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腹黒殿下のお気に入り  作者: 咲倉 未来
First School Year
4/21

4.ルート軌道修正2

ブックマークありがとうございます!

---

日間恋愛BEST300[異世界転生/転移]に、ランクインすることができました。[6/4 13:55時点 177位で確認(同一pt作品多数あり)]

 机に並べた硝子の器に、桜貝やピンクパール、桃色の珊瑚にシェルで出来たビーズを出していく。そしてパーツをテグスで繋ぎ手際良くモチーフを作っていった。


「ふふ。ゲームの攻略情報を知ってから三ヶ月。レオナルド殿下と少しずつ距離がとれてきたし、お兄様とのスチルが大分見れた気がするわ」


 アリアは上機嫌で作ったモチーフをピアスに仕上げた。可愛く仕上がったことを確認するべく、じっくりと眺める。


「相変わらずお兄様はレオナルド殿下とのことを聞いてくるけど、それも時間の問題ね」


 アリアがフィガロと過ごす間、ソフィはレオナルドへとアプローチしている。ソフィからは首尾は上々だと聞いているから何も問題はない。


「一時はどうなるかと思ったけど、順調で何よりね」


 アリアは鼻歌を歌いながら、次々とアクセサリーを作っていったのだった。


 □□□


 学園内に植えられたイチョウの木々が黄色く染まり、少し肌寒い日が続いていた。


「え。体調不良でソフィは、お休みなのですか」


 彼女のクラスメイトからソフィの不在を聞かされて、アリアは内心愚痴(ぐち)を零した。

(もぉ。よりにもよってレオナルド殿下と一緒に過ごす日に休むなんて。ソフィの軟弱者(なんじゃくもの)!)


 頼りないライバルに文句を言いながら、アリアはレオナルドと二人きりを回避する方法を考えた。


(よし。お兄様も誘って三人でランチを食べることにしよう!)


 けれど、この作戦は失敗に終わる。


「ごめんね、アリア。今日は用事があるんだ。折角だからレオナルド殿下と一緒にランチに行っておいで」


 そう言って、丁寧にレオナルドのクラスまで送り届けられてしまったのだ。


「遅かったね、アリア。この時間だとカフェテリアは混んでいるし、テイクアウトにして外で食べよう」


「え!」


 『理想の王子様』らしからぬ提案にビックリして反応できないアリアを連れて、レオナルドは学園内のケータリングエリアに足を運んだ。多少混み合っていたが、それぞれ好みのものを購入しその足で学内の庭園に向かう。空いていたベンチに並んで座り各々食事にありついた。


「今の時期は学内のカエデとイチョウの紅葉(こうよう)が綺麗なんだ。気温も丁度良いから、外で食べるのも中々楽しいよ」


 レオナルドに言われて周囲を見渡せば、確かに美しい赤と黄色の景色が目に飛び込んできた。


「秋の景色ですね」

 そして紅葉目当ての生徒が同じように食事をしている姿が見えた。


(うぅ。外で二人きりは、目立つかもしれないわね。もしかして断るべきだったかしら?)


 今日のランチは、スチルの出現条件に一致していない。だから特に問題は起きないはずだと、アリアは油断していた。


(当たり前だけど要領よく分岐を選ぶだけじゃ済まないのよね。間違いなく、この場所のスチルは無かった筈だけど……)


 ゲームの攻略情報は現実の生活と照らし合わせると断片的なものになる。ゲームは一日がキャラクターとの会話一回で済むが、現実はそんな訳にはいかない。だから目の前の現実とイベントを上手く紐付けないと選択を誤ってしまう。不安に駆られながらも、アリアは大丈夫だったはずだと自分に言い聞かせた。


 けれど、()()()()()()()()()()()()()()など、実にらしい条件だとも思うのだ。


「ソフィも一緒だったら良かったのに」

 ソフィがいれば、レオナルドと二人きりで起きるイベントが発生しない。そのおかげでアリアはレオナルドとの恋愛イベントを回避できていたのだ。


「彼女は嫌がって来ないよ。アリアはこうゆうのは平気だろう?」


「そうですね。でも何でご存じなんですか?」


 レオナルドを見れば意味深な顔で笑っている。


(こんな場所のスチルなんて無い。無かったはずよ)

『World of Ocean Heart』は続編もⅡも無い、単発のゲームだ。だからアリアの持つ攻略情報が全ての筈だった。


(でも、絵になる場面に見えるわ)

 赤と黄色の美しい背景にブルネットの髪が木漏れ日に照らされ、笑顔が輝いて見えた。


「どんな人かなんて、会って少し話せば大体わかるさ」


 そう言ったレオナルドの瞳に少し意地悪な感情が見て取れて、アリアは冷や汗をかいた。


「れ、レオナルド殿下は人を見抜くのが得意なんですね」


「まぁ、そういった教育は受けているからね」


 アリアの頭の中で警戒音が鳴り響いた。話題を変えたくて必死に辺りに目を泳がせる。


「そ、そうなんですね。あ、殿下。リスがいますよ!」


 木の上を二匹のリスが走って行った。すぐにその枝にカラスが舞い降りる。そしてリスが走り去った方向に羽ばたいていった。


「カラスに追いかけられているみたいだ」


「そんな!」


「まぁ、逃げるものって追いかけたくなるから仕方ないよ」


 その含みを帯びた発言に、アリアはギクリと肩を震わせた。そろりと視線を上げると、まるで小動物をいたぶる肉食獣のような目をしたレオナルドの横顔が見えたのだ。


 すぐに視線を外して見なかったことにする。


「で、殿下。私は追われたリスが可哀想でなりません。無事に逃げ切ってくれることを望みます」


「そうだね。捕まったら酷い目に合うだろう。でも――」


「逃げ切りますよ。大丈夫です」


 その先を聞きたくないと思ったアリアは、レオナルドを真っ直ぐ見据えて、続きを遮るように言い返していた。そして、いつの間にかリスを自分と重ねていたが気が付かなかった。

 そうして全てを否定するように笑顔を作る。そんなアリアを見て、レオナルドの顔から表情が消えた。けれどすぐにニコリと笑いかける。


「そうだね。逃げ切れると良いね」


 そう言って微笑んだ顔は、いつもの『理想の王子様』に戻っていた。

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