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「あの、もう帰ってもらってもいいですか?」
「司くんは冷たいなー!」
あれから僕は氷坂さんと一夜を過ごし、今に至る。
「氷坂さんの名前ほどじゃないですよ」
「……ダジャレ?」
しまった、ついつまらないギャグを言ってしまった。
「とにかく、帰ってください」
「朝ごはんまだー?」
「……」
氷坂さんは今お腹が空いている。
ここで僕がまた絶品料理を振る舞えば氷坂さんはきっと帰ってくれる。
「待っててください」
「楽しみだなー!」
僕は台所へ行き、朝食を用意する。
「出来ましたよ」
「わー、美味しそー! 司くんはご飯派なんだ! 気が合いそうだね」
「別に気が合わなくていいですよ」
ご飯や味噌汁、卵焼きなど一般的な朝食でも氷坂さんは感激していた。
「いただきまーす!」
「いただきます」
せっかく自分の分も作ったので、氷坂さんと同じタイミングで食べることにする。
「おいしー!」
「そうですね」
我ながら美味いと思った。
二人はあっという間に完食し、氷坂さんは、
「食べたら眠くなっちゃった……」
ふっふっふっ。ここまでは計算通りだ。
「氷坂さん、デザートにプリンありますけど食べます?」
「食べる!」
よし! 食いついた。
甘いものを食べさせれば、脳が活動的になる。
だから、氷坂さんが眠ることはないし、これだけご飯を食べたら僕には用済みで帰るはずだ。
僕は氷坂さんにプリンを持ってきた。
「ありがとうね!」
「えぇ」
氷坂さんはプリンを満面の笑みで頬張る。
「おいしいわ!」
「よかったですね」
「あれ? 司くんは食べないの?」
「僕はいいですよ」
実は楽しみにしていた冷蔵庫にたった一つしかないプリンを氷坂さんにあげたんだ。
だが、氷坂さんを家から追い出すための犠牲と考えれば安いものだ。
氷坂さんはプリンもあっという間に完食した。
次に氷坂さんが取る行動は何だ。
「美味しかったー! また、眠くなっちゃった……」
はー!? ちょっ!
待て待て待て待てぃぃぃ!!
「さすがにもう寝るのやめてもらえますか? 朝ですし」
「そ、そうだよね! 私ったら、あはは」
「それではそろそろ帰ってください」
「えっ、あー、司くんの部屋、汚そうだから掃除してあげようか?」
掃除? 確かに最近はあまり自分の部屋を掃除していないから汚いな。
ここで氷坂さんに手伝ってもらうのも悪くないかもしれない。
「それならいいですよ」
「本当に!? よーし、張り切っちゃうぞー!」
何故か氷坂さんはハイテンションだった。
その張り切った感じで僕の部屋へ向かう。
「汚いね」
「……うるさいですよ」