其の漆拾壱:鬼祓う豆で悪魔を祓う
節分の話
少し遅れました
「鬼は〜外! 福は〜内! 」
すっかり元気になった青葉の妹、 紅葉が家の回りに豆を蒔いていた
「お、 今日は節分か」
『節分? 』
「豆を蒔いて鬼を追い払うという信憑性のカケラもない行事だ」
「……古来より続く日本の伝統を否定してはダメでしょ」
お、 今回の司会はアタシ、 フィアだぞ
今回は紗の出番はナシだからな
だから、 今いるのは凰輝、 雷華、 アタシ、 スチルにレナート、 そして並町姉妹の7人
「……久々にするか? 節分」
「ふぇ? 」
「今ですか? 」
「今。 」
アッサリとした言い種の凰輝に半ば呆れるアタシたち
やるのはいいけど、 準備ってもんが……
「大豆と鬼の面があるからやるぞ」
っておい!! いつの間に大量の大豆を持ってきたんだ!?
それに鬼の面木製だぞ!! だれが着けるんだ!?
「……誰が着けるんですか? 」
「じゃんけんで決めよ〜♪」
というわけで、 じゃんけんポン☆
『…………』
「えぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!? なんでみなさん“グー”なんですか!? 」
「ある意味珍しいぞコレ……」
そう、 全員“グー”でアイコになったのだ
コレは後で聞いたことだが、 全員が同じのを出すことになる確率は約0.14%(7人でした場合)なのだそうだ
ちなみに1人勝ちの確率は約1%(7人でした場合)
いや、 アイコになる確率は高いらしいけどね
みんな同じものを出す確率は約0.14%(7人でした場合)なのだそうだ
そんなことにあまり気にせずに、 もう一回……
『じゃん! けん! ポン!! …………はぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?!? 』
今度は全員“チョキ”でアイコに
2回連続で全員同じものを出してアイコになる確率はなんと約0.00006%(7人でした場合)!!
ある意味奇跡だぞこれ!!
3回目は同じことは起こらず、 普通に凰輝、 紅葉が勝ち抜け
そのままずるずるとして……
「ア、 アタシィ!? 」
「残念ですねフィア♪」
最後に一騎討ちで負けた雷華に木製の鬼の面を押し付けられる
くそぅ……
そのあと、 凰輝がみんなに木箱一杯の大豆を配っていく
その間にアタシは鬼の面を着ける
そして、
「ヨ〜イ……ドン!! 」
凰輝の一声でみんなが一斉にアタシに豆を投げつける
だけど、 黙ってやられるアタシじゃない!
「甘い! アタシの見切りは革命的だ!! 」
「……それなんのパクりですか? 」
「なら、 私の再〇填も革命的だぁ! 」
「……紅葉……真似しちゃダメですよ」
青葉の突っ込みは軽く無視して、 アタシは見切り、 避け続ける
というが紅葉、 それ元ネタのまんまだから
一応、 伏せているけどさ
数十発喰らったりはしたが、 みんなの豆はほとんど尽きてきた
凰輝は一回も投げてない
そんな事実は軽く無視して雷華をからかう
「雷華ぁ! この程度か!? チョロいぜ!! 」
「くぅ! 凰輝さん豆ください!! 」
「ハイハイ」
凰輝の豆を半分程譲り受けて、 雷華はさらにばらまき続ける
他の面々は豆が尽きたらしく、 アタシたちの戦いを眺めている
1人だけなら、 避けるのも大分楽だ
「くそっ! なんで避けるんですか!? 」
「当たったらなんかヤバそうだからだ!! 」
知らない内に雷の神力がこもっているしな!!
あれ当たったら「やられた〜」じゃ済まないぞ! 多分!
それにしても、 大分投げつけられる豆が減ったな……
ということは、 もう残りも少ないということだな!
「もう終わりか!? 」
「そのセリフは……これでも受けてみてから言ってください!! 」
甘い! 中々速いけど、 避けることに集中すれば回避できないアタシじゃない!
アタシは回転しながら飛んでくる四角い物体を紙一重で見切る!
……四角い物体?
飛んできたのは豆を入れていた木箱だった
「なんでこんなの投げたんだ!? 」
「豆がなくなったからです!! 」
「なら投げるな!! 」
「だが断る! 」
なんのパクりだよ!!
ともかく雷華も弾切れ(豆? )で終わり
これで全員……じゃなかったな
「……よし、 俺の出番か」
「出番来なくていいから」
ラスボス、 凰輝降臨
雷華に半分程渡しているが、 正直……怖い
「とりあえず……ウラァ! 」
凰輝の手が翻る
それと同時にアタシの後ろの壁に亀裂が走る
…………は?
「うっし……こんなもんか……」
え? なに? なに投げたの? 豆?
生まれて初めてだよ……豆で頬を切ったのは……
「もういっちょ逝くぞ」
『“逝くぞ”!? 』
凰輝が木箱から豆を握り……
「悪……」
振りかぶり……
「霊……」
片足を上げて……
「退……」
野球のフォームのような構えをとり……
「散!! 」
投げる!
投げられた豆は散弾銃のようなスピードと攻撃範囲を保ちながら、 まっすぐにアタシに襲いかかる!
「なんのぉ!! 」
一か八か、 アタシは炎の壁を生み出し、 豆はその炎の壁の中に消えていく
いや、 これって“節分”ってやつだよな?
日本の“デントウギョウジ”ってやつだよな?
日本の“デントウギョウジ”はこんなにデンジャラスなのか……? (違います)
「“堕天使の散弾銃”豆バージョン!! 」
『豆バージョン!? 』
黒い弾丸(豆です)がまっすぐにアタシに襲いかかる
右に転がりながら回避した……はずだった
豆はすでにアタシの目の前にあった
「うわぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?!? 」
そのまま、 blackout……
視界は唐突に開いた
「う……? 」
「……あ、 起きました……? 」
「……なにが起こったんだ……? 」
たしか……凰輝に……豆を……投……げ……
「あぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!! 」
「うるさい」
近くにいた凰輝の裏拳をギリギリで回避できたアタシ
だけど、 その回避した一撃は雷華の顔面へと叩き込まれた
「くぎゅ!? 」
そのまま転倒、 気絶
そんな彼女を無視して、 アタシはみんなが同じ方向を向いて食べているものに気づく
「なにしてんだ? 」
「恵方巻きを食べてるんだ
ほれ、 お前の分」
「あ、 おう」
凰輝からもらった恵方巻きを頬張ろうとしたとき、 不意に青葉に止められる
「……今年は“東北東”を向いて食べるんですよ」
「了解」
というわけで、 アタシもみんなと同じ方向を向いて食べ始める
太くて食べにくいな……
そういえば……
「“東北東”向いて食う意味あんのか? 」
『…………』
なんで一斉に黙るんだ? オ〜イ……
……それにしてもみんな同じ方向を向いて食うって意外とシュールだなぁ……
ちなみに、
「きゅ〜〜……」
雷華が目覚めたのは10時間後だった