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本音

むね、どーだった?結婚相談所の彼女とのデート」



「や、デートってほどじゃ」



「しっかし驚いたよ、お前が結婚相談所に入るとは」


「しかも年上の女と付き合うことにしたなんて」


「うちのかみさんにも若い子紹介して若い子紹介してっていつも言ってたのに」



「そりゃあ付き合うなら若くて可愛い子がいいに決まってるじゃないですか」


「でもねぇ」


「マジで早く結婚したくなっちゃったんですよ」


「親父がいなくなった古い県営団地の一室で亀美と発泡酒飲みながらテレビでワールドカップの予選見てるとき」


「もう発作的に」


「で、その晩寝る間際に人気測量士ブログに付いてた結婚相談所の広告見て、ついポチっと」


「そしたら速攻次の日そこから電話がかかってきて、なんか入ることになっちゃった」


「で、担当者にいきなりお勧めの人がいるって言われて」


「年上って聞いてヤダなって思ったんだけど、美人って言うから一応会うだけあってみようかと」


「あ、その前の日スーさんたちに無理やり飲みに連れてかれたでしょ?次の日用があるって断ったのに」


「あそこの料理のなんかで当たったのか結婚相談所に着いたらトイレ行きたくなって、参っちゃいましたよ」



「ハハハ、でどうなの?ああいうところに登録してる女って」


「ほんとに美人だった?」



「うん…今はやりの顔じゃないけど、きれいな人でした」


「それになんかすごくしっかりした感じだったし」


「下痢してトイレ駆け込んだことも気にしてなかったみたいだし、受け答えも優しかった」


「ただ服装とかに金かけてない感じだったな…」


「まあよく考えてみれば年上もいいかもしれないと思って」


「ある程度結婚に対して焦りがあるだろうし、うまくいけば、トントン拍子に話が進むんじゃないかな」


「あ、でも料理とか下手だといやだからそこらへんはチェックしたい」


「親父のまずい飯食って育ってきたから、うまい家庭料理に憧れあるんです」


「だからそこだけは譲れないな」



「おう、じゃあまた亀美連れて家に飯食いに来いよ」


「うちのチビたちも宗や亀美気に入ってるから」



「ありがとうございます」



そんな会話をしているとき「おーい、鈴木、宗、次の現場行くぞ」と社長の海野に声をかけられる


いつの間にか昼休みが終わっていた



「はいっ」と布津宗幸と鈴木寛治は声を合わせて返事をする



現場に向かう車の中で宗幸は考える 


…あの心理テスト、絶対当たってない

本なんか読もうが読むまいが関係ない

けど、なんであの時そう書いてしまったんだろうな

やっぱり遠い日の記憶せいか?


あの人は自分のことをどう思ったんだろう

なんとなく乗り気じゃないようにも感じるけど…

結婚までたどり着ける可能性は何パーセントぐらいあるんだろうか…?





海野測量事務所に勤める布津宗幸の先輩、鈴木寛治は気の良い男であった


そして家族をを大切にする愛妻家でもある


今日も炎天下、アスファルトの照り返しのきつい中数件の測量をこなし妻の実家の敷地内に建てた小さな家にまっすぐ帰って来た



「あーちゃんただいま〜」と寛治は勢い良くドアを開けた

「ダーリンおかえり〜」と妻の明日美がパタパタとリビングから玄関に出迎えに出る



「今日は蒸し暑くて疲れたよ」


「こんな日に限って外業が多くていやんなる」


「でもあーちゃんの顔見ると疲れ吹き飛ぶ」



「毎日お仕事ご苦労様」


チュッっと挨拶のキス


鈴木寛治はリビングダイニングに入りソファーにドカッとその巨体を預ける


そこに二歳と四歳の息子は群がってきた

息子たちが自分の体によじ登って来るのを手で支えながら食卓に料理を運ぶ妻に話しかける


「そうそう、あーちゃん、宗が日曜日遊びに来たいって」



「あ、そう?じゃあホットプレート出して久々にお好み焼きパーティーでもしようかな」


「亀美も連れて来るように言っておいて、子供たち喜ぶから」



「おう、言っとく言っとく」


「あいつ結婚相談所で紹介された年上の女と付き合い始めたらしいよ」


「相手三十歳だって」



「へー、美音みおんちゃんに振られて年下懲りたのかな」


「亀飼ってる男とは付き合えないって、逆に意味わかんないけどねー」



「なあ?十代の女の子なんか俺にはマジ宇宙人に感じるわ」



「宗、前に三十以上の女は恋愛対象にならないなんて言ってたんだけどねぇ…」


「恋愛の対象にはならなくても結婚の対象にはなるってことなのかな?」


「それにしても、まさか本当に結婚相談所に入るとはねー?」



「なー?」

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