ダメ男好き
啓司が今なにしてるかを考えないようにしていた
考えてはいけない!と思って啓司のことが頭に浮かぶと腹筋したりして、苦しさで頭を満たし啓司を追い出していた
でも
もういいよね
考えても
部屋も引っ越したし、結婚相談所にも入った
自分なりのケジメはつけた
ハハッ
あいつ、どうしたんだろう
浮気相手とお腹の子供
浮気相手は地方から出てきた二十歳の漫画家志望の専門学校生って言ってたな
啓司父親として生きていけるのか?
今は浮気相手のアパートにいるのか?
それとも実家に帰ってるのか?
もし責任取って結婚とかすることになったら、相手の親は啓司を見てどう思うんだろう
うちの親は一度だけ啓司にあったけど、まるで悪い虫を見るような目で見てた
あいつきちんと挨拶できなかったもんな…
まあ、私も一度啓司の親にあったとき、人さらい見るような目で見られたけど
すごく礼儀正しく接したのに…
なんとなく啓司の両親がいろんなこと尻拭いしてそう
小説だってこの前初めて商業誌に載ったばかりでこれからどうなるかなんてわからない
あいつの人生、どうなっちゃうのかな
「美希さん、どうしよう」
「ちょっと遊んでた娘が妊娠しちゃった…」
…啓司、私になんとかしてもらおうと思ってあの時正直に告白したのかな
それとも、別れようと言われるのを見越して正直に話したのかな
出ていけと私が怒ったときのあのふてくされた態度
ちょっと遊んてた娘というのは私の手前そう言っただけなんだよね?
どのくらいの間その娘と付き合っていたんだろうか
…私自身はこんなことがなければやつと結婚するつもりでいたのかな
役立たずではあったけど、どんなに長時間一緒にいても邪魔にはならない男だった
猫みたいな…
一緒に寝てて、暑くなると私は啓司を遠慮なくベットから蹴り落としたりしていた
啓司はそのまま床で寝て、私が少し肌寒さを感じる頃ベットに戻って来ていた
ほんとにちょうどいいタイミングで
啓司との別れはもう悲しくはない
新しい生活が始まったことで、私も目が醒めた部分がある
ただ傍らに猫がいなくなって寂しいと言えば寂しい
もしあの時怒らずに、私が相手の女に子供産まないように説得してあげるとか言っていたら、猫は今でも私の側にいたんだろうか
ふ…馬鹿だなあこんなことを考えて
はあっ
男を部屋から追い出すのは簡単でも心から追い出すのは難しい
美希さん、美人だからモテるでしょとよく言われる
けれどモテない
ほんとの意味では
声はかけてもらえる
学生時代はよく告白もされた
啓司と付き合う前にも特に好きでもない男の子にお願いされて付き合ったりしたことが何回かある
でもなんかしっくり行かなくて、だいたい三ヶ月くらいで相手の方から去っていく
振り返れば恋人とよべる相手は今まで啓司一人だけだった
漠然と結婚はできたらしたいなと思うけど
その程度
結婚に対して特別強い憧れはない
地元の友達は啓司との同棲を知ったとき
「なるほどなるほど、美希はダメ男好きだったんだー」と言った
ダメ男は好きじゃない、啓司が好きだっただけで…