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わなわな

そこから先は全身に妙に力が入って、運ばれてきたトーストやゆで卵が喉につかえて飲み込めなかった

私は食事をとるのをあきらめてコーヒーだけ飲んで店を出た


ガラガラとキャリーバックを引き総武線に乗る

お盆の時期なので電車の中にはキャリーバックを持っている人が私以外にも何人かいた


扉近くの縦の手すりにつかまりぼうっと窓の外を眺める

膝がなんとなく震えてるのを感じる


東京駅に着き、新幹線に乗ってからも体の力は抜けなかった


動揺が少し収まったときひどい後悔が私を襲った


もおっ、どうして私は連絡が来ないことに腹を立てこちからから断らなかったんだろう

っていうかなんで私、結婚相談所で紹介された人に会ったりしたんだろう


24万をきっぱり捨てられなかったが為にこんな不快な思いを!

紹介所で出会った人なんかと結婚する気なんかこれっぽっちもなかったのに


なんだか断られたことで、しかも直接じゃなくアドバイザーを通して断られたことでひどくプライドが傷ついた

何とも言いようのない怒りが湧いてきた


啓司には自分の感情をぶちまけることができた

けど今回は怒りのぶつけ先がない


一応私たちの交際は始まっていた

なのに別れ話もなしに終った


う…気分最悪


私は禁じても禁じても思い出していた啓司のことをここ数日間だけは忘れていた

本を読む啓司を本を読まない布津さんが駆逐していた


最初に布津さんに会ったときのあの直感は何だったんだろう


当たら…なかったな…


ああ、もういい

とにかく布津さんのことを考えるのはやめよう


はぁ…懲りた…

マリッジゲートで紹介される人になんか、二度と会うものか 

もう無駄に傷つきたくない


そう強く決意した私を乗せて新幹線は故郷に向う




家に帰った私は久しぶりに家族の温かい歓待を受けた

まるで家出娘が帰って来たかのような…


お盆休み中の食生活は充実していた

お母さんも私が小学校の頃から勤め始めたお菓子問屋の事務の仕事を退職して家にいたし、そんなに大金ではないけど退職金が入った後だったので


あまり外食しない家だったんだけど今回はお寿司屋さんに行ったり、焼肉屋さんに行ったりした

私より一日遅れて帰って来た弟や、お母さんやお父さん…特にお母さんが、私と啓司の別れを喜んでいた


私…いっぱい心配かけて親不孝してきたんだな

そして自分不幸も…


朝の食卓に並んだ艶のいい鮭や、白菜の塩もみ、豆腐と油揚げの味噌汁を前に今までの親不孝を詫びる

心の中で



「美希、お金別に返さなくていいからそのお金で服とか買いなさいよ」


「あんた飾りっ気が無いにも程があるわよ、せっかく器量よしに産んでやったのに」


「それになんか肌荒れてるわよ、そろそろコラーゲンとか飲んだら?」


とのお母さんの言葉に弟が


「そうだよ姉ちゃん素材だけで勝負できるのは二十代まで」


「後は身ずくろいする能力が必要なんだって」


「少しは身なりに気を使いなよ」


「結婚相談所にも入ったんだし、男の人と会う機会だって増えるだろ?」


「なのにその格好じゃ…」


と言った


この日は地元の友達とお昼合う約束をしてたので、布津さんと会うときに着てた紺のワンピースを着ていた

啓司と暮らし始めてからは服を買うという習慣もすっかりなくなってしまって、今でもその習慣を引きずっていた


家族には布津さんのことは話してなかった

送られてくるプロフィールがイマイチでピンとくる人がいないとだけ話してある


…布津さんはこのワンピースに私のやる気のなさを感じたんだろうか

私にとっては数少ない外出着だったんだけどな…




あ?もう思い出さないようにしようと思ってたのにまた考えてる

布津さんのこと

お読み頂きありがとうございます。夜、昼、朝の順に投稿してきましたが、来週からは話の雰囲気に合わせた時間帯に投稿させていただこうと思います。

どうぞ引き続きお付き合い下さい。

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