表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/28

Mr普通

なんでそんなふうに思ったのかわからない


別に特別なときめきがあったわけでもない

ただ静かにそう思った


そこにいたのは写真通りの男の人

ふっ、写真写りも特別良くも悪くもない、普通


応接室に案内してくれた荻野さんは私が一瞬笑ったものだから、手応えあり!と思ったようだ

お互いを紹介し終えるといそいそと部屋を出て行った


「…」



「…」


挨拶をした後、無言になった


普通さん、スーツ着ている


私自転車で来たからグレーのパンツに白のカットソーで来ちゃった…

ラフ過ぎたかな…


成人式のとき買ってもらった真珠のネックレス着けてきたとこに、ささやかな礼儀を感じてもらえると嬉しい


普通さんが会いたいって言ってるって言うから会うことにしたんだよ

普通さんからなんか話しかけてよ…と思ったけど、気軽に女の人と話せるようだったら大金払ってこんなとこ入会しないか…


しかたないから私から話しかけることにした




「布津さん、ここへはなんでいらっしゃいました?」


「私、自転車で来たものだからこんなラフな格好でごめんなさいね」


この人、なんと名字もふつさんと言うのだ

どこまでもふつー…おかしい


「あ、自分は車で」


「普段スーツとか着ないんですけど今日は何着ていいか分からなかったので」


「次は自分も普段の格好できます」


おっ、まあまあしゃべれるじゃん

ん?次は?…


ふうん

と、言うことはそんなに印象悪くないんだ、私


「あの…も、申し訳ないんですけど今日はこれで失礼します」


は?まだ会って三分も経ってないですよ?


「すみません、自分(はら)いえ、お腹痛くなって…」


え?


見れば普通さん額に汗が滲んでいる


大丈夫ですかと声をかけたら普通さんはソファーから立ち上がって「今日はこれで、またご連絡させていただきます」と勢い良く応接室を出ていった


多分トイレに駆け込んだと推測する


その後荻野さんがお茶を持って入ってきて、一人ぼっちの私を見て、あら?という顔をした


事情を話したら


「美希さん、ごめんなさいね」


「ほんと、失礼よね」と言って布津さんのことを怒った


荻野さん、布津さんが私を気に入らなくて逃げ出したと思ってるのかな


私もあの額の油汗を見なければそう思ったかもしれない




それにしても私はなんでMr普通を見てこの人と結婚するなんて思ったんだろう

そしてなんでそれをイヤだなって思ったんだろう



多分、今、一人でいるのか心地いいからだ

自分の稼ぎは全部自分で使える


若い女の子たちとも仲良くなった

スマホの使い方やお勧めアプリを親切に教えてもらっている


純ちゃんとは何回かお昼、会社近くの喫茶店に食べに行った


高校や、大学時代の友達とも連絡を取るようになり、大学時代仲良かった子とは秋の連休伊勢神宮に行くことになっている


「美希彼氏ができてから夢中になっちゃって、私達とは遊ばないって感じだったよ?」って言われたけどそうじゃない


彼氏に夢中になっていたから女友達と縁遠くなったんじゃなくて、お金がなかったから


ある程度のお金がないと人付き合いってできない


お金に少し余裕ができて、またもといたコミュニティに参加できるようになったのだ


私は今社会復帰のリハビリ中


あの普通の日本人男性代表みたいな人と結婚するよりは今の暮らしがいい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ