眷属(3)
このパートのラストです!
文字が詰まりすぎて読みずらいかも知れませんが、すいません。
超竜たちが地面にキスしていく中、リーダー超竜だけは何事もなく飛んでいた。
ジンの威圧を受けても大丈夫だった、という訳ではない。先程、魔法ではなくどちらかと言えば技術に近いと言ったのはこれがあるからだ。
これとは、対象を絞ることが出来るのだ。普通の魔法は単体か全体かの2択なので、絞るということが出来ないのだ。
今回、ジンはリーダー超竜、竜王、竜王秘書以外のこの場にいるドラゴンで絞った。
結果、他の超竜たちは瀕死状態なのである。
この時、リーダー超竜はなにが起きているのか理解ができなかった。攻撃しようとしたら、いきなり他の超竜が全て無力化されたのだ。分かれという方が難しいだろう。
そして、リーダー超竜が出した答えは愚かなものだった。先程のは竜王の力であり、人間如きの力ではない、と。
「竜王の力を借りて、我が物顔とはどこまで欲張りな人間だ」
「いや、借りてねぇし。俺の力だし」
「うん、私も貸してないよ。ちなみに取られてもない」
リーダー超竜はその言葉を聞いて、言葉を続ける。
「竜王よ、人間如きがこんな力を持っているわけがないだろう。あなたの暇潰しの遊びに人間を使わないで貰いたい」
「言いたい放題じゃねぇか、トカゲ野郎。そのお前の自慢の翼と牙へし折るぞ?」
プチンッ……
充分ジンも言いたい放題だと思うのだが、自分のことは棚に上げるのがジンである。
まだ竜王の仕業だと思い込んでいるリーダー超竜はついにジンの発した言葉で怒りが再び頂点に達する。
「黙っていれば! 竜王の力を我が物顔で振り回して楽しいか貴様!」
「お前も分かんねぇ奴だな! 実力だって言ってんだろぉ? トカゲには考える脳みそがねぇのか? あぁ?」
その言葉が戦闘開始の合図であった。
一方その頃、竜王と秘書超竜はと言うと。
「あの人間大丈夫でしょうか?」
「ん〜、大丈夫だよ。むしろあの超竜の方が心配なくらいだねぇ」
「なぜです?」
「だって、私ほんとに力貸してないもん。むしろ、他の超竜たちに結界まで張って上げたくらいだよ。それでもあの人間の威圧は超竜たちに届いた。これはあの人間が私よりも強いっていう証拠だね」
「あの言葉、本当だったんですね。そして、あの人間が竜王様よりお強いとわ。未だに信じられません」
そんな会話をしていた。
秘書超竜は竜王の言った言葉がにわかに信じがたい事だと思っているのだが、竜王がそうだと言っているのならそうなのだろうと自分の中で結論を出していた。
秘書超竜にとって竜王が全てなのである。あ、百合的な意味合いはないよ?
秘書超竜はジンが自分たちを威圧の対象にしてなかったことを知らないので、リーダー超竜と同じく、ジンの実力を見誤ったのだ。
だが、竜王はしっかりと自分との実力差を感じていた。自分たちが威圧の対象から外されていた事も、その威圧が本気ではなく、たった100分の1にも届いていない威力であったことも、全て分かっていたのである。
それにより、竜王の中でジンの眷属になることが決まった。
そして、場所は戻り。ジン対リーダー超竜。
勝負は一瞬で着いた。いや、一瞬というのもおこがましい程の早さで戦いは幕を閉じた。
勝負が始まった瞬間、竜王と秘書超竜は信じられないものを見る。
それは、ジンが消えたと思った瞬間、リーダー超竜の腹部に大きな大穴が空いてリーダー超竜が絶命した姿であった。
当の本人は消えたと思った瞬間には元の場所に戻って来ている。早すぎた。
その姿は竜王でさえも捉えることが出来ず、目を見開いて驚いている。だが、さすが竜王というべきか声までは出ていない。
秘書超竜は情けなく口を開け「へ?」とアホずらをしている。竜王としては部下の醜態で恥ずべきことなのだが、自分が言えたことではないし、そうなる気持ちも分かってしまうので放置している。
「カスが! 調子に乗んなよ!」
死んだドラゴンに死体撃ちと言わんばかりに罵詈雑言を浴びせて行くジン。
他の人が見たら、今のジンの姿と言葉はただのクズでしかない。
ひとしきり言い終わって、スッキリしたジンは竜王の方を向き、口を開く。
「こいつらどうすんの?」
「気絶してる子たちはそのうち起きるから放置してていいよ。そこのリーダー的な奴は一応、反逆罪で死刑の予定だったからそのまま殺しておいてもいいよ」
「そうか? なんか悪いな」
「いいよ」
一応、超竜たちを壊滅状態にしたことに対して反省しているジンは少なからずの謝罪をした。
だが、大丈夫だと許してくれる竜王。優しすぎる!
「で、さっきは邪魔が入ったから、改めて言うけど。俺の眷属にならねぇか」
「分かった。でもちゃんとご飯食べらしてよ」
「お、おぅ! 任せとけや!」
ご飯という言葉に少し動揺するジンだが、そのことに関しては後々分かることだのでここではあえて言わない。
だが、竜王が眷属になることは確定した。
そして、次に問題としては浮かび上がって来るのは次の竜王だ。これを決めて置かないとドラゴン界が回らない。
竜王に必要なことは強さただ1つだ。出来れば働く意思が欲しいが、それは前竜王が持っていなかったので必要なことではなく、出来れば的な感覚になったのだ。
ちなみに前竜王と言っているが、彼女が最初の竜王であり、竜王が代替りしたことは一度もない。強さがあれば、竜王になれるというのは、強ければずっと竜王なのだ。
決して、現竜王が竜王というのを作ったのではなくて、強すぎるが故に周りのドラゴンたちが言い出し、いつしか本当に竜王というクラスが出来てしまい、必然的に現竜王が竜王になったのだ。
そして、竜王決めだが、これには色々と時間がかかる。何せ世界各国にいるドラゴンを呼び出し、トーナメント戦で竜王を決めるのだ。
ということで、現竜王はある行動に出る。
「じゃ、ミーコ竜王よろしく」
「!?」
ミーコというのは秘書超竜の名前である。キリッとした見た目からは想像の付かない可愛い名前である。
突然、現竜王に「竜王よろしく」と言われ動揺するミーコ。だが、特に反対することもなく、そや言葉をあっさり受け入れる。
ミーコは知っているのだ。この竜王は何を言っても決めたことは曲げないことを。だから、いつも自分が折れて、竜王の思うようにさせてあげてると。
「なんか言われたら私に言ってきな? ミーコを傷付ける奴は初代竜王が許さないから」
ここだけ聞くとイチャラブカップルの会話である。そして、こんな時だけ、竜王の名前をいいように使う竜王。竜王が変わって良かったんじゃないかと少し思ってしまう。
「分かりました。では、行ってらっしゃいませ竜王様。いえ、ここは古い友人として送り出すべきでしょうか。行ってらっしゃいカムイ」
「うん、行ってくる」
秘書超竜、いや、新竜王は竜王に対して最大の敬意を払いながら送り出すと、今度は小さい頃からの古い友人として、竜王の旅立ちを笑顔で見送る。
竜王、いや、カムイも古い友人として送り出してくれたミーコに笑顔で行ってくると伝え、旅に繰り出した。
「え、俺めっちゃ空気じゃね?」
そんな独り言を言うジン。彼の独り言が無くなることはないが、カムイが眷属になったのだ、少しくらいは減るであろう。
そして、ジンとカムイは竜王の間を後にする。
その後、攻め込んで来た超竜たちの後始末を押し付けられた新竜王は涙目ながら、「竜王になって初仕事がこれって……」と呟きながら黙々と掃除をしていた。
苦労性は竜王になっても変わらないようである。
カムイは天気屋なので喋り方がよく変わったりしますが、一応仕様になっております。
まぁ作者もそんな感じなんです。
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明日も3本の予定です!