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腹黒殿下のお気に入り  作者: 咲倉 未来
Last School Year

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16/21

3.フィガロの思惑2

評価入れてくれた方、ありがとうございます!

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 案内されたテーブルに着くと、待ってましたとばかりに女主人が愚痴をぶちまけた。


「グリマルディ公爵に、薬の代金を踏み倒されたんだ。取り立てに行きたいんだよ!」


「はぁ。何の薬をどの位売ったんですか?」


「そりゃもう沢山さ!若返りの薬から性欲剤から山ほど売ったよ」


「「ぶっ!」」


「一年くらい前に支払って貰ったのを最後に、ツケで大量に購入した後は音沙汰無(おとさたな)しで困っちまってね。訪ねていっても門前払いなんだ。酷いだろ!」


「因みに、どの位の金額が未払いなんですか?」

 レオナルドの問いかけに、女主人が紙を一枚差し出した。


「中々の額を踏み倒されましたね、マダム。よろしければ私が立て替えましょう」


 その提案に、女主人の態度はコロリと軟化した。

「あら、あら、あら。中々良い男じゃないか!良いねぇ、あんた。ついでに良い仕入れ先も紹介しとくれよ!最近この界隈(かいわい)の雑貨やアクセサリーの質がすこぶる悪くなってて、困ってるんだよ」


 レオナルドは小切手にサインし女主人に手渡した。


「覚えておきます。あとツケの借用書をこちらに下さい」


「はいよ!確かに受け取ったよ。良かったわぁ」


「私達はこれで失礼しますよ」


 挨拶もそこそこに、レオナルドとフィガロは店を後にした。


「フィガロ。これを使ってレナルディアナ王国との国交は、バルベリーニ侯爵家が動きやすいよう提案して国政に組み込むよう進めるよ。グリマルディ公爵も強くは出にくいだろうさ」


「ありがとうございます。僕は社交で少し(うわさ)を拾います。大方愛人に入れ上げて金に困っているような気がしますから。だとしたらしょうも無い話ですけどね」


 言いながらフィガロの目は細められ、その表情に影が落ちる。そんな下らない理由で横やりを入れたなら、到底許せる話ではない。


「へぇ。奇遇だね。私もそんな気がしているよ」


 フィガロの暗い顔を見て、レオナルドはクスクスと笑ったのだった。


 □□□


 レオナルドと出掛けたアリアの帰りが遅いのを心配して玄関ホールで待っていた。暫くして帰宅したアリアは、何と声を取り戻していたのだ。


「―― お兄様、ただ今戻りました」


 久々に聞いたその声に胸が締め付けられ目頭が熱くなる。沢山話をしたかったが、それよりもレオナルドから事情を聞かねばならなかった。


 レオナルドを客間に案内し、お茶を出し終えた侍女に人払いの指示を出す。


「レオナルド殿下、アリアの声を戻して頂いてありがとうございます」

 フィガロは深々と頭を下げて感謝を伝えた。


「フィガロ、頭を上げてくれ。今日は偶然が重なって解決に漕ぎ着けただけなんだ。私も彼女の声が聞けて嬉しいよ」


「殿下、アリアのことは今後どのようにされるのですか?」


「正式に私から申し入れさせてもらうよ。声も戻ったなら誰も反対しないだろう。それに私が決めることだから、反対なんてさせないさ」


 レオナルドの目が楽しそうに細められる。


「それより、解決に至った経緯でいくつか問題になりそうな話がある。アリアに薬を飲ませたのはソフィらしいんだ。そして薬は私達が会ったあの女主人から買ったものだった。彼女は深海の魔女なんだ。グリマルディ公爵家はどうしてか、彼女と繋がりがあったみたいだ」


 全ての元凶を教えられ息を呑む。


「最も代金の踏み倒しの件で、深海の魔女はご立腹だ。今後は私と取り引きをしたいと言われたよ」


 大分穏便に話をまとめたが、合意に至るまで怒鳴り合う場面は多々あった。そもそもソフィに薬を売らなければ、アリアは声を失うことは無かったのだ。レオナルドはそこからして腹を立てていた。


「アリアの身辺には気を付けた方がいいだろう。それとフィガロが進めていたレナルディアナ王国の国交はどうしようか。もうアリアのために薬を手に入れる必要は無くなったから手を引くかい?」


 フィガロは一度に沢山の事実を処理した。怒りや報復の気持ちが込み上げたが全ての感情を押さえ込む。これからの自分達に必要なのは未来への投資だと割り切った。


「いえ。このままジュエリーの輸出は進めます。国内だけではいずれ頭打ちですから。それに医療が発展するのはイゾラ公国にとっても有益です」


「フィガロならそう言ってくれると思ったよ」


「ええ。妹共々今後ともよろしくお願いします。殿下」


 レオナルドが手を差し出す。それをフィガロが満面の笑みで握り返した。


 □□□


 学園では、変わらず四人でランチを共にしていた。


「ねぇ、ソフィ。新しいバレッタの試作品なんだけど、良かったら使わない?」


「あら、可愛らしい。頂いて良いの?代金を支払うわよ」


「試作品はいつも自分で使ったり配ってるから気にしないで。流行りのデザインだから気兼ねなく使ってね」


 目の前の仲の良いやり取りを見ながら、フィガロは違和感を覚えていた。


(アリアは、何故ソフィなんかと仲良く出来るのだろうか?)


 アリアの態度が変わらないから、フィガロも不本意ながら態度を変えずにソフィに接していた。無論ソフィの態度が悪ければ、いくらアリアが仲良くしたくても引き離すつもりでいた。


 そもそも声を失った時ですら、周りに訴えかけることすらしなかったアリアの態度は不自然だった。いつものアリアなら、きっとフィガロを頼ってくれたはずなのに。


(もしかして、まだ何かあるのかな?)


 それなら何か手を打たなければ。


 何もしなければ、大切なものはある日突然奪われてしまうのだから。

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