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心理テスト

「心理テスト?」



「そう、あ、これは別に書類作成には全く関係ないの」


「そんなちゃんとしたものじゃなく、ただ私がお客様とのコミニュケーションを円滑にするための女学生がするお遊びみたいなものなのよ」


「やる?」



「はあ…」


そう言ったら荻野さんは私にÁ4を2つに折った白紙とペンを差し出した


「その紙の左半分に美希さんが恋愛、または結婚相手の男性に求める条件を書き出してみて」


「その紙は、私に見せずに捨てていいから本当に自分が思いつくことを正直に書いてみて下さい」


そう言うと荻野さんは斜め後ろを向いた

私の書くところを見ないように


相手に求める条件か…

うーん

こんなもんかな



頭が良い

スーツが似合う

優しい

常識的

真面目

常に冷静

センスがいい

うるさからず大人しすぎず

稼げる能力がある

組織の中でのし上がっていける

サバイバル能力がある

人に嫌われない

お金餅ち

語学が堪能

端正な顔立ち

メガネが似合う

建設的な考え方が出来る

家事に協力的

特技がある

国家資格を持っている

交友関係地味からず派手からず

浮気しない

細身寄りの中肉中背

車の運転を苦にしない

健康

変なこだわりがない

ズルさがない

適切な経済観念がある

親が干渉してこない



私のペンが止まったのを感じた荻野さんは後ろを向いたまま「美希さん見返してみて」と言った


言われた通り見返す

まあこんなもんじゃない?

しかし…こうして羅列した条件を見ると、私って本来はエリート寄りの整った人が好みなんだと気づかされる


「美希さん、見返した?」


「それにあえてもう一つ条件を加えるとすると何?」



「え、もう書き尽くしたと思いますけど」



「もう一度よく考えて」


もう一度見返す


あえてもう一つか

うーん、特にこれ以上は…

あ、あったもう一つ

忘れてた


「思いついたらそれを紙の右側に書いて」


言われるまま私は思いついたことを紙の右側に書いた

すると後ろを向いていた荻野さんはくるりと振り返り


「一番最後に右に書いた条件が本当にあなたが相手に求めていることです」と言った


え…?


私が追加で書いた条件は…

『本を読む人』だった


啓司けいしは、左に書いたことに当てはまることは一つも無かったけれど、本を読む人だった

私たちは国立国会図書館で出会ったんだから




急に涙が出てきた

そしてそれはBB弾くらいの玉になって音を立てて机の上に落ちた


なぜ今?

啓司を追い出して二週間、私は泣かなかったのに


浮気してた二十歳の女の子が妊娠しちゃったって聞かされたときも、やつの残していった服とか本を処分したときも


浮気というワードや妊娠というワードにも耐え、啓司の匂いの付いた服もあっさり捨てられた私の心は、この『本を読む人』という一言に触発されて悲しみの悲鳴を上げた


別れたときの怒りや悔しさではなく

自然にすうっと心が惹かれていった出会ったときの喜びを思い出して

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