傍観者は眠る
傍観者は何を見るか。私は仕事の夢を見ます。
真っ白なこの空間。
それは何処までも白く、境目が全く見えない。そして、そこには透明な水晶が不規則に浮遊していた。その水晶をツンッと指で触れて、少女が酷くつまらなそうな様子で戯れている。
退屈な毎日を水晶を通していろんな世界を傍観する。それが私の仕事だ。
少女は人の姿ではあるが人形のように白い髪に白い肌。たださえ白い世界にアルビノのような少女は床へ寝転がったまま床と同化していた。
「あー、暇……。どれもこれも見飽きた。他に面白いもの、暇潰し程度になる″物語″はないのかしら」
眠そうに、退屈そうな表情を浮べ、今度は床に落ちている水晶をコロコロと転がしながら白い髪の少女はそう呟く。持っていた水晶を指で弾いて、他の水晶を手に取った。
その世界を手のひらで観ては、ため息をついてまた指で弾いて飛ばす。
これも見たことあるし……、他にないかしら……。どれもこれも面白くもない。ものすごく退屈だ。
「フォルトゥナ様、水晶を弾いたり転がして遊ばないでください。割れたら大変でございます」
「フォルスって呼びなさいよっていつも言ってるでしょ? セバスチャン」
執事のようなキチッとした黒い燕尾服に仮面で顔が見えず長く伸びてる金色の髪は後ろで束ねられたセバスチャンと呼ばれる男は仮面をつけているにも関わらず、露骨に呆れたような様子で白い少女、フォルトゥナが転がしていった水晶を拾い、ため息をついた。
「あの、フォルトゥナ様――ではなく、フォルス様、僕はセバスチャンではありません」
「いいじゃない、執事ってだけしか呼ばないよりマシでしょう。それで、新しい″物語″ある? ここにあるもの飽きたわ」
執事は綺麗な装飾のある箱に入っていた水晶をフォルトゥナに渡すと適当に選ぶ。どうせどの世界も此方にとっては暇つぶしだ。気まぐれに気に入る世界がないかと思い1つ手に取った水晶を眺めた。
……女神様の世界ね。
「まぁいいわ、これ傍観しましょう」
「かしこまりました」
お辞儀をしながら執事が空間から居なくなる。もう一度選んだ水晶を眺めると、そこには少女が興味がそそられるものがあったのだろう。ずっとむすくれていた顔に笑顔が零れた。
「………………あら、意外なモノがみれそう。ちょっとくらい暇潰しになるわね」
クスリと嗤い、水晶を持ったまま眠る。