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二つのお面

「おっさんなにやってんの」


 男は少女から飛びのき、声のする方を見る。

 その先にいたのは、ひょっとこの面をつけた細身で長身、背中には大きめのリュックを背負い、片手に蛍光灯を持った練習着を来た男。

 そしてもう一人。翁の面をつけた、ジーパンにワイシャツをインし、同じく背中には大きめのリュック、片手には鉄パイプを持ったデヴだった。



「・・・誰だい、君ら。私になにか用かね?」

 男は少女に抱き付いていた時とは打って変わって、低い声で問う。

 対して翁の面をつけた男は言った。

「用もなにもそこの幼zy女の子に抱き付いてましたやん。不審者見かけたら通報してとっ捕まえてボコるのが常識やろ?ん?」

「それをいうなら君たちも十分不審者なのではないかね?そんなお面をつけて」

「いやぁ、お面付けただけで不審者とかないですわ。僕らからしてみたら紳士装って女の子に抱き付いてる人のほうが不審者ですよって」


 ドスッ


 「っ!?」

 「きゃあああああああ!!」


 翁の面をつけた男が言い終わった瞬間だった。

 彼の大きな腹部には、紳士を名乗った男が持つ一本の刀が刺さっていた。

 貫通していた。

 それを認識し、理解した瞬間に少女は悲鳴を上げていた。


 紳士は手慣れた様子で刀を捻り、引き抜く。引き抜くと翁の面の男の腹部から血が出てくる。当然だ、彼は人間なのだから。

 

 「ぐ、うぅ・・・」

 翁の面の男は刺された場所を抑えうずくまる。

 しかし血は止まらない。すぐに地面に血だまりができる。


 引き抜くと紳士は隣に立ってるひょっとこの面をした男の首を狙い切り付ける。


 そこまではよかった。

 「なに?」

 しかし、そこにひょっとこの面はなかった。

 あるのは刀が空を切った音だけだ。


「おじさん危ないっす。あとこの子捕かk『保護』したからあとはお好きにどーぞ。・・・さぁお嬢さん。俺と夜の運動会をしy(ごしゃあ!」

「お前は黙ってその子を守ればええねん」

「それならそうといってくれればええやん。鉄パイプ痛いわぁ」


 ひょっとこの面をした男は、いつの間にか少女のいる賽銭箱まで移動していた。

 翁の面をした男もまた血が滴る腹部を抑えながら鉄パイプでひょっとこを殴りながらそこにいる。



「(ほう・・・)」



「おじさんもう見逃してくれんかなぁ?」

「いや、駄目だ。夜の運動会をするのは私だからな」

 紳士は真面目な顔をして答えた。

「おじさん俺と夜の運動会するん?俺そういう趣味ないんやけど・・・」

「私だってないに決まっているだろう!」

「いやまぁおじさんの趣味とかどうでもいいんで」

「ロリコンだからなお前」

 急に会話に入ってくる翁。

「そうだけど、幼女とか少女ってのは目で見て(視姦)成長過程とか色々と楽しむものじゃないの?性的な対象にいれるとかまじありえないんだけど」

「目で見るってかいて視姦っていうんだろ?」

「ソンナコトナイヨ」

「・・・まぁお前純愛物が好きだし、犯罪の心配はないと思うけどさ」

「合意の元でやるなら問題ないよねっ」

「・・・問題あると思うんやけどなぁ。それよりもあいつだ」

「だな」

「いたいけな少女に手を出すとか・・・」

「許せねぇ!」「うらy許せねぇ!」

「・・・翁さん?」

「野郎許せねぇ!頭かち割ってぶっ殺してやる!」

「(軽蔑の眼差し)」

「あの・・・」

 ここまで黙っていた狐の少女が口を開いた。

「「うん?」」

「あの、その・・・こ、殺すとか、そんなことしたら、お二人まで犯罪者に・・・」

「「(心配してくれる美少女まじ天使・・・!)」」

 彼女の言葉に翁は笑顔で頷き、答える。

「わかったよお嬢さん。俺は全力であいつを無力化する!」

「やだセリフはイケメンかもしれないけど中身(顔)は・・・」

「あとでメロンパン」

「やだイケメン!(大嘘)」

「もういいかな?」

「「あっはい」」

 流石にしびれを切らした紳士は思わず聞いた。

「じゃ、そろそろ・・・」

 翁はそう言うと傷口から手を離す。傷口は見事に塞がっていた。


「応急魔法はできるんだな」


 紳士は皮肉を込めて言った。

 

「応急魔法は小学生でもできるけど?つかこれ高校でも必須科目だし。・・・あ、ごっめぇん。もしかしておっさんできなかった?紳士なのにできないとかただのおっさんじゃん。ごめんねぇ?」


 翁は皮肉を込めて言い返した。


「安い挑発だな。しっかり勉強したのかね?」


 ブアァ!


 一閃。

 紳士の頭があった場所を鉄パイプの空を斬る音。


「君には品がないな」


 紳士が言うや否や、後ろから振り下ろされる刀。

 翁は横に体をずらし、躱し様に鉄パイプで金的を狙う。

 それを振り下ろした刀で弾き軌道を変え、距離を取る紳士。


「それは紳士じゃないなぁ」

「戦いに紳士もなにもあってたまるかエセ紳士」

「それは聞き捨てならないな太めの御仁」

「体系のことしか悪く言えないような語力のない奴に言われてもなんとも思わないっす」


 地を蹴り、紳士へと駆け出す。

 

「っらあ!」


 鉄パイプを振り下ろし、躱される。そして反撃される。

 刀の突きが喉元を掠め、避けられる。

 そのまま刀を横に一振り。

 これをしゃがんで躱す。


「うお!」

「ちっ」


 紳士は小さく舌を打つと、刀をそのままに翁の顎に膝を突き刺す。

 

「ぐぉ!」

 

 顎が跳ね上がる。

 膝を戻し、傷が完治した腹部に蹴りを入れる。


「う!・・・ぐ、おぉぉぉぉ・・・」


 翁はたまらず腹を抑え両膝をつく。


「ふん、そうですよなぁ・・・いくら傷口が塞がったからといって痛みまでは治りませんからなぁ」


 紳士は笑顔で言う。

 


 そうだ、応急魔法とは『応急』であって『治療』ではないのだ。

 応急魔法は傷口は塞ぐことができても痛みまではなくらない。

 しかし治療魔法は傷口を塞ぎ、痛みもなくす。



「さて・・・そこのひょっとこ!」

「ん?なんすか?今ミアちゃんと話すので忙しいんすけど?(威圧」

「ほう、ミアというのか・・・いや、それよりもだ、いいのか?仲間がピンチだぞ?」


 刀を翁の首に添える。そして刀の形をした炎に塊を生み出す。


「そっすね、で?」


 ひょっとこはなんでそんなことを聞くのかと、少女の獣耳を触りながら不思議そうに首を傾げ言った。

 これには紳士も多少驚いた。


「(くっ、耳を触っている・・・羨ましい・・・!)いいのかね?こいつは君の友人ではないのかい?」

「・・・まぁ、確かにそいつは俺の友人で、同じ目的でここに来たっすけど、別に命をかけてまで助けたいとか思ってねっすから。それにおっさんそんなこと聞くってことはなに?殺しをやったこともないんすか?」

「殺しをやったことがあるような言い方だな。・・・そうだな、生憎と私は殺しをやったことはないのだよ。だが今、君の回答次第で初めて人を殺すことになりそうなんだ。」

「ふーん・・・で?その回答次第ってことは質問かなんかあるんすか?」 


 紳士はそこでにやぁ、と口角を上げると、刀の形をした炎を翁の四肢にバツの字で添える。


「うお!すげ!火ぃでてる!」

「今更ですしそれよりも助けたほうが・・・」

「あぁ・・・赤の他人を心配する少女の美しさといったら・・・たまらんな!」

「(ぶるっ)」

「今更やけどあいつ紳士ちゃうわ、ただの変質者や」

 

 ひょっとこはミアと呼んだ少女にハグしながら言った。


「(あいつ抱き付いてやがる!早くそいつから離れるんだミアちゃん!)」

「(抱き付いても離れようとしないミアちゃんまじ天使・・・)はよ回答次第ってやつのこといってくれないっすかね忙しいんすよ」

「この男とミアちゃんの身柄の交換だ」

「無理です。つか人の話聞いてましたか?そいつが死のうがどうしようが俺はどうもしないんすよ。あといいんすか?余裕ぶって長々と話して。三流の悪役にはよくある負けフラグっすよ?」

「根拠は?」



 紳士がそう聞いた瞬間だった。



「来たよー」



 鳥居の下に男が一人。

 ふくよかな体格で眼鏡をしていた。



「・・・誰かな?」

「(いいおじさん・・・)知らない人に答える義理はありませんよー」

 男はそういうと紳士の足元で横になっている翁の面をした男を見る。そして賽銭箱の前でひょっとこの面をした男にハグされた狐の少女を見る。

 ひょっとこに顔を向け口を開く。

「来たけど、高森くん?なんでそんなお面しとるん?」

「おう、意外と早かったやん田中。これにはいろいろと理由があんねん」

 田中と呼ばれた男は笑顔で答える。

「そうなん?まぁいいんやけどさ。それで?僕が好きそうなおっさんてもしかしなくてもそこの人?」

「そそ、そいつ好きにしていいからついでに新田助けたってーや」

「え?新田くん?そこで倒れとるやつ?」

「おう」

「わかった、いいよー。でさそこのおっさん好きにしていいん?」

「どーぞー」

「うん。ごめん、もっかい聞くね?」

「(しつこいなぁ・・・)」



「そこのおっさん好きにしていいんよね?」

 田中は念を押してもう一度聞いてきた。

 高森と呼ばれたひょっとこは即答する。

「もちろん。好きにしてええで」



 その言葉を聞いた田中は口角を釣り上げ、笑みをつくる。

 目は笑っていなかった。


 次の瞬間、田中が鳥居の下から消えた。


「!?」

 紳士は驚きを隠せないでいた。

 それ故に反応が遅れた。認識が遅れた。




 田中は紳士の懐にいた。




 田中は右手に魔法により電気を通しているのか。

 パチパチと音がしていた。


「ぐっ!」

 紳士は咄嗟に炎による刀を田中に向け、攻撃する。

 しかしそれよりも早く、田中の右手が紳士の首を捕える。

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 紳士に電流が流れたのが一目でわかった。

「あ・・・が・・・(ドサッ」

 紳士はその場に倒れこみ痙攣した後動かなくなった。









「おう、悪いな、助かったわ田中」

「ひょっとこのお面してる人とは比べ物にならないくらい助かったわありがとう田中」

 田中が紳士を倒し翁を助けた後、ひょっとこと翁は田中にお礼を言っていた。

「んーん、いいよー。でもいきなり高森くんから電話が来たかと思えば『お前好みのおっさんが今神社にいるんやけどどうする?結構長くいそう』って言われたときはびっくりしたよ」

「いやーほんと急で、すまん。でもいたいけな少女一人助けたし、お前は好みのおっさん見つけたしで一石二鳥やん?」

「まあねー」

「好みのおっさんじゃななかったらそんまんま帰ってたりしてな」

「いやー流石にないやろー」

「え?なんでわかったん?」

「「・・・」」

 ひょっとこと翁は田中が嘘を言わないことを知っている。だからこそ二人は「おっさんがこいつの好みで良かった」と心の奥底から思った。

「あー、僕そろそろ帰るねー、高森くんのせいでヤること増えたし」

 田中は紳士をおんぶし、うっとりした顔で見つめる。

 紳士の顔が青くなったのはきっと田中の電気のせいだ。

「今更やけどそいつ生きとるん?電気ビリビリでやばげやったけど・・・」

 翁が生存確認をしようと紳士の脈を図ろうとすると


 バシッ


「・・・え?」

 田中に手をはたかれた。

「あっ、ごめん!生きてるかどうかは大丈夫!スタンガンの要領である程度加減したから!」

「そ、そっか(こいつやべぇ)」

「うん!じゃ、またねー」

「「じゃあなー」」

 そう言ってガチゲイにおぶられる紳士を見送る二人。

「「(おっさんすまねぇ・・・だが、お前はこんな美少女に手をだそうとした、だからちゃんと報いを受けてもらう)」」



 二人がそんなことを思っていると声をかけられた。

「あ、あのー」

「うん?おおごめん忘れてた」

 今しがた救出した狐の少女、ミアだ。

「あの、ありがとうございました!おかげで助かりました!」

 ミアは笑顔で二人にお礼を言う。

「(俺たちなんもしてないけどいいよな)」

「(あかん、襲いたい・・・)」

「それで、その、急なんですけど」

「「(プロポーズかな?)」」

「お礼をしたいんですけど、その、私の家まで来てくれませんか?」

 美少女の家に来てくれませんか、という言葉は男二人は落胆させ、元気にさせた。

「じゃ、じゃあお言葉に・・・」

 翁がそう言おうとすると、

「いや、別に何かが欲しくてやったことじゃないだよね」

 ひょっとこがそう言った。

「(てめえ!なに言ってんだ!ここは誘いにのるのが普通だろ!)」

「(いや、そもそも何か見返りが欲しくて助けたわけじゃないだろ!)」

 二人は目でそんなことを話していると、

「あの、でも、なにかお礼がしたくて・・・」

 ミアが食い下がる。それに対してひょっとこが答える。

「うーん・・・気持ちはうれしいんだけどさ、ほらよくいうじゃん。『誰かを助けるのに理由がいるの?』ってそれと一緒だよ、別に俺ら何か欲しいとかそんな理由で助けたわけじゃないんだよね」

「で、でも・・・」

 あきらめたのか翁も続いた。

「女の子が襲われてる、襲ってるやつ気に食わない。そんな理由で助けたんだし・・・」

「うう・・・」

 ミアは困ったように、若干涙目である。

 流石に二人は焦った。こんな美少女を泣かせるわけにはいかない。

「そうだ!明日またここに来るから!そん時にメロンパンくれないかな!?」

「俺チョココロネが食べたいです!」

 男二人が少女に必死にパンが欲しいと頼み込む図。

「ふえ?あの、パンでいいんですか?」

 ミアはなんでパンなの?といいたそうな顔で聞いてくる。

「俺たちパン大好きなの!なんならおにぎりでもいいよ!?」

「そうそう!炭水化物いいよね!」

「そ、そうですか?なら・・・」

「「(ほっ・・・)」」

 



 後日彼らはミアに会うためにここへ来る、という約束を交わし、今日のところは解散した。解散時、ミアに「送ろうか?」と聞くと「家近いですし、大丈夫ですよ!魔法もさっきまで使えなかったけど使えるようになってますし!」

 そう言ってしっぽを振りながら帰っていった。




 そして男二人帰路へつく。

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