「やっぱり君はスタイルがいい。」
そう言って男は微笑んだ。
春の公園。
適度に花が咲き乱れ、子供たちの声が響き渡り、その牧歌的な雰囲気は人類の理想とすら思える。
「またそれ?もう半年付き合ってるんだから、いい加減他のとこ褒めてよ。」
彼女の腕は太陽光に晒されつつも、日焼けはせず、その自然な白さは優しさを感じさせた。
半袖のブラウスの袖口からソッと手を入れる。
「事実なんだから仕方ないだろ?君の良いところはもちろん他にもあるけど、それを探して褒めるより、
スタイルが良いことを褒め続けた方が僕にとっては楽だ。」
爽やかな風が吹く。
今度は少し捲れたスカートの中を彷徨う。
「あんまりそういうこと、こういう場所で言うべきじゃないと思うよ。」
男はムッとした彼女の表情を嬉しそうに見つめていた。
「ふ〜ん。どこならいいわけ?ホテル?レンタルDVD屋?喫茶店?」
彼女の表情はさらに曇る。
「ばーか。」
スカートから出ると、ブラウスが捲れるのを発見し、頭から入る。
「本当はこういうの好きなくせに。」
男の表情は明るさを増すばかりだ。
「あーもう、うるさい!そんな話ばっかするならもう帰るよ?」
彼女は声を大きくした。
首元にそっと触れると嫌な視線を感じた。
「あー悪かったよ!ごめん!…ん?ちょっとジッとして!」
「な、なに?」
耳元に達した時だった。
「動かないでな…」
「えっ?」
パチンッ。
頭が眩んだ。
意識は飛んだ。
今自分がどこにいるかも分からなくなった。
「なんだったの?」
「あー黒い小っちゃいやつがさ、耳のとこにいたから。」
「あ、そう。ありがとう。」