交際開始
マリッジゲートからの帰り道、自転車こぎながらなんかイヤだなって思った
私、普通さんとお付き合いすることになっちゃったよ
お付き合いするってことは…
あの人私の恋人になるってことなの?
そしてその先にはご成婚が待ってるの?
私、最初に直感したようにあの人と結婚するの?
…なんか違う
この展開
啓司と別れて自分の人生立て直したかったけど、これって私の望んだ方向じゃ無い
何親の思惑どうり流されてんの、私!?
部屋に帰ってからはため息ばかり出た
次は来週の日曜日お昼を一緒に食べる約束になっている
私、三週続けてあの人に会う
貴重な休みを、好きでもない人と
私は一週間をなにかモヤモヤした気持ちで過ごした
その雰囲気を察したのか、最近やたら話しかけてきてた純ちゃんの口数が減った一週間だった
そして日曜日
「ハア〜」と大きなため息をついてアパートの部屋の鍵を閉める
基本私男の人好きじゃなんじゃないかな
タイミングをみてお付き合いを上手に断ろう…
啓司は…
あれは猫だったから付き合えた
亀女、亀男と会いにバスで駅前に行く…
会ってなんの話すればいいんだろう
布津さんの理想は本を読む人だったな
最近読んだ本の話とかすればいいか
待ち合わせの場所にいた布津さんはこの前と同じような格好をしていた
今日はシャツが半袖だけど
駅の改札出た場所には同じようなフォルムの人が三人立っている
ふふ、布津さん今日もふつーだ
私は紺の夏のワンピース着てきた
フレンチスリーブの
これ、会社に入って初めてのボーナスで買ったやつだから流行遅れだし年齢にあってないかもしれない
けどしょうがない
夏の外出着これだけだから
あいさつを済ませると、布津さんはどこ行きましょうと聞いてきた
布津さんお勧めの美味しいお蕎麦屋さんがあると言ったけどそこは郊外で遠いので私達は駅前のファミレスに入ることにした
日曜日の昼時、家族連れや学生のグループで賑わっている
布津さんは定食セットのようなものを頼み、私は食べやすいピラフのようなものを注文した
天気の話を少ししたところで会話が止まった
…やだなあこの沈黙
隣の席の若いカップルもひとことも話さずお互いスマホをいじってる
でも隣のカップルにはこなれた感があって、沈黙に緊張感がない
そういえば啓司とはケンカしたわけでもなくまる一日口をきかずに同じ部屋で過ごしたことがあったけ
気がついたら口をきかずに一日が終わってたみたいなことが…
混んでるせいかなかなか料理が運ばれてこない
「あ、そうだ布津さん、最近なにか本読まれました?」
「本…ですか?」
「実は、あまり本読まないんです」
「ん?」
「あれ、荻野さんが荻野さん流の心理テストで布津さんの理想は本を読む人だって…」
「てっきり布津さんも読書家だと思ってた」
「ハハハ」
「あの心理テストって信憑性あるんでしょうかねえ?」
「本好きじゃないのになぜあんな答えが出てきたかわからないな」
「もしかしたら…」
「もしかしたら?」




