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結婚相談所

4月の始め、私は会社帰りに勤め先近くのマリッジゲートという結婚相談所をお母さんが予約してくれた時間に訪ねた

マリッジゲートはたまに雑誌の広告で見かけたりする中堅の結婚相談所だ


今日は社会保険事務所とか職安とか行かなきゃいけないところが多くて定時に仕事終わらせるの大変だった


それにしても

…なんで会社の最寄り駅近くのここを予約したかな…

通いやすいようにという配慮かもしれないけど、私としては会社の人にここに入る姿を見られるんじゃないかとヒヤヒヤするよ


あの人って相変わらずデリカシーがない

でも今回は文句言えない

引っ越し代+引っ越す先の敷金礼金+ここの入会金出してもらうから


それに結婚相談所入るって了承したものの、やっぱり気乗りがしなくって、自分で動かなかった私も悪かった


お母さん、始末屋なのにお金出してくれるなんて…

そういえばお正月に去年はお母さんの知り合いの子供たちが結婚ラッシュだったって言ってたな

親として焦ってるのかもしれない


今どき三十なんて結婚してない人ゴロゴロいるのに…




ビルの七階にあるマリッジゲートの受付に行くと私を担当するアドバイザーを名乗るおばちゃんが出てきた

小さくパテーションで囲まれた椅子とテーブルだけの空間に案内される

隣のパテーションでは誰かが説明を受けている


私はアドバイザーの荻野さんというおばちゃん…四十五くらいかな…の話すここの紹介所の理念や料金システム過去の実績などを上の空で聞いていた

 

面倒くさい…


とっとっと契約をすませて早く部屋に帰りたい

そんな気持ちで一番安い二年で24万、月に二回男の人を紹介してもらえるコースに入会することにした


そしたらその足で近くの写真館に荻野さんに連れて行かれプロフィール用の写真を撮られた

そして再び紹介所に戻り私が相手に求める条件を聞かれた


年収とか年齢とか


私はふと、昨日見た『旨味結婚』という深夜ドラマのアラサー主人公が求めている結婚相手への条件を思い出し


「年収一千万以上、年齢は三十五才まで、もちろん親との同居は不可、あ、自営は嫌です」


「そして専業主婦希望」


と真似して言ってみた


荻野さんは私のプロフィール作成用の書類を前に真剣な顔をして


「うーん、せめてあと一年早かったら…」


「二十代だったらこの条件でもご紹介できるんですけど、美希さん三十才ですよね」


「これだとご紹介できるかどうか…」と言った


あと一年早かったら…

お母さんもそう言ったっけ

去年の私と今年の私で大して変わりはないのに、世間様からは大きく違って扱われるんだ…


「美希さんは美人さんですけど、ここでは男は年収、女は年齢…てとこあるから」


「数字が大事なの」


荻野さんははっきりそう言った


「あ…じゃあ、条件は荻野さんにおまかせします」とにっこり笑って告げる


「え、そんな投げやりな…」


「うーん、そうですねえ…じゃあ年収は350万以上、年齢は45才まで高卒以上でどうでしょう?」


プロの目から見てその条件じゃないと紹介できる人いないってことなの?

…現実ってこんなもんかもしれないな


別にここで本気で結婚相手なんか探す気なんかないからどうでもいいけど


「はい、それでいいです」



「美希さん…立ち入ったこと聞いてごめんなさい、失恋直後ですか?」



「え…」



「いえ、長年付き合った相手と別れた直後にお見えになるアラサーの方が多いものですから」


そうなんだ

あ…きっと私も、失恋しました!やさぐれています感が出てるんだろうな…


無言になった私に荻野さんは「ちょっと、気分転換にお遊びで心理テストしてみませんか?」とこの年代の人にしてはいたずらっぽい目をして言った







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