7.宣戦布告
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綺麗に整えられたベッドの上に座りクッションを手に取り抱きしめる。コロリと寝転がってアリアは悶絶した。
「私が、殿下のことを好き?本当に?」
魔法が解けたのだから、アリアとレオナルドの心は通じ合っていることになる。
「確かに、攻略情報を知る前は大好きだったわ」
けれど、恋愛関係に発展した後に見せる本当の姿が合わないという理由で諦めた。そして腹黒い本性を現した後のレオナルドは、確かにそれまでとは違っていた。
(変装すると王族のカリスマ性ゼロだし、たまに邪悪な笑顔を浮かべてるし)
あのダボッとした服と冴えない雰囲気は、思い出すと笑ってしまう。
(なのに、眼鏡を外すと色気を振りまくんだもん。まるでキャラクターみたい……キャラクターだけど)
ゲームの攻略情報通りなら『腹黒さと我が儘な本性をヒロインにだけ見せて束縛する、中々に面倒臭いキャラクター』のはずだ。
(確かに言い出したことは全て通してるけど、どれも嫌なものではなかったわ。それに二人きりが、とても楽しかったの……)
二人きりで過ごすなら束縛など関係ないかもしれない。アリアの嫌がることをしないなら我が儘だろうが気にならない。それなら何も障害など無いということになる。
「合わないと思ったのは、間違いだったみたい」
途端、ぶわっと心に歓喜が広がった。ドキドキと心臓の音が大きく鳴り、胸からお腹の辺りにかけて、ぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。
(うわぁ。うわぁぁ。うわーーーー!)
ゴロゴロとベッドの上を転がり回る。勢い余って落ちそうになり慌てて方向転換した。
「だ、ダメよ。このままだと眠れないわ」
けれど、目を瞑るとレオナルドへの気持ちが溢れてしまい、アリアは眠れない夜を過ごしたのだった。
□□□
翌日学園に登校し、アリアが一番最初にしなければならないことはソフィと話をすることだった。
「おはよう、ソフィ」
アリアに声を掛けられたソフィは、みるみる顔色を悪くする。
「……お、おはようございます。アリア」
「私達、話をしなければならないと思うの」
「ええ、そうね。私もそう思うわ」
「なら、放課後に中庭の噴水前で待ち合わせしましょう。それと出来ればいつも通りに過ごしてほしいの。急によそよそしくなって、余計な詮索をされたくないしね」
「……そうね。あなたの言う通りにするわ」
そうして、いつも通りに四人でランチを食べ講義を受けて放課後を待ったのだった。
放課後、中庭の噴水前に行くと既にソフィが待っていた。アリアを見るとぺこりと会釈する。その他人行儀な挨拶にアリアは思わず溜息をついた。
「お待たせしました。ソフィ」
「いいえ。時間ピッタリよ。それに覚悟はできているわ」
ソフィの顔は死刑宣告を待つ罪人かのように蒼白で、アリアと目を合わせず肩を落としている。
「私、ソフィが薬を盛ったことは誰にも言うつもりはないわ。だから気に病まないで」
「え?」
「私にかけられた魔法はレオナルド殿下が解いて下さったの。ソフィからしたら結局私に騙されたことになるのよね。ごめんなさい?」
ソフィの顔が強ばるのを見て、アリアは笑顔で笑いかける。どう言い訳したところで、アリアはレオナルドを奪うことになるのだから仕方ない。
「ソフィのお陰でね、レオナルド殿下と思いが通じ合ったのよ。だから感謝するわね。ありがとう」
「そんなっ」
「だから、魔法の薬の話はこれでお終い。できれば変わらず残りの学園生活を送れると嬉しいんだけど、私の提案受けてもらえるかしら?」
アリアはクルクルと毛先を弄び、見上げるようにソフィを見つめた。そんなアリアを見てソフィが拳を握りしめて口を開く。
「……薬の件を、黙っていて貰えるなら、学園生活の条件は呑むわ。私にとっても悪い話ではないもの。でも――」
生気の戻った目でソフィはアリアを見つめ返す。
「まだ、正式にアリアが殿下の相手に選ばれたわけではありません。私にだって矜持があります。最後まで諦めないわ」
「確かにそうね。でも私も譲ったりなんてしない。ソフィが諦めないなら、今度こそ正々堂々と戦うわ」
アリアもソフィも互いに笑った。そして握手はせずに立ち去ったのだった。




