其の漆拾弐:彼らへ贈る愛の詞
タイトルは“かれらへおくるあいのことば”と読んでください
バレンタインデーでは家族以外チョコ貰ったことありません
正直、 自分のキャラが羨ましい……
ハッピーバレンタイン!
……な、 わきゃあ無いだろうがこのボケ共が!!
「なぜキレる!? 」
うるさいわ!! お前にチョコが貰えないブス男の気持ちが分かってたまるか!!!
「なんでだよ! もういい! 司会変われ!! 」
って、 わぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ
なにをするきさまらー
「なんで棒読みなんだよ!?
あと、 “きさまら”って俺1人しかいないぞ!? 」
司会はアホ作者から変わって、 久々の篠田恭介だぞ
翌日がバレンタインデーといっても大したことじゃないと思うがな
今までの接し方でチョコ貰えるかが決まるようなもんだろ
「偉そうなことを……」
「地味男のくせに……」
「地味男が調子乗りやがって……」
司会に突っ込むな、 名も無き輩共
あと、 俺は地味男じゃねぇ
『地味男が調子こいてんじゃねぇぞ、 だれが名も無き輩共だ? あぁ? 』
………………
「オマエラチョットオモテデロ」
『す……すいませんでしたぁ!!! 』
〈分からない、 忘れたという人に再び説明しよう!
地味男こと篠田恭介は実は剣道有段者で、 中学生のころから全国大会に出場し続けているという剣道の天才なのだぁ!!
詳しくは(? )其の弐拾肆参照!! by作者〉
〜〜というわけでしばらく待ってください〜〜
さぁて……っと
俺はもはやボロ雑巾と化した名無し共を放置して、 カバンを持ち上げ教室を出る
明日は色々な意味でヤバそうだ
ちなみに翌日に入る前に
「チョコレートが欲しいかぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!? 」
『おぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉおぉおぉ!! 』
バレンタインデーの汚染が剣道部にまで……
「うるさいわ、 このタワケ共が」
『ぐわぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?!? 』
凰輝ぃ!? なにしに来たんだ!?
「部活に汗流す奴らを見下しに」
「思考を読むな、 そして剣道部でそんなことを言うな」
「どうでもいいが地味男って蜘蛛男に少し似てないか? 」
「似てねぇよ、 だから帰れ」
〜〜翌日〜〜
「……地味男」
「青葉までそんなこと言うか……」
登校直後の教室での一風景がこれだ
なんかまわりがくそやかましい気がするのはあくまで気のせいだ
うん。 気のせいだ
「義理……いりますか? 」
「あ、 おう、 欲しい」
するとカバンから四角い箱を取り出す
……チョコか?
すると、 青葉はその箱を上に上げた
……なぜ?
「ハイ、 上げました」
「そんな化石寸前のギャグを持ち出すなよ
くれるのかくれんのかどっちなんだよ」
「あげますよ、 義理ですけど」
「義理でもうれしいぞ
チョコ好きだからな」
教室とディスプレイから冷たい視線が送られてくる気もするが気にしないでおこう
青葉から受け取った箱からはわずかだが冷気が感じられる
ふむ、 食べ頃はもう少し後だな
「おはよー」
「おっす、 地味助」
「地味助じゃねぇ」
凰輝と紗さんが登校
それにしても地味助って……
知らないうちに俺のあだ名が色々と確定してしまった気がする
そもそも俺はなんで“地味”と呼ばれるのだろうか
「“地味”だからだ“影薄”よりはマシだろ」
「けんもほろろじゃねぇか
しかも思考読むな
…………ところでなんなんだ? その袋
チョコか? 」
俺の問いに凰輝は持っていた紙製の袋を上げる
「饅頭だ
チョコとか洋菓子はあんまり好きじゃなくてな」
「ほぉ、 珍しいな」
甘いものは全体的に好きか嫌いかで別れると思うのだがな
「ほい、 恭介君
好きでしょ? 」
「おぉ、 ありがとう」
手渡されたのはお決まりのチョコ
星形だから、 手作りか
うれしいな〜♪
『ちっ……地味男のくせに調子に乗りやがって……』
フハハハハ、 小物共の小言ほど小気味いいものはないわ
シャハハハハ……
「ア〇ロン!? 」
紗さん、 人の思考を読まないでください
なんか、 今回は思考読まれてばっかりだな。 くそぅ
「良かったな地味助」
「地味助言うな」
「彼は篠田恭介って名前があるでしょ! 」
凰輝の言葉に突っ込む俺、 注意を入れる紗さん
ありがとう、 紗さん
「じゃあ紗、 アレは? 」
凰輝が指し示したのは1人の男性
紗さんが頭を抱える
「アレはじゃなくてアイツはでしょ、 え〜と……」
あれ? アイツはだれだっけ?
というか……
「そもそも……」
俺と紗さんの声が重なる
『あんなのウチの学校にいた? 』
「柿田吾朗だ! 」
…………そんなのいたっけ?
「てんめぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!! 地味男が調子に乗りやがって!! 」
「あぁ!? 」
その後、 影薄を叩きのめしたのは言うまでもない
〜〜そんなこんなで〜〜
あっという間に昼休みだよ、 コンチキショー
あの後、 知らん女の子からチョコを3つほどもらった
意外と俺ってモテるんだな
全部が全部“義理”って書かれてたのには少し泣いたけど
「おい!! 」
「あ? 」
振り向くとそこにはかわいらしい少女が
いや、 本当に“少女”って感じなんだよ
金髪のツインテールに気の強そうな顔
お世辞にもあるとはいえない胸
スカートもかわいらしいチェック柄
パーカーなんか着てるからボーイッシュな感じが
「なに人のこと見てるんだ? 」
「いや、 読者様に説明を」
「はぁ? 」
怪訝そうな顔をする少女
まぁ、 その考えも分からんことはないが
この空気が分からんとは多分1年か
「そもそも2年の階になんのよう? 」
「“篠田恭介”は……お前だな? 」
え? なにそれ?
俺なんか人に恨まれることしt……したな、 さっき
で、 でも! 後輩に恨まれることしたことなんて1度もないぞ!
しかも、 なんでコイツ顔赤くいんだ? 風邪か?
「どっ! どうせチョコ1個ももらってないんだろ
地味男だからな」
なに? 俺ってそんなに地味?
「や、 やるよ!! いっ! 言っとくけどな!! “義理”だからな!! “義・理”!! か、 勘違いするなよ!! 」
そのまま俺にチョコを押し付け、 少女は階段へ走っていってしまった
「なんなんだったんだ……」
「亜矢ちゃんはツンデレだからね」
「は? ツンデレ? 」
声がした方へ方向を変えるとそこには黒髪美人が
ジャージが穏やかな表情を見事に裏切っている
「あんたは? それに亜矢って? 」
「雪緋は楠火雪緋
あの娘は枢木亜矢
1年5組の同級生なんだよ」
「友人か」
それにしても、 友人のためとはいえ2年の階に一緒にくるとは相当度胸あるよな
「それにしても……あの“亜矢”って娘は俺のどこに惚れたんだ? 」
「地m……け、 堅実なところが! 」
あぁ、 さいでっかさいでっか
どぅーせ、 俺は地味男ですよ地味助ですよ