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バックヤード

年末、マリッジゲートのバックヤードでは、その日早番のアドバイザー二人が昼休みに入り話をしていた


「もう、ほんとに困っちゃう」


「菊川美希さん、あれ以来全然連絡取れなくなっちゃって」


「何回電話しても出てくれないの」


と嘆く荻野に向かって一年先にここに入った本田が言う


「あー、あの人プライド高そうだったから」


「美人だし、私はこんなところでお世話にならなくてもって感じだったよね」


「一回断られてプライド傷ついちゃったのね」



「そうなの、逆に布津さんは毎月紹介した人に会ってくれるんだけど」


「すく断っちゃうのよね」


「なにせ一番最初に会ったのが美希さんでしょ?その後会った人が見劣りしちゃうのよね」


「ポツリ、早まっちゃったかな…なんて言ってたし」


「布津さんがもう一度会いたそうにしているから、それだけでも伝えようとメールしてるんだけど…」


「多分うちのホームページに来てないわね、美希さん


「手紙も書いて出したんだけど、読んでもらえてない気がする」



「私、ああいう人腹立つわ」


「自分も結婚相談所に入っているくせに、なんか結婚相談所に登録している人をバカにしているというか…」


「ここは出会いの機会が乏しい人たちが結婚相手を見つけて幸せになりたくて、お金と気力、体力を使って必死で活動する場なのよ?」


「私は親が入れっていうから入っただけだから〜ただせっかく入ったらちょっと試しに一人くらいあってみようかな?…って感じだったんでしょうけど」


「まさか自分が馬鹿にしていた結婚相談所に登録している男に断られるとは思ってなかったんでしょうね」



「手厳しいわね、本田さん」



「まあ、連絡取れないんじゃしょうがないわよ荻野さん、やることやってるんだし、エリアマネージャーがなんか言ってきたら私かばってあげる」


「もう菊川さんは諦めてもっと見込みのありそうな人に力注ぎなさいよ」



「そうね…そうするわ」



「荻野さん、私コンビニ行ってくるけど、なんか買ってくる?」



「ありがとう、大丈夫、今日お弁当作ってきたから」


そう言ってバックヤードを出ていった本田を見送った後お弁当の包みをほどきながら荻野葉子は考える


ああは言ったけど、なんか気になるのよね

美希さん


紹介出来る人の幅を持たせるために、女の人は相手に求める年収を下げさせるのが本当に大変だし、男の人は相手の希望年齢の上限を上げさせるのが大変だったりするんだけど…


あの人最初は年収一千万希望なんて言っていたけど、ほんとはそんなことちっとも希望してなかったわね

そうじゃなきゃ私の提示した条件をあんなにサクッと了承しなかった


うーん

もったいないな

あの二人、なんとなくうまくいきそうな気がしてたんだけど


でも、美希さんが結婚相談所を拒否している以上、私には何もできない


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