6.フィナーレ
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城で開催される舞踏会へ向かう馬車の中で、フィガロはアリアにグリマルディ公爵家の今後について説明した。
「なら、ソフィは卒業を待たずにレナルディアナ王国に輿入れするのですか?」
「そうだね。あちらの国に打診したら是非にと回答が貰えたそうだ。それにグリマルディ公爵は近日中に現当主の弟君に代替わりする。すぐにその理由は噂になるだろう」
「今日はソフィと会えますか?」
「会場には居るだろうけど、大公から紹介と激励の言葉を貰ったら直ぐに退出するかもね。出国までに新当主の養子になる手続きもあるし輿入れの準備もあるだろうから、もう学園には来ないと思うよ」
「そうですか。残念です」
フィガロは落ち込んだアリアを目の当たりして、少しだけ心が痛んだ。けれど、それ以上に思い通りに進んだシナリオに満足した。そうして残りの道中を、自分がプロデュースしたアリアを眺めて楽しんだのだった。
到着すると、アリアをエスコートし会場へと足を踏み入れる。城で催される、シーズンで一番大きな舞踏会の会場には、既に大勢の貴族達が揃っていた。
色とりどりのドレスの中でも目立つよう、『真珠姫』のコンセプトに合わせて仕立てたパールホワイトとパウダーブルーのサテンドレスが、シャンデリアの光を反射して柔らかく光る。
アリアのプラチナブロンドの髪に飾ったヘッドドレスのドロップ型のパールが、歩く度にチラチラと揺れている。首には小ぶりな真珠の二連のネックレスに、ショルダータイプのパールチェーンが胸元から二の腕を通り背中に続く。
少し乱れてしまった髪に手を入れ整えてやると、アリアがこちらを向いて微笑んだ。その拍子に耳に付けたドロップ型パールとダイヤのピアスが、髪の隙間から覗いて光るのが見えた。
その完璧なバランスに、フィガロは心から満足する。
「お兄様、緊張します」
「折角綺麗に仕上げたんだから笑顔を振りまいて。僕の新ブランドの売り上げは、今日のアリアの宣伝にかかってるんだからね」
「が、がんばります!」
周囲を見渡せば、既に目聡い貴族達がこちらを気にしてザワついていた。
「さぁ、アリア。ファーストダンスが終わったら、前半は僕と新ブランドの宣伝に付き合ってもらうから覚悟しておいてね」
柔和な笑みを携えて、フィガロはアリアを連れてフロアを回ったのだった。
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フィガロとのファーストダンスを終えると、沢山の贔屓にしてもらっている顧客へ挨拶に回った。皆一様にアリアの身に付けている『真珠姫』のジュエリーの話を聞きたがり、特にアリアと歳の近い令嬢達は、こぞって新シリーズのことを知りたがっていた。
「中々良い手応えですね。お兄様」
「そうだね。アリアのお陰だよ。ありがとう」
舞踏会も中盤に差し掛かり、司会からレナルディアナ王国との国交の説明が成された。長い口上の後、友好の証としてソフィ・グリマルディ公爵令嬢の、レナルディアナ王国への輿入れが決まったことが公言された。
大公の前にソフィが進み出て激励の言葉を受ける姿を、フィガロとアリアは壁際で並んで見ていた。
その時、後ろから肩を叩かれる。振り向けば正装に身を包んだレオナルドが立っていた。
「お待たせ、フィガロ。ここからはアリアを借りるよ」
「ええ、殿下。よろしくお願いします」
そう言うと、フィガロはアリアの手をレオナルドへと受け渡した。まだ大公の激励は続いていたが、二人は人の間を縫ってフロアの外へと進んでいった。
□□□
控え室の一室に入ると、レオナルドはアリアの装いを上から下までじっくりと眺める。
「確かにフィガロが自信を持って用意しただけある。とても綺麗だ。『真珠姫』のイメージそのものだよ」
「殿下。胸に付けているブートニアは、もしかして……」
「ああ。アリアの『真珠姫』の装飾品とペアのブートニアだ」
アリアに見せるように胸元の飾りに手をかざす。
「お兄様が付けていたタイピンとカフスボタンだけかと思っていました」
その一言でレオナルドはフィガロにしてやられたことを理解した。けれどそんな些末なことに気を取られている場合では無いと頭を切り替える。
「さぁ、アリア。後半は私と一緒に舞踏会を楽しもう」
言いながら、予め部屋に用意してあった品に手を伸ばす。太めのリボンに青色のカットストーンと刺繍が施されたアクア色サッシュベルトを手に取り、アリアの腰に巻き付けた。出来合いのリボンの装飾が斜め前にくるように留め具を掛ければ、ドレスの印象がガラリと様変わりした。
「あと、首にはこれを付けて欲しいんだ」
そう言って取り出した箱の中には、ダイヤモンドで周囲を飾りハート型にカットされた、濃い色合いの大きなアクアマリンが輝いていた。
「っ!嘘みたい」
「婚約発表はまだ先だけど、今日これを付けて私がエスコートすれば、みんな理解するはずだ」
それは代々受け継がれる大公世子が婚約者に贈るネックレスだった。
「ルートが違うから、見れないと思っていたわ」
独り言を呟くアリアの首からネックレスを外し、箱から取り出したアクアマリンのネックレスに付け替える。
仕上げに薄い水色のロンググローブを手渡して、アリア自身に取り替えてもらった。
「さぁ準備万端だ。大公の長い話も終わったみたいだし、会場へ一緒に戻ろう」
「何だか、ふわふわして歩き辛いです」
「腕にしっかり掴まって。私だってアリアとダンスを踊るのを楽しみにしていたんだ。ファーストダンスを譲った分、後半は独占させてもらう約束だ。私以外と踊ってはダメだよ」
「殿下でも、譲ったり我慢したりするんですね」
「全てを思うがままに望むほど、私は愚かではないよ。もちろん、欲しいものは必ず手に入れるけど」
レオナルドはアリアの歩調に合わせて、小さく歩き出す。こちらを見上げるアリアの視線に気付いて、思わず笑顔が零れ落ちた。
「殿下、とっても素敵です」
「ありがとう。アリアもとても美しいよ」
薄暗い廊下を通り扉の前に立つ。合図を送ると控えていたドアマンが、勢いよく扉を開け放った。
目に飛び込んできたシャンデリアの輝きに、一瞬目が眩む。一拍の後、華々しい会場へと二人は足を踏み入れた。
その光景に、会場の誰もが注目し大きなざわめきが広がったのだった。
□□□
イゾラ公国のその年の舞踏会開幕は、バルベリーニ侯爵子息の新ブランドのお披露目に、レナルディアナ王国との国交と、華々しい話題で盛り上がりをみせた。
そして大公の一人息子であるレオナルド大公世子が、婚約者に指名するであろう女性を伴って現れたことで、翌日には国中がその話題でもちきりとなる。そして、これより続くであろう婚約発表と結婚式のイベントに、国内はお祝いムード一色に染まったのだった。
~END~
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