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腹黒殿下のお気に入り  作者: 咲倉 未来
Second School Year
10/21

4.新規顧客の紹介

ブックマークありがとうございます!

 アリアはスケッチブックを手に持ちフィガロの部屋を訪れる。ノックをしてしばらく待つと疲れた顔をしたフィガロが部屋から出てきた。


「どうしたの、アリア」


 その顔を見て、アリアはスケッチブックから用意してあったものと別の言葉を選んで差し出した。


『少しお顔を見たかっただけです。お疲れですか?』


「忙しくてね。もうすぐ始まる舞踏会のオーダー品を納品し終われば時間ができると思うんだけど」

 フィガロの言葉を聞いて、アリアはコクリと頷いた。


『おやすみなさい』

「おやすみ、アリア」


 扉は直ぐに閉じられ、アリアはとぼとぼと部屋に戻る。


(フィガロルートが閉じてしまったかもしれないわ……)


 マジカル・イベント終了後、何度もフィガロと二人での接触を試みているが上手くいかないのだ。学園では常に四人で行動し、家では多忙を理由に断られてしまう。


(レオナルドルートのマジカル・イベントが開放された影響かしら?)


 マジカル・イベントによる分岐の中でも『声の出なくなる薬』はパラメータMAXで出現するルートだ。その発動は難しく、出せればその後すぐに魔法を解くイベントが発生し、ゲームはハッピーエンドを迎えて終わる短縮ルートでもあった。


(レオナルドルートは確かに開放されていたど、本人はパラメータMAXの立ち振る舞いでは無いのよね)


 それでも学内の噂でソフィが勘違いして発動に至ったと考えれば、理屈は通っているように思えた。そして、そのせいでマジカル・イベントは発生のみで止まり、魔法を解くイベントが無いままになっていた。


(なら、何とかお兄様との接点を増やさないと!)


 魔法の解き方を知っているアリアは、何としてもフィガロルートを攻略したいと考えていたのだった。


 □□□


 執事に呼ばれて玄関ホールに出向けば、変装レオナルドが立っていた。


「こんにちは、アリア」


『こんにちは』


『今、お兄様を呼びますね』


「いや、その必要は無い。今日はアリアに用事があって来たんだ」


 その言葉に思わず顔をしかめる。レオナルドルートをこれ以上進めたくないアリアは、何とかレオナルドを追い返そうとスケッチブックを慌てて捲った。


「悪い話じゃない。実は、以前知り合った雑貨屋の主人に商品の仕入れ先を紹介しろと頼まれていたんだ。アリアの作るアクセアサリーなら喜ぶと思うから紹介したいと思ってる。今日は店に顔を出す約束をしているから、許可を貰えたら話を通しておくし、一緒に行けそうなら連れて行こうと思って立ち寄ったんだ」


 突然のレオナルドの魅力的な提案にバサリとスケッチブックを落とした。


(っ!そんな良い話、中々無いわ)


 言葉にならない気持ちを表現するかのように、アリアは口をパクパクさせて手を動かす。


「喜んで貰えて嬉しいよ。昨日と同じように馬車で待っているから仕度しておいで。これは運んでおくから」


 そう言って落ちたスケッチブックを拾い、レオナルドは立ち去ってしまう。


(あう。レオナルド殿下との親密度が上がってしまうわ。でも、でも。こんな良い話は断れないわよ)


 商売のチャンスなど、一度逃せば二度と同じ縁などまず巡ってこない。(ひる)んだ(すき)に横から()(さら)われることすら日常茶飯事だ。

 このチャンスを逃してはいけないと、アリアは急いで準備をすべく部屋へと走っていった。


 □□□


 馬車に揺られながらアリアはレオナルドを観察する。相変わらず王族のカリスマ性はゼロである。


「そんなに私の変装姿が気に入った?なら学園もこの格好で登校しようかな」


 レオナルドの提案に、アリアは驚き慌ててスケッチブックを捲る。


『殿下、迷惑です』


「そうかな。存外皆の本音が聞けて面白いかもしれない」


 パラリとスケッチブックを捲る。


『殿下、笑顔が邪悪です』


「相変わらず、私を(おと)めるような文言をしっかり準備しているね。流石アリアだ」


(なんで()めるのかしら?)


「それは、私のことを的確に当てるからだよ」


 まるで心を読んまれたかのような回答に、アリアは慌てた。真相を探るべくサラサラと書いた質問をレオナルドに投げる。


『殿下、裏に何が書いてあるか当てて下さい!』


「……そんなの分かるわけがない。猫でも描いたの?」


(何だ。何でもかんでも見通せるわけじゃないのね)


 実は超能力でもあるのかと疑っていたアリアは安堵した。


(でも、ならどうして、こんなに会話が続くのかしら?)


 あらゆる人とスケッチブックで会話するアリアは、そのもどかしさを痛感する場面にも遭遇(そうぐう)していた。できる限り一度で済むように工夫しているが、書き終わるのを待てなくて相手にされないこともあるくらいだ。


 けれどレオナルドとの会話では、どういう訳か不快なことが一つも起きないのだった。

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