其の陸拾玖:癒えぬ悼みと脅えの泣き声・伍
知らないうちにPVが120000を超えてました
ユニークも22000……
本当にみなさんありがとうございます。
「ちぃ……! 参ったなぁ……」
今まで素手で真空波を放っていた人とは思えない弱気なセリフを呟く凰輝
今は完全に女性化しており、 身長は10cm程縮み、 胸が膨らんでいく
正直女の私よりも大きくなるためにイラつく
「仕方ねぇ、 ケリつけるぞ! 」
『ぐぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉおぉおぉ!!! 』
襲い来るキマイラの群れ、 それに対応する私たち
無論、 最初の奴らより大分大きくなっている
「豊華流“桃嵐”!! 」
先頭のキマイラの顔面を掴み、 両手を使いながらその身体を回転させる
「ぬぉりゃぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!! 」
「それ、 らき〇たの柊〇がみみたいな叫び声だな」
凰輝の意味不明の微妙な突っ込みを聞き流し、 回転させたままキマイラを群れに投げ返す
ていうかなんでそんなことを知っているのさ……
次に来た、 キマイラの群れはレナートさんが相手する
「こい! “死人の鎌”!! 」
私よりも大きい鎌が闇と共に現れ、 レナートさんの手中に収まる
鎌はそのまま黒い稲妻を帯びる!
「“黒雷烈破”! 」
高いジャンプから振り下ろされた一閃は、 確実にキマイラの群れを葬りさっていく
気がつけば数は大分減っている
残りの群れは凰輝に向かっていく!
「これで終わりか? 」
「え? ……早っ!! 」
もうすでにさっきの群れは全員倒れていた
いや、 さっき解説したばっかりだよね?
「凰輝!! ……って、 あぁ! 今日か!? 」
「レナート! そっちは終わりました!? 」
琥鈴さんとスチルちゃんたちが塀を乗り越えてくる
雷華ちゃんたちは2人が肩に抱いている
疲労の色が濃そうだけど、 ここから見た限り外傷はなさそうだ
「雷華ちゃんたちは大丈夫なの!? 」
「大丈夫です。 神力を使い果たしただけですから」
「お〜い。 起きろ〜」
ペチペチと頬を叩く凰輝
だけど、 2人はピクリともしない
「ほほぉ……無視か……
いい度胸だなぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?!? 」
『…………』
なにも突っ込めない私たち
いや、 まぁ、 怒気や殺気は孕ませてはないんだけど……
表情が怖い
口元は笑っているけど、 目は完全に笑ってない
これは後で仕返しを喰らうよ〜〜……
「ふん……いい気なものだな……」
『!?!?!? 』
突然聞こえた奇妙な声
それに驚いて振り向く私たち
そこには……
今までで、 1番大きい
キマイラがいた
さっきまでのキマイラたちよりも2、 3回りも大きく体格もしなやかそうで頑強
翼も群れの中で1番大きい
そして、 なにより、 人の言葉を話した
魔獣には魔獣の言葉がある
だが、 魂を喰らい続けた魔獣は人の言葉を、 時には魔術、 更には古代呪文すら扱えるようになるという
魔獣はそれだけ脅威的な存在になりうるのだ
…………いや、 別にこれは凰輝から聞いた話だけどね?
別に私が魔獣に詳しいとかそんな話じゃないからね
「我が子孫たちをことごとく打ち破るとは……
大した奴らだが「知るかんなもん」……」
キマイラのセリフを遮り、 戦闘の構えをとる西上姉弟
凰輝がさらに反論する間もなく、 言い放つ
「てめぇの家族なんぞ知るか
闘いに生きる以上、 “死”ぐらいは覚悟しておくべきだな
狩りだろうと争いだろうとな」
「死んでいった奴らのために勝とうとする気迫はいいけど、 熱くなるなよ」
さらに琥鈴さんが畳み掛ける
頭にプチプチと変わった音を立てながら、 キマイラはなお私たちを睨み付けている
ついでに私も口撃する
「早くしてくれない? こっちもヒマじゃないから」
「紗さん!? 」
スチルちゃんが意外という目で私を見つめてくる
なに? 挑発だって1つの戦法だよ
「上等だ貴様らぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!!! 」
襲い来るキマイラ
迎え撃ったのは凰輝だ
「ワン、 ツー、 three! 」
1、 2発目は当たったが、 3発目は回避される
再び元の位置に戻るキマイラ
「なんで、 スリーだけ上手いの? 」
「その方が楽しいじゃん? 」
『いや、 全然』
凰輝とキマイラを除いた私たちの突っ込みが重なる
雷華ちゃんたちはすでに復活している
だけど息も絶え絶えで、 足はフラフラ、 いまだ2人の肩に体を預けている
「なるほどな……」
にやつきながら凰輝を睨むキマイラ
その笑みには優越感や余裕が浮かんでいる
「その強さ……貴様“忌み子”だなぁ……? 」
『!?!? 』
『? 』
「…………」
凰輝を一瞬で“忌み子”と睨んだキマイラ
私たちは驚き、 雷華ちゃんたちは分からなそうに首を傾げる
黙り込む凰輝
「“忌み子”の魂……さぞや我が喉に甘かろう!! 」
「この……! 」
襲いかかるキマイラに思わずわずかな闘氣を迸らせる凰輝
だけど、 忘れていた
赤ん坊がいることを
「ふぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ……!! 」
泣き出す若葉
おそらく、 凰輝の闘氣を感じ取ったのだろう
それに気付いたのか思わず凰輝が振り返る
「バカめ!! 油断したな!! 」
凰輝の肩に噛みつくキマイラ
恐らく、 その牙の硬度は鋼に等しく、 それから繰り出される一噛みは人の骨を軽々と砕くだろう
普通の人なら
砕けたのは噛みついたキマイラの牙の方だった
「バカな!? 鉄より硬い我が牙がどうして!? 」
「簡単だろ
俺の身体は鋼鉄よりもはるかに硬い」
アッサリとありえないことを言い、 怒気を孕ませながら拳を引く凰輝
「そもそもてめぇらさえ来なければなぁ……!! 」
その憤怒の表情は不動明王のそれを凌ぐ
凰輝はその表情のままキマイラとの距離を一気に詰め、 氣を込めたアッパーを繰り出す
「“桜花昇天”!! 」
「ぐぎゃぁ!?!? 」
7、 8m程空に飛ばされたキマイラを追うように飛び上がる凰輝
そのまま、 下目掛けて蹴りを放つ
「“滅鬼蹴撃”ぃ!! 」
「げぶぅ!? 」
隕石のごとく蹴りを放つ凰輝
その一撃は塀全体にヒビを入れた
「そのまま死ねぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!!! 」
塀の向こうでメキメキと音が上がる
なにがおこっているかは想像するに容易いけど、 まずは若葉を避難させるべきだ
そう思った私は若葉を抱えて、 塀から離れる
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!
URYYYYYYYY!! 」
……な〜んも聞こえますぇ〜ん
キマイラ編(?)はいよいよ次で終える予定
今週中に投稿できたら……