プロローグ
わたしのにぎってるものはなんですか?おかあさん?おかあさん?なんでなにもいってくれないの?ねえ。おかあさん。
毎日変わらない目覚ましの五月蝿いアラームに苛立ちながら目を覚まし、毎日変わらない溶かした卵をぐちゃぐちゃに混ぜ込んだだけの所謂スクランブルエッグを食べ私の最悪の一日は始まる。最悪なのは今に始まった事じゃない。昨日も一昨日も明日だって最悪なのは変わらない。私の顔はいつも不機嫌らしい。クラスの前の席に座ってるやつに言われた。あんたに私の顔をどうこう言われたくない。不機嫌なのは、生まれた環境のせいだ。アイロンも何もかけていない皺だらけの制服のシャツを着て焦げ茶色のジャケットを羽織り不器用にネクタイを結ぶ。馬鹿な不良みたいに変な着崩しはしない。至って真面目に私は学校生活を送っている。ただ、その中に友人なんてものはいないしましてや恋人なんてものはドラマや映画の中だけのフィクションの話だと思っている。
それに私は幸せになっちゃいけない。母に言わせれば、私は「死神」だそうだ。実の母親にそう言われるほど私は悪い子なのだ。もうその母はいないけど。
学校までの道のりの間様々な人達とすれ違う。少し早足になっているくたびれたサラリーマン。幼稚園の送り迎えをしていていつもエプロンを付けているお母さん。オシャレと男にしか興味がなさそうな女子四人組。単語帳を持っている中学生。
私はこの平凡な街になじめているのだろうか。紺色の膝まであるスカートを眺めながら歩いていく。視線がいつも下を向いてしまうのは私が健全な生き方をしていない証拠だろう。誰かと目が合うたびに「お前はなぜ生きている?」そう言われてるように感じてしまう。ただの被害妄想だとはわかってはいるけど。今日も始まる。私の最悪の一日が。