後輩
その日の昼休み、私はいつものように自分の机でおにぎりを食べていた
私の勤める塗料会社の40平米ほどの総務経理の事務所で
もうそんなに切り詰める必要もなくなったので給食とってもよかったんだけど、お金をためて私は親に出してもらった引っ越し代やマリッジゲートの入会金を返すつもりでいた
いつもは社食でお昼を食べる後輩の純ちゃんもこの日はコンビニで買ってきたお弁当を自分の机で食べていた
総務経理の事務所内で総務の私と経理の純ちゃんの机は隣合っている
というかこの部屋は机自体が六個しかない
部長と係長と私と純ちゃん
後、奥側に会長と社長の机
机はあるけど社長と会長は工場内をいつも回ってるし、あとは隣の社長室にいることが多い
だからこの部屋に常時いるのは四人だけ
「純ちゃん珍しいね」
「はい、なんか給食のお弁当飽きちゃってたまにはコンビニのお弁当もいいかなと朝買ってきたんです」
純ちゃんは去年中途採用された25才の女の子だ
急に古参の経理の人が病気で辞めたのでこの子が入った
小さい会社なので総務と経理は仕事がはっきり別れてない
総務の私も請求書チェックとかするし、経理の純ちゃんも食堂や事務所で使う備品などを業者に発注したりする
毒のない感じのいい子だけど…この子も私のことを陰で亀女って呼んでたのかな
「美希さんのおにぎり正三角形できれいですね」
「さすが、できる女って感じです」
そう言って私をよいしょしてきた後、純ちゃんはビックリすることを言った
「あの…美希さん…」
「結婚相談所に入ったって噂があるんですけど本当ですか?」
「!!」
藤田めっ!話したな
アイツ〜
「資材の中野さんが、駅前のマリッジゲートに美希さんが入るととこ見たって」
あ…藤田くんがリークしたわけじゃないんだ
よりによって中野さんにも見られていたか…
資材の中野さんは私より2つ上の既婚女性だ
ほんの少し意地の悪い…
私に亀女ってあだ名をつけたのはあの人じゃないかと推測している
うわ、やばいな
あの人に見られたってことはこの会社八十人みんなが知っている可能性がある
少し青ざめた私を気づかう様子もなく純ちゃんはキラキラした目で
「どうですか、結婚相談所から紹介される男の人って」
「いい人いますっ?!」
って聞いてきた
「純ちゃんは…彼氏いるって言ってたじゃない、学生時代から付き合っている…」
「別れちゃったの?」
「いえ、まだ付き合ってますけど、彼お給料安いんで、結婚するならもう少し条件のいい人がいいなって思って」
「私、すごく興味あったんですよ」
「結婚相談所」
「もう話聞きたくて聞きたくて」
「あ、私だけじゃないんですよ?」
「品管の曽我部さんも工場の木田さんも開発の沢さんも興味あるって!」
ああ…やっぱりみんな知ってる系だ…
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今週からは月、水、金に投稿させていただきます。