図書委員長
「小学生の頃の思い出が関係しているかもしれない」
「小学生?」
「そう、五年生の2学期にあみだクジでクラスの図書委員になったんです」
「その時図委員会の委員長だった六年の女子が優しくて大好きだった」
「当番のときなんか図書室で一緒に破れた本を直したり図書便り作ったりしたんだけど…」
「本好きの彼女に話しかけたくて、五年生のときだけはいっぱい本を読みました」
「お勧めの本読んだよ、次は何を読もうかな…なんて言って」
「ミヒャエルエ○デの本なんかを勧められて…」
「ちょっと難しかったけど頑張って読んだ」
…実は私も小六のとき図書委員長だった
ミヒャエルエ○デも好きだった
でも黙ってよ
下手に運命でも感じられたらたまらない
「そうなんですか」
「美希さんは読書家?確か趣味の欄に読書って」
「それに理想のタイプは本を読む人ですもんね?」
…自然に美希さんって呼んでる
「あ、本は割りと読みます」
「でも本が好きというよりは図書館が好きかなぁ、あの空間が」
「あの独特の古い本の匂いに癒やされるというか…」
「図書館って地味だけど実力あるじゃないですか」
「ありとあらゆる知識や思想や空想を記した本を淡々と受け入れて」
「美術館も好きだけど美術館は入場料かかるし…図書館なら毎週行けるでしょ?」
「今の部屋も市立図書館が近いのが気に入って引っ越したんです」
節約しなければならない私にとって図書館で借りた本読むのが一番お金のかからない趣味だった
ファッション雑誌も一ヶ月遅れで借りたりしていた
服を買わなかったからといって興味がなかったわけじゃない
人並みに物欲はある
でもそれを啓司と暮らすために押さえ込んでた
「自分は少年ジャ○プくらいだな…読むの」
「あ、恥ずかしいな子供みたいで」
「私の同期の男の子もジャ○プ読んでるって言っていた」
「美希さんの同期じゃ二つ上だから…自分も後二年読んでても大丈夫かな」
「一生読んで大丈夫じゃないですか?」
「いいの?真面目そうだから呆れられるかと思った」
いつの間にかタメ口
別にいいけど
緊張が解けてきたのかな
最初はすこし猫かぶってたんだよね?
フフ、猫かぶった犬
「…布津さん、うちの会社とかにいたら、結構女の子からの人気高いかも」
「ほんと?」
「うん、だって話しやすいもの」
「真面目で誠実そうだし」
いつの間にか私もタメ口
「じゃあ、また会ってもらえるのかな?」
うっ
もう次の約束?
今日のメインイベント食事も済んでないのに?
ちょっと戸惑ったのを布津さんは察したみたいで
「今度またお誘いのメールをさせてもらいます」
と言ってから話題を職場の話に変えた
この人…
空気読んだ
ここで次の約束を無理強いせずにとっさに引いた
…
常識的な人だ
コミニケーション能力が劣るわけじゃあない
充分自力で結婚相手を探せるタイプに思える
なんで高い会費払ってマリッジゲートに入ったんだろう?