントランスに招き入れてもらい、周りを見渡す。外から見ただけでもそうだったが中に入ればより一層の広さが際立つ。

 入ってすぐのところで、黒髪の短髪に黒いジャージに肩にはルーファスと同じ制服を羽織ってきた人はあくびをしながらこちらに気づき、声をかけてきた。



「おー、いたいた。ルーファス、執務室にいねぇから探したぞ。どこ行ってたんだ?」

「いえ、アリス君達が来るところが見えましてね。迎えに行っていたんですよ。ユーリ」

「あっ!ユーリじゃん!お久しぶり!」

「おー、アリスじゃん。久しぶり」



 ユーリと呼ばれた男は軽く手をあげ、返事をする。そして、アッシュの隣を歩いていた、エドワードに近づいて、肩を組む。そしてエドワードの頬をつつきながらにやにやと笑う。



「エドワードも久しぶりだなぁ。相変わらずアホアリスに振り回されてんのか?」

「残念なことにな」

「へへっ お前も苦労人だっな!?」



 ユーリの言葉を遮るかのように、ルーファスは持っていた本をユーリの頭にめがけて振り下ろす。本の背表紙の角で殴ってるためかなり痛そう。

 エドワードの肩から手を放してその場にしゃがみ込んでしまったが、ルーファスは軽いため息をこぼす。



「こら、神子に向かってアホと言ったら失礼ですよ。アリス君、あなたもエドワード君の苦労を考えたら少しはお戯れもほどほどにしてあげてくださいね」

「えー、だって面白いんだもんー」

「お、おい、ルーファス......。問答無用で本の角でぶっ叩くのは失礼じゃねえのかよ......」



 悶えるユーリを無視して先へと進めていく。


 そんなルーファスの話を聞きながら建物を進むと、アッシュは少し気になることがあった。どうもやたら騎士の数より子供の数が多い。

 隣にいるエドワードの肩を軽く叩きながら話かける。



「ねぇエドワード、ここは子供が結構多いね」

「あぁ、孤児院も兼ねてる場所だからな。大人になるまで色々教育をうけれるらしくてな、騎士になる子いれば、商人や自分の決めた道に進む子が多いそうだぞ」

「へー、珍しいね。大体の孤児院はそこまで面倒見たりしないのに」

「ここが特殊なんだろうな」

「ふーん、なるほどね。好きなこと、目標に向けて自分ですることができるから子供達も目も輝いてるんだね。かわいいや」



 少し納得しながら、再び前を向こうとしたらいつの間にか目の前に来ていたルーファスが目を輝かせながら、アッシュの手を握る。



「あなたもわかりますか!?子供達の可愛さが!!」

「うわっ!?そ、そうだね。元気にしてる子は好きだし、かわいいと思うよ」

「そうですよね、そうですよね!!可愛らしい子供達を見ていると仕事ですさんだ心が癒されていくんですよ......」



 うっとりとした顔でアッシュの手を握ったままかなり食い気味に話すルーファスは先程までクールっぽかったけど、今は親ばかな人かなと思うくらい、子供達に愛おしそうな視線を送る。

 手を掴まれたまま、振りほどこうか、それともこのまま好きにさせていいのか少々困惑してるアッシュはまだ隣にいてくれたエドワードに助けを求めつつ、ひそひそと話す。



「ね、ねぇ、ルーファスは危険な人なの?なんなのこの人?」

「こいつ、根っからの子供大好きな奴だ。変質者まではまだ至ってはないと思うが、まぁ害はないだろ。温かい目でみてやってくれ」

「......そ、そう」



 温かい目で見てあげられる上限超えてそうなんだけど、と思ったが、話題を振ったのも自分だし、もう気にしたら負けだと思い、しばらくルーファスが満足いくまでそっとしておいた。


 ルーファスの前では子供の話はしないでおこう……。そう心に誓ったアッシュだった。


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