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沢さんと多田くん

沢さんにまさかの彼氏が出来た


まさかの彼氏と言うのは本人が言ったことで、私はそれを引用させてもらっているだけ




今年我が社に入った新入社員は一名

営業に配属された多田くんだけだった


私は就職試験を受けに来た多田くんを一目見たときおっ、と声が出そうになった

そのくらい見目麗しい男の子だった

四人試験を受けた子の中でダントツテストが出来なかったけど


実はテスト問題は総務部長が作ったものを私が採点した

この小さな会社には人事などない


まあ、よくここまで漢字が書けないな、これじゃあ大手は受けられないよね…と採点しているとき私は思ったのだけど、面接をした会長と社長がこの子を気に入って採用の運びとなった


グッドルッキングは得だなと私は思った

じゃあなんで私は就活だめだったんだろう 

SPIはそんなに悪くなかったはずなのに、大手は軒並み落ちた

人としてのかわいさがなかったからかな…などと今更ながら自分の就活の失敗を分析したりして…


この多田くんが沢さんのまさかの彼氏になったのだ




総務の人間はどうしても新入社員と一番早く仲良くなる

なにせ連絡事項は全て私がするし新入社員もあれこれ面倒を見てくれる私が頼りだろう


うちの会社は変な習慣があって研修が始まって一週間は社長や総務部長と一緒に応接室で新人はお昼を一緒に取る


これがまあまあの苦痛なのだ

私のときは社交的な藤田くんがおえらいさんからの会話を上手に捌いてくれた

…だから営業に向いてるって目をつけられちゃったんだけど…


今年は新人一人だから顔と人当たりが良いだけの多田くんがおえらいさんと一週間もご飯を食べるかと思うと気の毒だ


「社長、今年は多田くん一人だけだし、連れがいないのもかわいそうなんで、私も一緒に入りましょうか?」


と言った私のじょうが多田くんに伝わり、懐かれた


多田くんは私の姿を見かけると駆け寄って来るようになった

あまりに美希さん美希さんと擦り寄ってくるのであらぬ噂が立てられた

そしてそれが沢さんの耳に入った




「美希さん、私、多田くん超好みなんですよ」


「あの…でも美希さんと付き合っているんでしょ?」


との沢さんの質問にノーと答える

この頃には沢さんにも私が結婚相談所で相手を見つけるつもりがないの、わかってたみたい


他の人たちは影でコソコソ噂するけど、この子と純ちゃんは正面切っていろんなことを聞いてくる

かえって助かる、否定の機会をもらえて

私この子嫌いじゃない


「沢さんみたいなハッキリしたしっかり者と多田くんお似合いかもしれないね」


「就活中に彼女と別れちゃったらしいし」


「面倒見のいいお姉さんタイプが好みらしいし…」


「一度三人で飲みに行く?」


「多田くんは私が誘えば断らないだろうから」


この申し出に沢さんは飛び上がって喜んだ

ほんと、素直だな




で、私が思った通りこの二人はピタッとハマりお付き合いすることになった


「私、結婚して会社辞めたいと思っていたけどもし多田くんと結婚することになったら、辞めずに定年までいる」


「だって心配だもん、浮気とか」


と沢さんは言う

ふふ、そうしなそうしな

男は浮気する生き物だからね


沢さんと多田くんは私を仲人扱いして、なんか感謝してくれてる

今日も誘われてこの二人の行きつけの焼き鳥屋さんに連れてきてもらっている

少し酔いが回ったところで、甘噛みみたいなケンカが始まった

ラインの返信が遅いとか、多田くんがかわいい受付嬢のいる取引先に行く回数が増えてるとか


ラインの返信が遅いのは世の男の常だし、大日○印刷に行く回数が増えたのは特許を取ったインクの売り込みに必死な藤田くんのお供をしているからじゃない、と沢さんをたしなめる


うーん私、こうやって若い子達の面倒を見て一生を終えるんだろうか


それならそれでいいかな


立派な総務のおばちゃんになって、その先は総務部長になってうちの会社の前近代的な数々の制度を改革してやる…なんて自己実現を出世にシフトして意気込んでみたりして


やがて訪れる転機を知る由もなく、この時は

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